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第十章 ルノールの混乱
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『今貴方は、どちらにいらっしゃるのですか? 主神』
『主神ってぼくのこと? 知らないよ。人違いじゃないの?』
綾都がそう返すと小人は悲しそうな顔をした。
『そうか。まだ覚醒されたわけではないのか、主神は。貴方は、貴方の肉体は今どこに? 我を起こしたということは、もしや東のどこかにいらっしゃるのか?』
『東? 確かにぼくの肉体は東の華南にいるけど?』
綾都の答えを聞いて小人は、大きなため息をついた。
『そうか。だから、我を起こしたのだな。我が東を守る水神だから』
『水神? もしかして四神教の水神? だとしたらどうしてそんなに小さいの?』
『貴方が居なくなって我々は力を失った。愛し子に召還されない限り、本来の大きさには戻れない。本来の力も得られない』
『愛し子? 瀬希皇子?』
綾都が名を出したことで、水神は愛しそうに瞳を細めた。
『そうか。あの輝きを秘めた赤子は瀬希と名付けられたか。華南の皇子なのですか?』
『うん。華南の世継ぎの皇子だよ。一応ぼくの夫という形になるのかな』
『は? 我らの愛し子が貴方の夫?』
『ルパートたちがそう言ってたから、そうだと思うけど』
と言ってから亜樹はふと付け足した。
『水神ならこう言った方が通じるのかな。火風霊、地水霊って』
『そうか。あのおふたりもよみがえったか。道理でルノール内が活性化していると思ったのだ』
火風霊と地水霊は精霊たちを統べる存在。
頂点に立つべきふたりがよみがえったことで、ルノール内は活性化していた。
眠っていた四神に影響を与えるほどに。
綾都が呼び寄せられたのもそのせいだろう。
『しかし我々の愛し子が貴方の夫。なんという不敬罪な』
なにか知らないが水神は嘆いているようだ。
『え? 瀬希皇子良い人だよ。なにも不敬罪なんて言い方をしなくても』
『貴方は我らが愛し子がお好きか?』
『うん! 大好き‼︎ 兄さんと同じくらい好きだよ‼︎』
『兄と同じ。それで夫に迎えるのはとうかと思うが』
水神はなにやらため息をついている。
『ひとつ気になっていることがあるんだけど、貴方がそこから出ると聖火は消えるの?』
『この聖火はるのでは神の証とされている恩寵の証明だが、その源は我らだ。従って我らが居なくなれば消える。そうなればルノールは大混乱だろう。元々我らの管轄。我らがいるから成り立っている神殿だというのに、精霊使いで仕切られて大迷惑だ』
『つまり瀬希皇子が四神を召喚すると聖火は消える?』
『そうだ』
『それは困ったねえ。ルノールを混乱の渦に巻き込むわけには』
『貴方が気にするようなことではないと思うが。どうしても気になるというのなら、召還された後も聖火を灯していよう』
『できるの?』
『本来の力さえ得れば、ここに居なくても聖火を灯し続けることは可能。それでも召還されて暫くの間は聖火は消えるだろうが』
つまり一度消えるのだけは、四神と言えどどうしようもないということだ。
だったら四神を召還する瀬希皇子は、ルノールにとって不吉の象徴にならないだろうか。
『ルノールでもし瀬希皇子が四神を召還したら、命を狙われない?』
『その可能性はあるな。だが、召還され本来の力を得た後なら、我らが愛し子を守ってやれる。四神に精霊使いが逆らうなど愚かなことだ』
つまりその可能性はあるのだ。
綾都は首を傾げる。
『瀬希皇子の身を守るということは、皇子の願いのひとつになるの?』
この問いには水神はかぶりを振った。
『ならない。我らを召喚したが故に愛し子が危険な目に遭うなら、それを守るのは親の役目だから。愛し子が貴方の夫だというなら尚の事、我らは愛し子を守らなければならい』
『あ。なんか疲れてきた。長く肉体を離れ過ぎたかも』
『いけないな。直ぐに肉体に戻られよ。貴方はまだ儀式をこなしていない。健康ではないのだから』
『方法がわからない。いつも勝手に幽体が抜けて勝手に肉体に戻るから』
『では我が貴方を肉体に戻そう。そのくらいなら半覚醒の我にも出来るだろうから』
そう言った水神の小さな身体が輝きを放つ。
同時に水神の身体は、どんどん小さくなっていく。
『ごめんなさい。無理をさせて』
完全に綾都の姿が消えてから、水神は複雑な面持ちで囁いた。
『相変わらずあの方はお優しい。だから、我らは彼の方を失う結果になった。二度は避けなければ』
覚悟を決める。
それは残りの三神の気持ちでもあるだろうと、水神にはわかっていた。
『主神ってぼくのこと? 知らないよ。人違いじゃないの?』
綾都がそう返すと小人は悲しそうな顔をした。
『そうか。まだ覚醒されたわけではないのか、主神は。貴方は、貴方の肉体は今どこに? 我を起こしたということは、もしや東のどこかにいらっしゃるのか?』
『東? 確かにぼくの肉体は東の華南にいるけど?』
綾都の答えを聞いて小人は、大きなため息をついた。
『そうか。だから、我を起こしたのだな。我が東を守る水神だから』
『水神? もしかして四神教の水神? だとしたらどうしてそんなに小さいの?』
『貴方が居なくなって我々は力を失った。愛し子に召還されない限り、本来の大きさには戻れない。本来の力も得られない』
『愛し子? 瀬希皇子?』
綾都が名を出したことで、水神は愛しそうに瞳を細めた。
『そうか。あの輝きを秘めた赤子は瀬希と名付けられたか。華南の皇子なのですか?』
『うん。華南の世継ぎの皇子だよ。一応ぼくの夫という形になるのかな』
『は? 我らの愛し子が貴方の夫?』
『ルパートたちがそう言ってたから、そうだと思うけど』
と言ってから亜樹はふと付け足した。
『水神ならこう言った方が通じるのかな。火風霊、地水霊って』
『そうか。あのおふたりもよみがえったか。道理でルノール内が活性化していると思ったのだ』
火風霊と地水霊は精霊たちを統べる存在。
頂点に立つべきふたりがよみがえったことで、ルノール内は活性化していた。
眠っていた四神に影響を与えるほどに。
綾都が呼び寄せられたのもそのせいだろう。
『しかし我々の愛し子が貴方の夫。なんという不敬罪な』
なにか知らないが水神は嘆いているようだ。
『え? 瀬希皇子良い人だよ。なにも不敬罪なんて言い方をしなくても』
『貴方は我らが愛し子がお好きか?』
『うん! 大好き‼︎ 兄さんと同じくらい好きだよ‼︎』
『兄と同じ。それで夫に迎えるのはとうかと思うが』
水神はなにやらため息をついている。
『ひとつ気になっていることがあるんだけど、貴方がそこから出ると聖火は消えるの?』
『この聖火はるのでは神の証とされている恩寵の証明だが、その源は我らだ。従って我らが居なくなれば消える。そうなればルノールは大混乱だろう。元々我らの管轄。我らがいるから成り立っている神殿だというのに、精霊使いで仕切られて大迷惑だ』
『つまり瀬希皇子が四神を召喚すると聖火は消える?』
『そうだ』
『それは困ったねえ。ルノールを混乱の渦に巻き込むわけには』
『貴方が気にするようなことではないと思うが。どうしても気になるというのなら、召還された後も聖火を灯していよう』
『できるの?』
『本来の力さえ得れば、ここに居なくても聖火を灯し続けることは可能。それでも召還されて暫くの間は聖火は消えるだろうが』
つまり一度消えるのだけは、四神と言えどどうしようもないということだ。
だったら四神を召還する瀬希皇子は、ルノールにとって不吉の象徴にならないだろうか。
『ルノールでもし瀬希皇子が四神を召還したら、命を狙われない?』
『その可能性はあるな。だが、召還され本来の力を得た後なら、我らが愛し子を守ってやれる。四神に精霊使いが逆らうなど愚かなことだ』
つまりその可能性はあるのだ。
綾都は首を傾げる。
『瀬希皇子の身を守るということは、皇子の願いのひとつになるの?』
この問いには水神はかぶりを振った。
『ならない。我らを召喚したが故に愛し子が危険な目に遭うなら、それを守るのは親の役目だから。愛し子が貴方の夫だというなら尚の事、我らは愛し子を守らなければならい』
『あ。なんか疲れてきた。長く肉体を離れ過ぎたかも』
『いけないな。直ぐに肉体に戻られよ。貴方はまだ儀式をこなしていない。健康ではないのだから』
『方法がわからない。いつも勝手に幽体が抜けて勝手に肉体に戻るから』
『では我が貴方を肉体に戻そう。そのくらいなら半覚醒の我にも出来るだろうから』
そう言った水神の小さな身体が輝きを放つ。
同時に水神の身体は、どんどん小さくなっていく。
『ごめんなさい。無理をさせて』
完全に綾都の姿が消えてから、水神は複雑な面持ちで囁いた。
『相変わらずあの方はお優しい。だから、我らは彼の方を失う結果になった。二度は避けなければ』
覚悟を決める。
それは残りの三神の気持ちでもあるだろうと、水神にはわかっていた。
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