【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~

泰雅

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第1章:病弱青年とある女冒険者編

第19話:対決

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 とんでもない速さで、こちらに向かってくるウルフ。
 待ち望んでいたからか、初めての相手だからか。
 俺も緊張しているらしく、心臓がバクバクと鳴っている。
 鉄の剣を抜き右手に構え、左手に魔力を込める。
「リズ……下がってろ」
「う、うん……!」
 リズを充分下がらせると、柵を飛び越えた三匹のウルフが、あっという間に俺の前に並び立つ。
「ウウウウゥ!!」
「グルルルル!!」
 ウルフたちは涎を垂らし、唸るように威嚇をしてくる。
 長い間、餌にありついていないからか、あばら骨が見えている。
 後ろの牛舎を狙っているのか、はたまた、俺を喰おうとしているのか……鋭い眼光でこちらを睨む。
 鼻をひくつかせて、牛舎の方へ行こうとするウルフたちの前に立ちはだかり、息を飲むように対峙する。
 やはり、餌となる牛の場所はもう解っているようだ。
 均衡を破ったのは、ウルフの方からだった。
「ガァアア!!」
 一匹のウルフが飛びかかってくる。
 それに呼応するように、あとの二匹も続く。
 剣で複数の敵を待ち構えるのは上策ではない。
 戦闘を長引かせるのもダメだ。
 明らかにあちらの方が、スタミナはある。
「『ファイア』!!」
 俺は、最初に飛びかかってきたウルフに魔法をお見舞いする!

 ボオオオオウン!!

「ギャイン……!!」
 勢いよくぶち当たった鋭い火球は一気に弾けて、ウルフを吹き飛ばす!
 一瞬、後に続く二匹が怯んだ。
 機を逃してたまるかと思い、ウルフとの距離を一気に詰めて、鉄の剣で一匹の喉笛を掻き切る!
「グワァッ……!!」
 喉を斬られたウルフが、こと切れて倒れる。
 最初に火球を浴びせたウルフも動かない。
 さすがは詠唱魔法、ウルフ相手でも一発で仕留められるらしい。
 残る一匹が、怯えたようにプルプルと震えだす。
 すかさず単純魔法をお見舞いする。
 
 ボウンッ!!

 火球が弾けてダメージを与えたものの、致命傷にはならない。
「キャイン……グルル……!」
 狼は、足を引きずりながら、ゆっくりと走り去ろうとする。
 計算通りだ。
「リズ!! 追うぞ!!」
「は、はい!!」
 物陰に隠れていたリズを呼び、ウルフを追跡する。
 手負いでもかなりの速さだ。
 逃がしてたまるか。
 八日も待ったんだ。ようやく、サマンサの本当の笑顔を取り戻せるんだ。
 俺とリズはウルフを見失わないように必死で走った。

 十分ほど走っただろうか。
 丘の北側に大きな岩陰が見えてくる。
 その陰に、ウルフが入っていく。
「レオ! あそこ、もしかして!!」
「ああ、間違いないだろう」
 岩陰にぽっかりとした大きな洞窟がある。
 ウルフの巣穴だ。

 ゆっくりと洞窟の中を覗く。
 月明かりがあっても、中は真っ暗で見えない。
「待っててね……これで見えるでしょ」
 リズがランタンを取り出す。
「よし、入るぞ。リズは明かりを持って、後ろからついてきてくれ」
「うん」
 俺たちは意を決して、巣穴の中に入っていく。
 5mほど進んだ時、奥から僅かに光が漏れてくる。
 ランタンを消し、そっと光の方を覗き込む。
 そこには、広くて大きな空洞があった。
 上を見ると月が見える、空洞の真上が外に開けているらしい。
 中には動物の骨が散乱している。
 牛の頭蓋骨のような骨もいくつかある。
 サマンサの牧場で牛が巻いていた首輪も、ちぎれた状態で散らばっていた。
 やはり、犯人はこの巣穴のウルフの仕業で間違いないようだ。
 ウルフが四匹、こちらの方を見ている。
 その中には、もちろん先ほど傷を負わせたウルフもいる。
 俺たちが巣穴に入ってきているのが、匂いで判っているのだろう。
 そうこうしていると、奥からもう一匹、のっそりと姿を現す。
 なんだ……!? あれ……!?

 灰色じゃない……全身銀色の一回り大きいウルフ。
 首周りの毛がもっさりとして、たてがみのようになっている。
 月明かりに照らされてキラキラ光るその姿は、美しいが強い畏怖を感じる。
「し、し、シルバーウルフだよぉ……!!」
 リズが声を震わせて囁く。
「シルバーウルフ……? 普通のウルフと違うのか……?」
「ウルフの上位種、ウルフの危険度はギリギリ初級ランクのE+だけど、シルバーウルフは完全に危険度D……! 初心者は相手にしちゃいけない魔物だよ……!!」
 リズが震えながら囁いてくる。
「逃げよう……!? 逃げなきゃ死んじゃうよ……!!」
「いや、逃げられないっぽいな……」
 ウルフたちは、じりじりとこちらににじり寄ってくる。
 おそらく逃げても追いつかれて、戦う羽目になるだろう。

「リズは出てくるんじゃないぞ、隠れてろ……!」
「レオぉ……」
 泣きそうなリズの頭を撫でて、ウルフたちの前に飛び出す!
 それと同時に、火球二発を発射する。
「『ファイア』! 『ファイア』!」
 二つの鋭い火球がウルフ二匹に当たり、吹っ飛んだ。
 やはり、俺の『ファイア』ならウルフは一撃で倒せるようだ。
 だが、二発以上の連発は無理そうだな。
 魔力を込め直す必要がある。

 残る二匹が突っ込んでくる!
 一匹は動きが悪い。
 さっき単純魔法で傷を負わせたウルフだ。
 俺は手負いのウルフを切り払い、すぐさま飛んできたウルフの胴に、剣を刺し入れる!
 ウルフの爪が顔の寸前で止まる。
 剣を引き抜くと、ウルフはドスンと地に沈む。
 切り払った手負いのウルフは壁際で、立ち上がろうとしている。
 そこに『ファイア』を撃ちこみ、仕留めた。
 これで残るはシルバーウルフだけとなった。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」
 さすがに、こちらの息が切れる。
 牧場でウルフ三匹相手に一戦、約十分走って、洞窟に入りウルフ四匹ともう一戦。
 全力で詠唱魔法を何度も使った疲れもあるようだ。
 シルバーウルフが、じっとこちらを見つめている。
 唸るでも吠えるでもない。
 静寂に包まれた洞窟で月明かりを浴びながら。
 その姿は、魔物ながら荘厳で神聖な雰囲気を感じさせる。
 こちらは剣を構え、空いている手に魔力を込める。

 ウワオオオオーーーーーーーーン!!

 シルバーウルフが遠吠えをする。
 直後、こちらに走ってくる。
 開戦の狼煙が上がったらしい。
「『ファイア』!!」
 走ってくるシルバーウルフに火球をぶつける。
 一瞬スピードは落ちたが、すぐに勢いを取り戻す。
 顔の毛が焦げているところから、ダメージが無いわけではないらしい。
「もう一度だ……!! 『ファイア』!!」
 最大限の魔力を込め、火球を再びぶつけた。
「ギャウ……!!」
 微かな鳴き声を上げるが、倒れない。
『ファイア』を放つには、魔力を練り直さなければならない。
 その隙に、距離を詰められた!
「ガアアアアッ!!」
 鋭い爪を、上から振り下ろしてくる。
 あわててそれを剣で斬り払った。

 ギィィイイイン!!

 鋭い金属音のようなものが、洞窟に広がる。
 再び振り下ろされる鋭い爪。
 俺は真横に転がって回避した。
 危険度Dの壁は、なかなか厚いようだ。
 ジロリと互いに睨み合う。
 その隙に魔力を練り直す……が!

「グオオオオオッ!!」

 その一瞬の間にシルバーウルフは俺との距離を詰め、押し倒してきた!
「ぐううううっ!!」
 地面に倒され、必死に噛みつこうとするシルバーウルフの牙を剣で防ぐ。
 突き立てられた鋭い爪は皮の服を破り、自分の胸から僅かに流血しているのが分かる。
「万事休すか……!!」
 甘く見ていたわけじゃない。
 初級冒険者としての自覚は持っていたし、十分すぎるほど冷静になっていた。
 巣穴を見つけた時に、町に戻りギルドに報告するべきだったか?
 いや、巣穴の場所を変えられたら、元の木阿弥だ。
 巣穴に入り、殲滅しようとしたのは間違いではなかったはず。
 誤算はシルバーウルフがいたことだ。
 逃げられない状況に追い込まれ、疲れた状態で戦う羽目になった。
 命が終わるかもしれないのに、とりとめのない考えが頭の中でぐるぐると回る。

「リズ!! 逃げろ!!」
 気力を振り絞り、叫ぶ。
 返事はない。
 良かった、どうやら逃げたみたいだな。

 徐々に近づいてくるシルバーウルフの牙。
 喉元まで迫られ、死を覚悟した瞬間――。
「ふぁ、『ファイア』ーーーーーー!!」
 リズの声と共に、小石ほどの火球がシルバーウルフの眉間に直撃した。
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