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第1章:病弱青年とある女冒険者編
第14話:牧場主サマンサ
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朝からギルドに行き、掲示板に貼られている依頼や情報をチェックして受注。
平原に赴きリズがいつも巡回している採取ポイントを回りながら、俺は遭遇した魔物を倒し素材を手に入れる。
昼になれば、狩ったホーンラビットや、採った山菜や購入した魚などを食べて、午後にまた採取ポイントを回りながら魔物を倒す。
夕方には町に帰り、ギルドで報酬や換金したお金を受け取り、夜は宿に泊まってリズとじっくり愛し合う。
そんな日が一週間ほど過ぎた時だった。
「採取ポイントを変える?」
リズの突然の言葉に、冒険の準備をしていた俺は聞き返す。
「そう。いつも同じ採取ポイントを回ってたら、流石に採れるアイテムも少なくなっちゃうし、全部取っちゃったら採取ポイント自体が無くなっちゃうから」
考えてみれば、リズはたくさん採取アイテムが生えていたとしても毎日同じくらいの量を採って、残りは採らずに次の地点に向かっていた。
それは、植物などをごっそり採り尽くしてしまえば、その場所にはもう生えてこないからだ。
繁殖力を超えた過剰な乱獲により生態系が崩れ、個体自体の数が減るのは自然の摂理だろう。
「だから、時期を見て巡回ルートを変えてるのよ。それで、そろそろ別のルートに行こうと思ってね」
「なるほどな。で、具体的にはどうするんだ?」
「今まで回ってたルートは町の正門を出てまっすぐ行った平原の『南側』だったけど、今日は東門から出て平原の『東側』のルートを回ろうと思うの」
「そうか、じゃあそうしよう」
準備が終わった俺たちは早速、ギルドに向かい掲示板をチェックした後、平原の東へと向かった。
「そういえば、南側と東側で現れる魔物が変わったりはしないのか?」
採取ポイントを回りながらリズに尋ねる。
「変わるとは思うけど、そう大きくは変わらないかな。平原に出てくる魔物はだいたい同じだよ」
「そうか」
この一週間、平原の南側を散策していて遭遇したのはスライム、ビッグアント、ホーンラビットだけだった。
リズ曰く、この近辺に出てくる昼の魔物は、最低危険度である危険度Eがほとんどだとか。
転生初日のゴブリンは本当にイレギュラーだったらしい。
「あ! 魔物よ!!」
見てみると、ビッグアント一匹とスライム二匹のグループ。
リズの言った通り、だいたい同じ魔物が出てくる。
俺はすぐさま鉄の剣で斬り捨てる。
基本的に一撃で終わるからありがたい。
リズの話だと、これは俺の武器適性が高いかららしい。
武器適性が低いリズだと、スライム一匹に長くて二十分くらいかかるようだ。
そして、この世界の村人や商人は基本的に武器適性が一番低いEか、その上のD。
俺も最初は冒険者のコスパの良さから、農業や漁師など割に合わない仕事をせずに、全員冒険者になればいいのにと思っていた。
しかし、武器適性がない人たちからしたら、冒険者の方が命の危険がある上に、儲けが少ない、割に合わない仕事ということらしい。
武器適性がEとDしかないのに冒険者稼業に就いたリズは、人から見ればかなり変わり者に映るとのことだった。
三ヵ所目の採取ポイントを回り終えた時のことだった。
「おー、久しぶりじゃないか! 元気にやっとるようだねぇ、平原の王女様♪」
突然誰かに声を掛けられ、リズと一緒に振り向くと、一人の女の子が立っていた。
麦わら帽子にオーバーオール、赤毛の三つ編みが胸のあたりまで伸びていて、いかにも酪農家という出で立ち。
素朴な雰囲気だが、目鼻立ちがはっきりしており可愛らしい美少女だ。
頬のそばかすが快活さを表していて、とてもいい。
「もう、その名前で呼ばないでよー。サマンサ!」
リズは、友達にからかわれた女の子のように困り顔で笑っている。
「あはは、ごめんごめん。って、そっちの男の子は誰? ははーん、もしかしてリズのイイ人?」
「えっと、その……まあ……」
「え? うそ? ホントに!? すごいじゃん、リズ!!」
照れて俯くリズを見て、はしゃぐそばかすの女の子。
「えっと、君は?」
「ああ、ごめんごめん。わたしはサマンサ。リズとは友達で、このルクシア平原の外れで牧場を営んでるの!」
女の子に尋ねると、満面の笑顔で答えてくれる。
「そうか、俺はレオ。リズとパーティを組んでる冒険者だ」
「へー♪ 冒険者様かー♪ リズとパーティをねぇ……♪」
嬉しそうにからかいの視線で俺を見つめるサマンサ。
「も、もう。いいでしょ、そんなことは! それより、サマンサはどうしてこんなとこにいるのよ? 牧場から結構離れてるけど」
「あ! そうだった!」
リズが言うと、サマンサは両手をポンと叩き何かを思い出したかのような仕草をする。
「この辺りで、牛を見なかった?」
「牛?」
「先日、朝起きたら数が減っていてね。逃げ出したかと思って探してたんだけど、どうやら『また』違うみたいだね」
「また?」
困り顔のサマンサに、思わず聞き返す。
「最近多いんだよ。牛がいなくなっちゃうこと」
「そんなこと、頻繁に起こるものなの?」
「いや、逃げ出すことは考えにくいんだ。ちゃんと柵も張ってるし。……おそらく、狼の仕業だろうね……」
リズが尋ねると、サマンサは表情を翳らせて言った。
「狼?」
「ああ、ウルフっていう狼の魔物さ」
ウルフ……直訳で『狼』か。
動物の狼と混同しそうな名前だな。
「近くに巣穴があるとにらんでるんだけどね。ギルドにも巣穴の探索依頼と討伐依頼を出してるんだけど、なかなか受けてくれる冒険者がいなくてね」
「ウルフは初級冒険者にとっては手こずる魔物だし、群れを作るから強い冒険者も鬱陶しがるの。おまけに取れる素材も安いから、誰も率先して討伐したがらないのよね」
サマンサの苦悩にリズが同調する。
「報酬金とかを上げてみたらどうだ?」
「あー、ダメなんだよね。ウチの牧場、ただでさえ火の車だから、報酬金は上げれないんだ」
俺の提案に困ったように答えるサマンサ。
「あーあ、『報酬金とは別にサマンサ特製のご馳走を作って、おもてなししてあげる』って書いたんだけどなぁ」
「あはは……サマンサ、料理上手だからね」
どこか楽観的に言うサマンサに、リズが苦笑しながら応えた。
「牧場の素材を使った最高級フルコースだよ!? まあ、あたしが勝手に言ってるだけだけど」
満面の笑顔で言い放つ。
その後、しばらくサマンサと他愛のない会話を交わした。
太陽のような向日葵のような、明るくてあたたかいサマンサの人柄がよく分かった。
平原に赴きリズがいつも巡回している採取ポイントを回りながら、俺は遭遇した魔物を倒し素材を手に入れる。
昼になれば、狩ったホーンラビットや、採った山菜や購入した魚などを食べて、午後にまた採取ポイントを回りながら魔物を倒す。
夕方には町に帰り、ギルドで報酬や換金したお金を受け取り、夜は宿に泊まってリズとじっくり愛し合う。
そんな日が一週間ほど過ぎた時だった。
「採取ポイントを変える?」
リズの突然の言葉に、冒険の準備をしていた俺は聞き返す。
「そう。いつも同じ採取ポイントを回ってたら、流石に採れるアイテムも少なくなっちゃうし、全部取っちゃったら採取ポイント自体が無くなっちゃうから」
考えてみれば、リズはたくさん採取アイテムが生えていたとしても毎日同じくらいの量を採って、残りは採らずに次の地点に向かっていた。
それは、植物などをごっそり採り尽くしてしまえば、その場所にはもう生えてこないからだ。
繁殖力を超えた過剰な乱獲により生態系が崩れ、個体自体の数が減るのは自然の摂理だろう。
「だから、時期を見て巡回ルートを変えてるのよ。それで、そろそろ別のルートに行こうと思ってね」
「なるほどな。で、具体的にはどうするんだ?」
「今まで回ってたルートは町の正門を出てまっすぐ行った平原の『南側』だったけど、今日は東門から出て平原の『東側』のルートを回ろうと思うの」
「そうか、じゃあそうしよう」
準備が終わった俺たちは早速、ギルドに向かい掲示板をチェックした後、平原の東へと向かった。
「そういえば、南側と東側で現れる魔物が変わったりはしないのか?」
採取ポイントを回りながらリズに尋ねる。
「変わるとは思うけど、そう大きくは変わらないかな。平原に出てくる魔物はだいたい同じだよ」
「そうか」
この一週間、平原の南側を散策していて遭遇したのはスライム、ビッグアント、ホーンラビットだけだった。
リズ曰く、この近辺に出てくる昼の魔物は、最低危険度である危険度Eがほとんどだとか。
転生初日のゴブリンは本当にイレギュラーだったらしい。
「あ! 魔物よ!!」
見てみると、ビッグアント一匹とスライム二匹のグループ。
リズの言った通り、だいたい同じ魔物が出てくる。
俺はすぐさま鉄の剣で斬り捨てる。
基本的に一撃で終わるからありがたい。
リズの話だと、これは俺の武器適性が高いかららしい。
武器適性が低いリズだと、スライム一匹に長くて二十分くらいかかるようだ。
そして、この世界の村人や商人は基本的に武器適性が一番低いEか、その上のD。
俺も最初は冒険者のコスパの良さから、農業や漁師など割に合わない仕事をせずに、全員冒険者になればいいのにと思っていた。
しかし、武器適性がない人たちからしたら、冒険者の方が命の危険がある上に、儲けが少ない、割に合わない仕事ということらしい。
武器適性がEとDしかないのに冒険者稼業に就いたリズは、人から見ればかなり変わり者に映るとのことだった。
三ヵ所目の採取ポイントを回り終えた時のことだった。
「おー、久しぶりじゃないか! 元気にやっとるようだねぇ、平原の王女様♪」
突然誰かに声を掛けられ、リズと一緒に振り向くと、一人の女の子が立っていた。
麦わら帽子にオーバーオール、赤毛の三つ編みが胸のあたりまで伸びていて、いかにも酪農家という出で立ち。
素朴な雰囲気だが、目鼻立ちがはっきりしており可愛らしい美少女だ。
頬のそばかすが快活さを表していて、とてもいい。
「もう、その名前で呼ばないでよー。サマンサ!」
リズは、友達にからかわれた女の子のように困り顔で笑っている。
「あはは、ごめんごめん。って、そっちの男の子は誰? ははーん、もしかしてリズのイイ人?」
「えっと、その……まあ……」
「え? うそ? ホントに!? すごいじゃん、リズ!!」
照れて俯くリズを見て、はしゃぐそばかすの女の子。
「えっと、君は?」
「ああ、ごめんごめん。わたしはサマンサ。リズとは友達で、このルクシア平原の外れで牧場を営んでるの!」
女の子に尋ねると、満面の笑顔で答えてくれる。
「そうか、俺はレオ。リズとパーティを組んでる冒険者だ」
「へー♪ 冒険者様かー♪ リズとパーティをねぇ……♪」
嬉しそうにからかいの視線で俺を見つめるサマンサ。
「も、もう。いいでしょ、そんなことは! それより、サマンサはどうしてこんなとこにいるのよ? 牧場から結構離れてるけど」
「あ! そうだった!」
リズが言うと、サマンサは両手をポンと叩き何かを思い出したかのような仕草をする。
「この辺りで、牛を見なかった?」
「牛?」
「先日、朝起きたら数が減っていてね。逃げ出したかと思って探してたんだけど、どうやら『また』違うみたいだね」
「また?」
困り顔のサマンサに、思わず聞き返す。
「最近多いんだよ。牛がいなくなっちゃうこと」
「そんなこと、頻繁に起こるものなの?」
「いや、逃げ出すことは考えにくいんだ。ちゃんと柵も張ってるし。……おそらく、狼の仕業だろうね……」
リズが尋ねると、サマンサは表情を翳らせて言った。
「狼?」
「ああ、ウルフっていう狼の魔物さ」
ウルフ……直訳で『狼』か。
動物の狼と混同しそうな名前だな。
「近くに巣穴があるとにらんでるんだけどね。ギルドにも巣穴の探索依頼と討伐依頼を出してるんだけど、なかなか受けてくれる冒険者がいなくてね」
「ウルフは初級冒険者にとっては手こずる魔物だし、群れを作るから強い冒険者も鬱陶しがるの。おまけに取れる素材も安いから、誰も率先して討伐したがらないのよね」
サマンサの苦悩にリズが同調する。
「報酬金とかを上げてみたらどうだ?」
「あー、ダメなんだよね。ウチの牧場、ただでさえ火の車だから、報酬金は上げれないんだ」
俺の提案に困ったように答えるサマンサ。
「あーあ、『報酬金とは別にサマンサ特製のご馳走を作って、おもてなししてあげる』って書いたんだけどなぁ」
「あはは……サマンサ、料理上手だからね」
どこか楽観的に言うサマンサに、リズが苦笑しながら応えた。
「牧場の素材を使った最高級フルコースだよ!? まあ、あたしが勝手に言ってるだけだけど」
満面の笑顔で言い放つ。
その後、しばらくサマンサと他愛のない会話を交わした。
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