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第4章:エルゼリアと無骨なエルフ騎士編
第3話:金策!その2
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「あ、そうだ。扱いに困ってる品があるんだが……」
俺はシャロンに『ゴブリンの紋章』を見せる。
木の板に掘られた、赤い文字。
レア素材ということだが、価値が全く分からなかった。
鑑定をかけて見ても『ゴブリンの群れでのみ使われる言葉を掘っているアイテム』という何とも言い難い結果が出てきたのだ。
この分だと、武具にも使えそうにないし。
ギルドでの換金額も1500Gとレア素材にしては安かった。
「あら……ゴブリンマージのレア素材ね……。これなら、私が3万Gで買い取ってあげるわよ?」
「どういうことだ?」
「オリジナルの魔導書を作る時って、色んな魔法言語を組み合わせて作るのよ。その時、このゴブリンの紋章に書いてある言葉を解読していれば、それも魔法言語として使えるの。『灰色の熊掌』と同じ。一部の人間にはとても価値のある素材なのよ」
なるほどな……魔物素材は奥が深い。
リズもキアラもある程度の知識はあるとはいえ、ルクシア周辺の魔物に限るだろうし。
シレイドに至っては、裏家業で得たという凶悪知識しかないだろうし。
この辺りの知識を豊富に持っている者を味方にできたなら、換金も楽になるのだろうか……。
とりとめのないことを思いながら、俺はゴブリンの紋章をシャロンに買い取ってもらった。
「ああ、あと、これもここで買い取ってもらえるか?」
俺はガラテアでの戦いの褒美としてもらった、大量の『オークの血』をシャロンに差し出した。
これも、まあ、武具には使えないだろう。
「あら、珍しいもの持ってるわね」
シャロンは赤い瓶を一つ持って、窓の光にかざす。
そして、微笑んで答える。
「うん。純度も悪くないわ。買い取らせてもらうわよ。そうねえ……一本2000Gでどうかしら」
ギルドの定価の倍だ。
「ああ、それで頼む」
俺は五十本のオークの血の瓶をシャロンに買い取ってもらった。
「ちなみになんだが、それ、何に使うんだ?」
「あら……知りたい?」
俺の問いに、シャロンは不気味な笑みを浮かべる。
「い、いや、やっぱりいいや」
「ぷっ……! ふふふ、そんなに怯えなくてもいいわよ。オークの血は強力な精力剤になるのよ」
空恐ろしくなって質問を撤回しようとすると、シャロンは吹き出して笑いながら答えてくれる。
「精力剤?」
「ええ。年寄りの貴族なんかに高く売れるわ。貴族は基本的に暇だから、情事に耽る回数も密度も多いのよ。そうだ、レオくんにもあげるわ」
シャロンが奥の棚から取り出したのは、渡したオークの血よりも透明度の増した赤い液体が並べられた木箱。
瓶には『オークエクスタシー』と書いてある。
「せっかくだから、ダースで持っていきなさい」
半ば、押し付けられるようにして、俺はオークエクスタシーを手に入れた。
まあ、今度使ってみるか。
べ、別に彼女に「す、すごい……」と思われたいとかそんなんじゃないけど、本当にそんなんじゃないけど。
換金を終えて、シャロンとしばらく談笑し、俺たちが店を出ようとした際、シャロンが大量の魔導書を持ってくる。
「せっかく、灰色の熊掌をたくさん譲ってもらったから、この魔導書、全部持って行っていいわよ。オリジナルの魔法じゃなくて既製品だけれど、レオくん、今、火属性しか使えないでしょう? 四つの基本属性くらいは押さえておいた方がいいわ」
差し出された本にはそれぞれ『火』『水』『土』『風』に対応した本らしい。
「一式揃えようとしても、この町の道具屋じゃ下級魔法までの魔導書しか置いてないだろうしね。基本属性の中級魔法までのこの魔導書全部、どどーんと持っていっちゃっていいわよ……レオくんなら、全部習得できそうだしね」
「そうか。すまないな。遠慮なくいただくよ」
俺はシャロンから魔導書を受け取って店を出た。
「暇じゃなかったか? 結構時間がかかってしまったから」
知識人のシャロンの話はタメになるものが多く、ついつい長話をしてしまう。
リズも、自分の換金が終わった後はずっと手持無沙汰だっただろうし。
「ううん、あの店、色んなアイテムがあるから見てて面白いのよ」
「ん……シレイドも、色んな自作道具を作る参考になる……」
「私も物珍しかったから、退屈しなかったぞ」
リズとシレイドとキアラは、俺とシャロンがあれこれ話し込んでいる間、店の品物を見ていたらしい。
「それより、灰色の熊掌、あんなにあげちゃってよかったの?」
リズが訊いてくる。
「ああ。あんなに食い切れんし、リズみたいに太い顧客を持っているわけでもないしな」
「あはは、そっか。まあ、グルメ貴婦人でも流石に五十個も買わないと思うけど」
リズも俺ほどとはいかないにしろ、グレイベアにとどめを刺していたので、それなりに素材を獲得している。
だが、大口の売却となると、今度は客側の都合もあるからな。
「なあに、売れなかったら食べればいいのだよ」
キアラが笑って言うが、正直この町で調理できる奴は貴族お抱えの料理人くらいだろう。
シャロンは「こんなの魔法で一発調理できるわよ」と豪語していたが。
そんな便利な魔法があれば、習っておけばよかったかと少し後悔した。
次は鍛冶屋に向かう。
毛皮や牙と言った素材はここで買い取ってもらうのが一番経済的にお得だからだ。
店に入ると、俺たちを見つけた鍛冶屋のおばさんが寄ってくる。
「おや、久しぶりだねえ。クロスボウの調子はどうだい?」
「はい! お陰様でバッチリ戦えてます! 本当にありがとうございます!」
リズがぱっと顔を明るくして答える。
「それで、今日はどうしたんだい? お兄さんとお嬢ちゃんの武器でも作るかい?」
「いや、今日は買取をお願いしたい。深淵で活動してかなり素材が貯まっていてな」
「へえ、深淵かい。あそこを中心にした活動は初級者じゃなかなかできないはずだけど、あんたたち強いんだねえ」
俺の言葉にニコニコしながら言うおばさん。
「それで? 素材はなんだい? 大口でも色を付けて買い取るよ? 武具の素材は飯のタネだ。いくらあっても困らないからねぇ」
「そうか、なら、これらを頼む」
俺は、オーク、グレイベア、シルバーウルフの毛皮と、レッドビーの毒針を取り出した。
ジャイアントコブラの毒袋、キングボアの牙、レッドオークの毛皮と牙は貴重そうなので持っておく。
「そうだねえ……全部で、20万Gでどうだい?」
「じゃあ、それでお願いする」
リズも同じように換金する。
ついに俺の所持金は100万Gを突破した。
異世界に転生し、コツコツ魔物を倒し続けて約三ヵ月……実に感慨深い思いになった。
俺はシャロンに『ゴブリンの紋章』を見せる。
木の板に掘られた、赤い文字。
レア素材ということだが、価値が全く分からなかった。
鑑定をかけて見ても『ゴブリンの群れでのみ使われる言葉を掘っているアイテム』という何とも言い難い結果が出てきたのだ。
この分だと、武具にも使えそうにないし。
ギルドでの換金額も1500Gとレア素材にしては安かった。
「あら……ゴブリンマージのレア素材ね……。これなら、私が3万Gで買い取ってあげるわよ?」
「どういうことだ?」
「オリジナルの魔導書を作る時って、色んな魔法言語を組み合わせて作るのよ。その時、このゴブリンの紋章に書いてある言葉を解読していれば、それも魔法言語として使えるの。『灰色の熊掌』と同じ。一部の人間にはとても価値のある素材なのよ」
なるほどな……魔物素材は奥が深い。
リズもキアラもある程度の知識はあるとはいえ、ルクシア周辺の魔物に限るだろうし。
シレイドに至っては、裏家業で得たという凶悪知識しかないだろうし。
この辺りの知識を豊富に持っている者を味方にできたなら、換金も楽になるのだろうか……。
とりとめのないことを思いながら、俺はゴブリンの紋章をシャロンに買い取ってもらった。
「ああ、あと、これもここで買い取ってもらえるか?」
俺はガラテアでの戦いの褒美としてもらった、大量の『オークの血』をシャロンに差し出した。
これも、まあ、武具には使えないだろう。
「あら、珍しいもの持ってるわね」
シャロンは赤い瓶を一つ持って、窓の光にかざす。
そして、微笑んで答える。
「うん。純度も悪くないわ。買い取らせてもらうわよ。そうねえ……一本2000Gでどうかしら」
ギルドの定価の倍だ。
「ああ、それで頼む」
俺は五十本のオークの血の瓶をシャロンに買い取ってもらった。
「ちなみになんだが、それ、何に使うんだ?」
「あら……知りたい?」
俺の問いに、シャロンは不気味な笑みを浮かべる。
「い、いや、やっぱりいいや」
「ぷっ……! ふふふ、そんなに怯えなくてもいいわよ。オークの血は強力な精力剤になるのよ」
空恐ろしくなって質問を撤回しようとすると、シャロンは吹き出して笑いながら答えてくれる。
「精力剤?」
「ええ。年寄りの貴族なんかに高く売れるわ。貴族は基本的に暇だから、情事に耽る回数も密度も多いのよ。そうだ、レオくんにもあげるわ」
シャロンが奥の棚から取り出したのは、渡したオークの血よりも透明度の増した赤い液体が並べられた木箱。
瓶には『オークエクスタシー』と書いてある。
「せっかくだから、ダースで持っていきなさい」
半ば、押し付けられるようにして、俺はオークエクスタシーを手に入れた。
まあ、今度使ってみるか。
べ、別に彼女に「す、すごい……」と思われたいとかそんなんじゃないけど、本当にそんなんじゃないけど。
換金を終えて、シャロンとしばらく談笑し、俺たちが店を出ようとした際、シャロンが大量の魔導書を持ってくる。
「せっかく、灰色の熊掌をたくさん譲ってもらったから、この魔導書、全部持って行っていいわよ。オリジナルの魔法じゃなくて既製品だけれど、レオくん、今、火属性しか使えないでしょう? 四つの基本属性くらいは押さえておいた方がいいわ」
差し出された本にはそれぞれ『火』『水』『土』『風』に対応した本らしい。
「一式揃えようとしても、この町の道具屋じゃ下級魔法までの魔導書しか置いてないだろうしね。基本属性の中級魔法までのこの魔導書全部、どどーんと持っていっちゃっていいわよ……レオくんなら、全部習得できそうだしね」
「そうか。すまないな。遠慮なくいただくよ」
俺はシャロンから魔導書を受け取って店を出た。
「暇じゃなかったか? 結構時間がかかってしまったから」
知識人のシャロンの話はタメになるものが多く、ついつい長話をしてしまう。
リズも、自分の換金が終わった後はずっと手持無沙汰だっただろうし。
「ううん、あの店、色んなアイテムがあるから見てて面白いのよ」
「ん……シレイドも、色んな自作道具を作る参考になる……」
「私も物珍しかったから、退屈しなかったぞ」
リズとシレイドとキアラは、俺とシャロンがあれこれ話し込んでいる間、店の品物を見ていたらしい。
「それより、灰色の熊掌、あんなにあげちゃってよかったの?」
リズが訊いてくる。
「ああ。あんなに食い切れんし、リズみたいに太い顧客を持っているわけでもないしな」
「あはは、そっか。まあ、グルメ貴婦人でも流石に五十個も買わないと思うけど」
リズも俺ほどとはいかないにしろ、グレイベアにとどめを刺していたので、それなりに素材を獲得している。
だが、大口の売却となると、今度は客側の都合もあるからな。
「なあに、売れなかったら食べればいいのだよ」
キアラが笑って言うが、正直この町で調理できる奴は貴族お抱えの料理人くらいだろう。
シャロンは「こんなの魔法で一発調理できるわよ」と豪語していたが。
そんな便利な魔法があれば、習っておけばよかったかと少し後悔した。
次は鍛冶屋に向かう。
毛皮や牙と言った素材はここで買い取ってもらうのが一番経済的にお得だからだ。
店に入ると、俺たちを見つけた鍛冶屋のおばさんが寄ってくる。
「おや、久しぶりだねえ。クロスボウの調子はどうだい?」
「はい! お陰様でバッチリ戦えてます! 本当にありがとうございます!」
リズがぱっと顔を明るくして答える。
「それで、今日はどうしたんだい? お兄さんとお嬢ちゃんの武器でも作るかい?」
「いや、今日は買取をお願いしたい。深淵で活動してかなり素材が貯まっていてな」
「へえ、深淵かい。あそこを中心にした活動は初級者じゃなかなかできないはずだけど、あんたたち強いんだねえ」
俺の言葉にニコニコしながら言うおばさん。
「それで? 素材はなんだい? 大口でも色を付けて買い取るよ? 武具の素材は飯のタネだ。いくらあっても困らないからねぇ」
「そうか、なら、これらを頼む」
俺は、オーク、グレイベア、シルバーウルフの毛皮と、レッドビーの毒針を取り出した。
ジャイアントコブラの毒袋、キングボアの牙、レッドオークの毛皮と牙は貴重そうなので持っておく。
「そうだねえ……全部で、20万Gでどうだい?」
「じゃあ、それでお願いする」
リズも同じように換金する。
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