紅の神子

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第二十三章 大人への過渡期

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 第一章 大人への過渡期




「兄さん、もしかしてさ、ランドール王のこと避けてる?」

 暁の部屋に遊びにきているとき、不意に暁がそう言った。

 こちらにきた当時は子供子供していた暁も、色々あって大人にならざるを得なかったのか、最近はすっかり変わっている。

 なにしろ一人称が「ボク」だった暁が、最近じゃすっかり透の仲間入り。

「オレ」と言っているのを聞く度に、あの可愛い暁はどこへ?と、内心でやさぐれる透である。

 暁のひとり息子、ルードヴィッヒはただいまお昼寝の最中で暁は仕事中だった。

 さすがに暁は隆と同じ道へは進まなかった。

 医者になることになにか拘りでも持っていたのか、水無瀬の家絡みではないなら、医者には
なりたくないと言い切って、その道には進まなかったのである。

 それが一番手っとり早かったのも事実なのだが、それでも暁は医師への道はきれいさっぱり
断ち切った。

 未練も感じさせない暁に、やっぱり地球では透に気を使っていたのかなあ? と、思わない
でもない。

 暁が進んだ道。

 これが意外なことに軍、だった。

 隆が軍医の道を選んだのも、実は軍隊入りした暁を気遣ってのことである。

 さすがに実戦部隊には配属されていないものの、暁は軍で活躍中の期待の新人だった。

 しかし透からみるとどこが軍人? の世界なのだが。

 なにしろ連動のできる暁だから、剣術などを覚えるのが早かったというのはまだわかる。

 だが、実際に軍隊入りしてから暁が「仕事中なんだ」と言うとき、大抵暁は部屋に篭っている。

 なにをしているのか聞いても教えてくれないが、机に向かって勉強しているように透には見えた。

 手元を覗き込もうとするとさりげなく階すし、居眠りしているときに隙をついて見たことはあるが、正直に言えばなにがなんだか意味不明だった。

 地球で言う科学とかの図式にしか透には見えない。

 とにかく意味不明の記号の羅列。

 しかしそれを考えることが、どうやら軍での暁の仕事のようだった。

 暁が軍人になると聞いたときは、暁の身が心配だったし、子供の傍にもいられなくなるんじゃないかと気にしたが、その点はどうやら杞憂で済みそうだ。

 暁のやっている仕事は軍の中でも特味みたいで、どう見ても実戦に出る役職じゃない。

 後方待機が主な割り振りなので、今では透もそれほど心配しなくなっていた。

 但し仕事内容を教えてもらえないため、危険な真似をしてるんじゃないかという違う危惧が
できていたが。

 暁の身に危険が及ぶのを心配しているわけじゃない。

 暁がやっていることが原因で、なにか危険な目に遭うんじゃないかという意味での不安だ。

 直接、暁のやっている仕事が原因で危険が降りかかるこは思っていない。

 ただその可能性は無ではないと透には思える。

 仕事内容を教えないのが、その証拠に見えて仕方がなかった。

 例えば暁のやっていることが原因で、暁の存在を疎ましく思った敵から狙われる。そういう
恐れがあると、透は心配しているのだった。

 隆が軍医へ進んだのが、それを証明している気がしないでもない。

 隆もそれを危惧しているように見えるからだ。

 だがそれを指摘してみたところで、ふたりがなにか言ってくれるとは思っていなかった。

 机に向かったまま背中を向けた暁に問われて、透はちょっと唇を尖らせる。

 透は変わっていないのに暁は素敵な青年に成長しつつある。

 今では透の方が弟にしか見えない。

 背だって抜かれたし、神って損だというのが、透の嘘偽りのない感想だった。

「話しかけているときくらい、俺の方を振り向けよ。失礼だろ。そういう態度」

「兄さんてそういうことを気にするタイプだったっけ?」

 言いながら暁はパタンと書物を閉じて、言われたとおり透を振り向いた。

 こういうところは変わらないなと、透はちょっと安心する。

「もう一度聞くけど、もしかしてランドール王のこと避けてる? 交際というか、それ通り越して求婚されてるんだよね? なんで避けてるの?」

「なんでそう思うんだ?」

「そりゃこれだけ毎晩オレのところに兄さんが逃げ込んでたら、そういう疑いも持つよ」

 まだ昔のまま「兄さん」と呼んでくれる暁だが、時々ふっと出たといった感じで「兄貴」と言いかけて、慌てて「兄さん」と言いなおす。

 どうやら透の立場的に「兄費」呼びはマズイと思っているようだった。
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