紅の神子

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第十三章 運命の恋

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 久し振りにひとりの寝室。

 透は思い出している。

 自分が避けるようになってからのエドの様子を。

 とても辛そうな目をしていたように思う。

 特に話し掛けようとして無視されるのが一番堪えるみたいだった。

 もしかしたら謝りたかったのかもしれない。

 透にはなんの経験もないって、彼は知らなかったみたいだし。

 でも……。

「マリン。どうせ覗いてるんだろ? 出てこいよ」

 呼び出されてマリンが中空に現れる。

 いつも飄々としているマリンだが、今はどこか気まずそうだ。

「お前最近俺を避けていただろ?」

「避けてなんて……」

「エドが俺に対して行動に出たとき、お前は止めに入らなかった。だから、顔を合わせられなかったんじゃないのか?」

「……ごめんなさい」

「どうして止めに入らなかった?」

「フィオリナ様に止められたから」

「母さんに?」

 意外な内容に驚く。

 ああいうことを容認する?

 確かに以前マリンからは母は、そういうところ大雑把だとは聞いていたが、まさかここまでとは……。

「どうして?」

「トール様のああいう問題について、ぼくがが立ち入ることは禁止されたんだ。なにかあってもイチイチぼくが止めに入っていたら、トール様はろくに恋愛もできないからって」

「……」

「トール様が誰を愛するのか、それを決めるのはトール様だから、アプローチを掛けてきた相手がいても、少なくともそれが邪なものでない限り、止めには入らないこと。そう命じられて。だから、この間も止めに入らなかったんだ。ごめんなさい!!」

 マリンは透が傷付いたことはわかるのか、真剣に頭を下げていた。

 こんなマリンは初めて見る。

 こんな姿を見て、まだ責められるわけがない。

「もういいよ。大方そんなことじゃないかとは思ってたんだ」

「トール様……」

「マリンの行動を止められるのは母さんしかいない。だから、もしかしたらとは思ってたんだ。責めて悪かったよ。仕方がなかったのにな」

 そう言って寝台で横になっていた透は片手で目を隠す。

「ごめん。暫くひとりで考えたい。席を外してくれないか?」

「うん。あんまり思い詰めないでね?」

 その言葉を言い終わるのと同時にマリンの気配が消える。

 覗いているのは変わらないだろうが、透の意思を受け入れてくれたのだ。

 どうすればいいんだろう。

 透にどうしろと。

 エドの様子からこの間の彼の行動が嫌がらせとか、そういうレベルの問題じゃないと、透にだって薄々わかってきた。

 彼には彼の気持ちがあって、多分透のなにかが彼を煽って、自然な流れで「ああ」なった。

 でも、それを透に受け入れてくれと言われても難しいのだが。

 そういえばあの事件があった後から、ランドールの態度もどこかぎこちない。

 こちらは全く心当たりがないのだが、いつも通り本を読み聞かせてくれていても、同じ箇所を何度も読んでいたりして、それまでの彼とは明らかに違う。

 そんな彼を見ているとエドの邪推がよみがえってくる。

「邪推……だよな?」

 問いかける声は自分でも滑稽なほど弱々しかった。

 なにをどう考えればいいのかわからなくて、透のそれほど優秀ではない頭脳では、そろそろパンクしそうだった。

 透は元々複雑な思考をしないが、それは出来ない不向きという理由もあったのだ。

 透の頭脳は単純明快に出来ていて、深く悩むと大抵頭の中でパンクして自棄になる。

 だから、こういう問題は苦手だった。

 エドワードとランドール。

 まあランドールの問題については、彼の態度が少しおかしいだけで、すべてはエドの推測に過ぎないが、エドについては行動にまで出ている。

 ランドールのときとは違う。

 あのときは母さんに間違われただけで、ただの人違いだがエドは、真っ直ぐに透に気持ちをぶつけてきた。

 どうすればいいんだろう。

 どうにもできないから、まだ彼を避けてしまうんだろうな。

 そう思うとため息しか出ない。

 今までこういう問題は透には起きなかった。

 暁が遠ざけていたからだ。

 今になってこういう問題が苦手だと発覚して、透は弟に感謝していた。

 自分を束縛することで守ってくれていた暁に。
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