弟妹たちよ、おれは今前世からの愛する人を手に入れて幸せに生きている〜おれに頼らないでお前たちで努力して生きてくれ〜

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第九章 邂逅のとき

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「大した歓迎ぶりだね。これだけの力を使ったのは久しぶりだよ、私たちも」

 風が去った後、優雅に立っていたのはエルシアたち三兄弟と一樹だった。

 四人とも厳しい表情でアレスを見ている。

「三人できていて正解だったね、兄さん」

 リオネスの口調からすると三人で協力して攻撃を封じ込んだことになる。

 そこまでさせたアレスを警戒するなというのは無理かもしれない。

 気づいて焦って立ち上がった。

「ちょっと落ちついてくれよ、四人とも! アレスは無自覚なんだ!」

「無自覚であれだけの力をふるえるものかい?」

 アトルの厳しい声に亜樹は頭を抱え込んだ。

「しょうがないだろ? 生まれて一年しか経ってないんだから! 力の制御なんてできるわけないじゃないか!」

「なんて言った、亜樹?」

 愕然と呟いたのは一樹である。

 亜樹は気づいていないが、炎を打ち消したのは一樹のカだった。

 それこそ四人がかりで攻撃を封じたのだ。

 それが無自覚?

 しかも生まれて一年?

 なんだ、それは?

 四人の感想はまさにそれだった。

「だからあ、エルシアたちにとってアレスは親戚なんだよ」

「親戚?」

「覚えがないけど?」

 小首を傾げるリオネスに亜樹はため息をついた。

「そりゃあそうだろ。アレスが生まれたのは一年前で、しかも母親は炎の女神、レダ。父親は海神、レオニスなんだから。風神エルダの未商であるエルシアたちとは、遠くても親戚になるんだよ」

「レダとレオニスの息子?」

 リオネスがきょとんと言えば、アストルが驚いて繰り返す。

 彼らもすぐには信じられないようだった。

「確かにそれが事実だとすれば、さっきの攻撃の凄まじさもわかるけれど」

 創始の神々の実在を疑っているわけじゃない。

 どちらかといえば信じている方だ。

 姿は見えなくても、父なる神の力も存在も感じることができるから。

 しかしレダの夫はレオニスではなくラフィンのはずだが?

 これでは双方が浮気をしたことになる。

 首を傾げながらエルシアが呟いた。

「直系の子供の成長はかなり異端だとは聞いてはいたけれど」

「君もうちょっと力を制御して使った方がいいよ? ボクらが相手だったから大事にはならなかったけど、普通、人に向かって簡単にあんな攻撃を仕掛けていたら、どんな言い訳も通用しないから」

 エルシアは呆れて物が言えないといった風情で、親切にも思告したのはリオネスだった。

 言われたアレスは首を傾げ、ぽつりと言った。

「勝手に出たから」

 愕然とする四人である。

 無意識にあんな攻撃を仕掛けられたらたまったものではない。

「なんかさあ、エルシアたちに逢いにきたんだって。アレスは」

 亜樹のこの一言にエルシアたちは、揃って迷惑そうな顔になった。

 それはそうだろう。

 いきなり攻撃を仕掛けておいで、訪ねてきましたもないものだ。

「あんまり深く悩むなよ。子供のしたことだと思って許してやれば?」

「亜樹。あれが子供の悪戯で済むことかい?」

 エルシアの尤もな意見に、亜樹も困ってしまう。

 取り繕いようがないとはこのことだ。

 アレスは未だに状況が飲み込めていなかったが。

「改めて初めまして。炎の精霊ファラと申します。レダさまのご命令で、ご子息のアレスさまの保護をしております。エルダ神族の長殿はどなたかしら?」

 仕切り直しとばかりに口を挟んだのは精霊だった。

 意識を切り換えるしかないかと諦めの気分になり、エルシアが彼女に向き直った。

「よろこそ。と言うべきなんだろうね。私が、エルダ神族の長エルシア」

「次男のアストル」

「で、ボクが三男のリオネス。よろしくね、アレス」

 唯一、好意的なのはリオネスである。

 自分より年下だという自覚が沸いできて、急に楽しくなってきたのだ。

 今まで散々、兄たちに溺愛されてきたリオネスは、溺愛することに飢えていた。

 養子同然の一樹を寵愛したのもそのせいである。

 アレスはきょとんと座り込んでいたが、ファラに目線で促され、ゆっくりと立ち上がった。
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