38 / 103
第十ニ章 嫉妬
(2)
しおりを挟む
それはやはりランドールに対しては、今のところは嫉妬から襲っているだけだが、透にとっては明確な殺意を向けている、という違いによるものかもしれない。
それでもこのところ、透に対しては奇妙なくらい動きがない。
ランドールの寝室にいるから襲えないという事情はわかるが、何故昼間も襲われないのか?
普通なら夜に襲えないのだから、昼に襲いそうだが、最近はパッタリ途絶えている。
その代わりランドールが集中的に狙われている状態だが。
「トール」
呼び声に振り向けばエドだった。
「なに?」
「また叔父上の様子を見ているのかい?」
「まあね」
「本当に最近の叔父上はどうしたんだろうね? なんだか良くないものにでも憑かれているような、魔に魅入られてでもいるような状態だよ?」
「アスベルはなんて言ってる?」
「なるべく傍を離れないようにするとは言っていたね。今も執務室にいるんじゃないか? 心配で離れられないって言ってたから」
確かにアスベルなら心配するかもしれない。
彼は半人半神の身だ。
普通の人間よりは気配にも敏感だろう。
おそらく無意識の内にわかっている。
ヴァルドに父が狙われていることを。
そんなことを考えていると、エドが表情を陰らせて言ってきた。
「これはぼくの勝手な予測だけれどね。叔父上……ヴァルドに狙われているんじゃないか?」
「エド?」
「叔父上の身に不幸が起きるようになったのは、叔母上がフィオリナ様だと明かしてからだろう? もしあの場をヴァルドが覗いていたなら、叔父上に仕掛けてくるなも納得できるからね。まあヴァルドが狙っているにしては、やり方が子供じみている気はするけれど」
「それ……誰かに言った?」
「言えないよ。こんな不吉なこと。当たっていたら大騒ぎになりかねないから」
黙っていてくれてよかったと透はホッとする。
「そこでそういう顔をするってことは、もしかして当たっていたのかな?」
「……」
「だとしたらきみが自らの従者を叔父上の護衛につけるのもわかるし、こうして付かず離れず見守っているのも、理解できるからね」
こうして見守っていても、透にはなにもできない。
わかっているのだ、それは。
でも、自分の決断のせいかと思うとじっとしていられない。
母には護ってみせると大見得を切ったが、実際の透はそう言い切るには実力不足。
いや。
力ならあるのだ。
それをコントロールできないことが問題なだけで。
「隠さないで教えてくれないかい? きみがひとりで抱え込んでいるのは、見ていてぼくも辛いんだ」
「エド」
隠せる限界はとうに越えている。
それはマリンにも言われていた。
マリンの結界では完全にはヴァルドの侵入を防げない。
それは事が起きるまで手出しできないことを意味した。
透の結界なら通用した。
でも、それはできない。
なにかが起きる度にマリンが庇っていたら、何れ噂になるだろう。
そう言われている。
実際もう噂になり始めているのだ。
戦女神の夫であるイーグル王が、何故か不幸な目ばかりに遭っていると。
透さえ力を使えたら……。
そう思って唇を噛む。
「それはやめてほしい」
スッと指先が唇に触れた。
さりげなく噛んでいたのをやめさせられる。
不思議そうにエドを見た。
それでもこのところ、透に対しては奇妙なくらい動きがない。
ランドールの寝室にいるから襲えないという事情はわかるが、何故昼間も襲われないのか?
普通なら夜に襲えないのだから、昼に襲いそうだが、最近はパッタリ途絶えている。
その代わりランドールが集中的に狙われている状態だが。
「トール」
呼び声に振り向けばエドだった。
「なに?」
「また叔父上の様子を見ているのかい?」
「まあね」
「本当に最近の叔父上はどうしたんだろうね? なんだか良くないものにでも憑かれているような、魔に魅入られてでもいるような状態だよ?」
「アスベルはなんて言ってる?」
「なるべく傍を離れないようにするとは言っていたね。今も執務室にいるんじゃないか? 心配で離れられないって言ってたから」
確かにアスベルなら心配するかもしれない。
彼は半人半神の身だ。
普通の人間よりは気配にも敏感だろう。
おそらく無意識の内にわかっている。
ヴァルドに父が狙われていることを。
そんなことを考えていると、エドが表情を陰らせて言ってきた。
「これはぼくの勝手な予測だけれどね。叔父上……ヴァルドに狙われているんじゃないか?」
「エド?」
「叔父上の身に不幸が起きるようになったのは、叔母上がフィオリナ様だと明かしてからだろう? もしあの場をヴァルドが覗いていたなら、叔父上に仕掛けてくるなも納得できるからね。まあヴァルドが狙っているにしては、やり方が子供じみている気はするけれど」
「それ……誰かに言った?」
「言えないよ。こんな不吉なこと。当たっていたら大騒ぎになりかねないから」
黙っていてくれてよかったと透はホッとする。
「そこでそういう顔をするってことは、もしかして当たっていたのかな?」
「……」
「だとしたらきみが自らの従者を叔父上の護衛につけるのもわかるし、こうして付かず離れず見守っているのも、理解できるからね」
こうして見守っていても、透にはなにもできない。
わかっているのだ、それは。
でも、自分の決断のせいかと思うとじっとしていられない。
母には護ってみせると大見得を切ったが、実際の透はそう言い切るには実力不足。
いや。
力ならあるのだ。
それをコントロールできないことが問題なだけで。
「隠さないで教えてくれないかい? きみがひとりで抱え込んでいるのは、見ていてぼくも辛いんだ」
「エド」
隠せる限界はとうに越えている。
それはマリンにも言われていた。
マリンの結界では完全にはヴァルドの侵入を防げない。
それは事が起きるまで手出しできないことを意味した。
透の結界なら通用した。
でも、それはできない。
なにかが起きる度にマリンが庇っていたら、何れ噂になるだろう。
そう言われている。
実際もう噂になり始めているのだ。
戦女神の夫であるイーグル王が、何故か不幸な目ばかりに遭っていると。
透さえ力を使えたら……。
そう思って唇を噛む。
「それはやめてほしい」
スッと指先が唇に触れた。
さりげなく噛んでいたのをやめさせられる。
不思議そうにエドを見た。
0
あなたにおすすめの小説
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
【完結】下級悪魔は魔王様の役に立ちたかった
ゆう
BL
俺ウェスは幼少期に魔王様に拾われた下級悪魔だ。
生まれてすぐ人との戦いに巻き込まれ、死を待つばかりだった自分を魔王様ーーディニス様が助けてくれた。
本当なら魔王様と話すことも叶わなかった卑しい俺を、ディニス様はとても可愛がってくれた。
だがそんなディニス様も俺が成長するにつれて距離を取り冷たくなっていく。自分の醜悪な見た目が原因か、あるいは知能の低さゆえか…
どうにかしてディニス様の愛情を取り戻そうとするが上手くいかず、周りの魔族たちからも蔑まれる日々。
大好きなディニス様に冷たくされることが耐えきれず、せめて最後にもう一度微笑みかけてほしい…そう思った俺は彼のために勇者一行に挑むが…
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
【本編完結済】神子は二度、姿を現す
江多之折(エタノール)
BL
1/7外伝含め完結
ファンタジー世界で成人し、就職しに王城を訪れたところ異世界に転移した少年が転移先の世界で神子となり、壮絶な日々の末、自ら命を絶った前世を思い出した主人公。
死んでも戻りたかった元の世界には戻ることなく異世界で生まれ変わっていた事に絶望したが
神子が亡くなった後に取り残された王子の苦しみを知り、向き合う事を決めた。
戻れなかった事を恨み、死んだことを後悔し、傷付いた王子を助けたいと願う少年の葛藤。
王子様×元神子が転生した侍従の過去の苦しみに向き合い、悩みながら乗り越えるための物語。
※小説家になろうに掲載していた作品を改修して投稿しています。
描写はキスまでの全年齢BL
【完結】Restartー僕は異世界で人生をやり直すー
エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。
生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。
それでも唯々諾々と家のために従った。
そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。
父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。
ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。
僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。
不定期更新です。
以前少し投稿したものを設定変更しました。
ジャンルを恋愛からBLに変更しました。
また後で変更とかあるかも。
完結しました。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される
水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。
行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。
「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた!
聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。
「君は俺の宝だ」
冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。
これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる