81 / 140
第十一章 それぞれの代償
(1)
しおりを挟む第十一章 それぞれの代償
「ふう。もうダメ。ちょっと休憩」
そう言ってその場に座り込んだ亜樹に、近くにいたアレスがおかしそうに笑った。
「亜樹は体力がないな。それで本当に男なのか?」
「いやな言い方するなよ。オレだって気にしてるんだから。性別についてはノーコメント」
「の一こめんととはなんだ?」
「簡単に言うとなにを言われようと訊かれようと、こちらからはなにも言わないようって意味」
クスクス笑う亜樹にアレスは憮然としている。
「しかしエベレストより高いって一樹に聞いたけど、エルダ山の頂上付近って空気が導いんだなあ。慣れるまでちょっと辛いぞ、これは。高山病に気をつけないと」
とにかく呼吸するだけでも辛い。その上に使ったこともない力を引き出すための訓練をしているのだから、亜樹の体力の消耗はかなり激しかった。
ここはエルシアたちの屋敷から、ちょっと離れた森林である。
力の訓練に使われる場所だ。
亜樹の傍にはアレスとエルシアがいる。
アレスは同じように訓練を受けているが、その上達振りは凄まじく、エルシアでさえ「もうすぐ教えることがなくなりそうだね」と呆れながら言っていた。
これだけ物覚えがいいのなら、レダの元にいた半年の間に、母神に習っていたこのに、とは、亜樹の意見だった。
言われたアレスは「母上からは知識を与えられた。だから、今エルシアたちがなにを求めているかわかるんだ。そういう意味だと無駄ではなかった。違うか?」ということだったが。
言われたことはなんでも素直にに吸収する。
それがアレスの最大の長所だった。
それに引き換え画間は亜樹は。
「うん? アレスと違ってオレはダメな奴だなあと思って。なにしろ葉っぱひとつ動かせないんだから」
「だが、とっさのときには恐ろしい力を発揮しているぞ? あれでなぜ普段使えないのか不思議だ」
「うん。オレも」
確かに不意打ちを受けたときとか、とっさのときは手に力が迸る。
それは亜樹にも制御不能なことだった。
まあできるという確信さえなかったのだから、初めてそれを自覚したときの驚きは、言葉にはできないものがあったが。
切っ掛けはエルシアの悪巧みだった。
エルダ山にきて一週間。
考えられるかぎりで最高の方法で教えていると、エルシアたち豪語しているにも関わらず亜様の力は発現しなかった。
それどころか、どれほど言われても念じても、なんにもできない。時間だけが無情に流れていく。
それでも精神は集中させているから、亜樹の消耗は激しかったのだが、このままでは埒があかないと思ったのか、ある日、エルシアたち三人は相談し合い、亜樹に不打ちを仕掛けた。
巧く亜樹がひとりになるように誘導し、反対して怒っていた一樹を説き伏せ、亜樹を襲ったのである。
これには正直、驚いた。
いきなり真空の所謂カマイタチの大群に襲われたのだから。
切り刻まれるっ!
そう覚悟を決めた瞬間、それは起こった。
亜樹の背後から強風が吹き付け、なにかが割れるような音がして、そうして静減が戻った。
後に残されたのは強風でなぎ倒された大樹の残骸。
唖然とする亜樹の元に一樹が駆けつけてきたのは、その後だったらしいが、自分がやったと
自覚したとき、亜樹は気絶したので覚えていない。
それが切っ掛けとなり一応、力らしきものには目覚めた。
以後、不意打ちを仕掛けられると力が勝手に反するのだ。
防御、ではなく、反撃。
これには何故か一樹を含むエルダ神の三兄弟が、とても驚いていたようだが。
不意打ち仕掛けたときしか発動しない力。それもほとんど暴走だ。制催なんて不能で自分でもどうにもできない。
エルシアたちは不意打ちを仕掛けるとき、それが訓練だからと手を抜かないから、毎日度こそダメかっ! というような恐布に襲われる。
彼らに言わせるとその恐怖が、亜樹の力を発動させているのだろう、ということだったか怖いから、だから、反撃する。
それに対して返す力は自分でも呆れるほどの強さ。
加減したいと思っても全然言うことをきいてくれなくて、正直、落ち込んでいた。
エルシアたちの力は確かに強い。
普通の人間だったら亜樹はもう二十回は死んでいる。
だから、本気で怖いし力も勝手に反撃するんだと思う。
でも、反撃すればいいというものでもない。
ましてや仕掛けられた力の十倍返しなんて幾らなんでもやりすぎだ。
自分でもそう思うのに、力は全然、自分の意思に従ってくれない。
それなのに同時期に訓練を始めたアレスはあっという間に制御を身に付けてつけて、これで落ち込むなど言われても無理だ。
おまけにエルシアたちがなにをしているか知ったアレスまで、ある日、亜樹に不意打ち掛けてきたのだ。
エルシアたちから受けた事情説明では、こういうことだった。
「亜樹の力を制させるために不打ちを仕掛けているというのは本当か、エルシア?」
またまた不意打ちでも仕掛けて、制御を覚えさせようと悪巧みをしていたエルシアたちは、突然、割り込んできたアレスに驚いたような顔を向けた。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた
木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。
自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。
しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。
ユエ×フォラン
(ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる