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第6章:灼炎の祠と銀狼獣人編
第18話:抵抗
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ローガンは俺からお金を受け取ると鑑定魔法で枚数を確認する。
「はい、確かに。お買い上げありがとうございます」
恭しくお辞儀をする鷹の目の商人。
やはり、食えない男だ。
「少し気になったんだが、奴隷の価格って相場はどれくらいなんだ?」
「はい。ワケありの奴隷ですと5万から20万、一般の奴隷ですと30万から70万、見目麗しい上質な奴隷や今回のように戦闘能力に特化している奴隷ですと100万から天井はありません」
なるほど、今回は150万Gということだからお高めの部類には入っているのか。
「ロウナの場合は、先ほども言ったように躾ができていない状態であること、種族的に下位とされている獣人の奴隷であることから、こちらもかなりお勉強させてもらいました」
ふむ、かなり値引きもされているようだ。
「そうか、助かるよ。ありがとう」
「いえいえ、私としてもレオ様が立派になられて何よりでした。いい商売ができましたからね」
「ロウナはどこで仕入れたんだ?」
「ここより遥か北の国の獣人の森からですね。私はこう見えて、世界各国に支店を持つ奴隷商ですから」
そうだったのか。
この辺境の町ルクシアで商売しているから、てっきり普通の商人なのかと思っていたな。
前々から感じていた、只者じゃない感じはそこから来ていたのか。
「さて、お話はこの辺にして……奴隷契約のほうを済ませましょう。レオ様、ロウナ……手を前へ」
俺とロウナは手を前に差し出す。
「スレイブ・コネク……」
ローガンが呪文を唱えると、俺の手とロウナの手が青白い光を放ちだす。
その直後——!!
「はあああああっ!!」
ロウナは凄まじい勢いで拳をローガンに叩きつけた!
「ぐうっ!?」
ローガンはすぐさま腕でガードするも元々の彼女の攻撃力が高いゆえか、顔をしかめる。
ロウナはすぐさま俺を睨み、素早い蹴りを繰り出してくる。
「ご主人様!!」
素早いシレイドがすぐさま反応し、間に入る。
ロウナの素早い連撃をシレイドは受け流していく。
が、顔が険しい。
やはり、格上の相手ということもありロウナの攻撃はかなり堪えるようだ。
ローガンの側近の黒服も何人かロウナを取り押さえようとするも返り討ちに合う。
辺境の町の黒服程度では太刀打ちできない強さなのだろう。
そうこうしていると、体勢を立て直したローガンが指先に魔力を込める。
「いやはや、連れてきた時から大人しかったのですっかり気を抜いていましたね……。仕方ありません、痛い目を見てもらいましょう。奴隷罰《スレイブ・ペナルティ》!!」
ローガンの指先がまばゆく光った瞬間——。
「ぐあああああああああああああああぁぁあっ!?」
ロウナが突然、肩の奴隷紋を押さえて苦しみだした。
彼女はその場に倒れて、もがき苦しんでいる。
次第に息も絶え絶えになってきて、今にも死んでしまうのではと思うほどだ。
前に聞いていた、主人に背いたときに死よりも苦しい痛みが走るという奴隷の呪いか。
一旦、場が落ち着いたところでローガンが言う。
「すみません。レオ様……この商談、無かったことに致しましょう。奴隷商としてこのような欠陥品を売るわけにはまいりません」
「ローガン……彼女はどうなるんだ?」
声にならない呻き声を上げ続けて苦しむロウナを見て、思わず問う。
「このまま一週間、呪いを継続し苦しみ続けてもらいます。主人に背くとはそういうことです」
「今にも死んでしまいそうだが?」
「その時はその時です。損失ではありますが、商品として使い物にならない以上仕方ありませんな」
俺の言葉に、ローガンが当然のように答える。
それは……あまりにも可哀そうではないだろうか。
この世界の奴隷文化というものはよく知らないが、鑑定で見た限り彼女自身、相当な境遇でここに流れ着いたはずだ。
すぐに『奴隷として言うことを聞け』というのが受け入れがたいのは、よく解る。
「ローガン。呪いを解いてやってくれ。少し話がしたい」
「え……で、ですが……」
「俺が買った奴隷だ。これから同じ仲間として活躍してもらわなければならない。呪いが原因で戦えなくなったら、その方が困る」
「で、ですから、他の奴隷を紹介します。この商談は無かったことに……」
「俺は『彼女』を買ったんだ」
ここで救わなければ、彼女は死んでしまうかもしれない。
少々強引だが、我を通させてもらおう。
ローガンはしばらく俺を見つめた後、ふうっと息を吐く。
そして短く「分かりました」と言い、呪いを解いた。
ロウナはすでに抵抗する力がないらしく、倒れたまま「はぁっ、はぁっ」っと激しく肩で息をしている。
俺は彼女に近づいて語りかける。
「ロウナ。俺は、奴隷が欲しいわけではない。一緒に冒険して戦ってくれる仲間が欲しいんだ。俺は君に仲間になってほしい。もし、それが嫌ならここで断ってくれて構わない……それも君の自由だ。だが、その場合、ローガンの下で再び罰を受け続けることになってしまうぞ」
半ば脅迫気味の言葉だが、彼女のためだ。
ロウナは激しく呼吸したまま言う。
「あんたの……はぁっ、はぁっ、仲間に……はぁっ、はぁっ、なる! なるから……!! 呪いはやめてくれ……!! はぁっ、はぁっ、助けてくれ……!!」
目に涙を浮かべながら訴えてくるロウナ。
奴隷の呪いは、よほどキツイものなのだろう。
シレイドが従順なので、その威力を目にする機会はなかったが……。
この世界の魔法が時に恐ろしく感じるな。
「……話はまとまりましたかな?」
ローガンが頃合いを見て話しかけてくる。
「ああ。すまないな、わがまま言って。商人の矜持も曲げさせてしまったみたいで……」
「構いません。私にとっては矜持の前に『お客様のお気持ち』が第一ですから。それでは……レオ様、ロウナ、改めて手を前に出してください」
俺とロウナは手を突き合わせるように前に出す。
「奴隷連結《スレイブ・コネクト》」
俺とロウナの間に確かに奴隷契約が結ばれたのだった。
「はい、確かに。お買い上げありがとうございます」
恭しくお辞儀をする鷹の目の商人。
やはり、食えない男だ。
「少し気になったんだが、奴隷の価格って相場はどれくらいなんだ?」
「はい。ワケありの奴隷ですと5万から20万、一般の奴隷ですと30万から70万、見目麗しい上質な奴隷や今回のように戦闘能力に特化している奴隷ですと100万から天井はありません」
なるほど、今回は150万Gということだからお高めの部類には入っているのか。
「ロウナの場合は、先ほども言ったように躾ができていない状態であること、種族的に下位とされている獣人の奴隷であることから、こちらもかなりお勉強させてもらいました」
ふむ、かなり値引きもされているようだ。
「そうか、助かるよ。ありがとう」
「いえいえ、私としてもレオ様が立派になられて何よりでした。いい商売ができましたからね」
「ロウナはどこで仕入れたんだ?」
「ここより遥か北の国の獣人の森からですね。私はこう見えて、世界各国に支店を持つ奴隷商ですから」
そうだったのか。
この辺境の町ルクシアで商売しているから、てっきり普通の商人なのかと思っていたな。
前々から感じていた、只者じゃない感じはそこから来ていたのか。
「さて、お話はこの辺にして……奴隷契約のほうを済ませましょう。レオ様、ロウナ……手を前へ」
俺とロウナは手を前に差し出す。
「スレイブ・コネク……」
ローガンが呪文を唱えると、俺の手とロウナの手が青白い光を放ちだす。
その直後——!!
「はあああああっ!!」
ロウナは凄まじい勢いで拳をローガンに叩きつけた!
「ぐうっ!?」
ローガンはすぐさま腕でガードするも元々の彼女の攻撃力が高いゆえか、顔をしかめる。
ロウナはすぐさま俺を睨み、素早い蹴りを繰り出してくる。
「ご主人様!!」
素早いシレイドがすぐさま反応し、間に入る。
ロウナの素早い連撃をシレイドは受け流していく。
が、顔が険しい。
やはり、格上の相手ということもありロウナの攻撃はかなり堪えるようだ。
ローガンの側近の黒服も何人かロウナを取り押さえようとするも返り討ちに合う。
辺境の町の黒服程度では太刀打ちできない強さなのだろう。
そうこうしていると、体勢を立て直したローガンが指先に魔力を込める。
「いやはや、連れてきた時から大人しかったのですっかり気を抜いていましたね……。仕方ありません、痛い目を見てもらいましょう。奴隷罰《スレイブ・ペナルティ》!!」
ローガンの指先がまばゆく光った瞬間——。
「ぐあああああああああああああああぁぁあっ!?」
ロウナが突然、肩の奴隷紋を押さえて苦しみだした。
彼女はその場に倒れて、もがき苦しんでいる。
次第に息も絶え絶えになってきて、今にも死んでしまうのではと思うほどだ。
前に聞いていた、主人に背いたときに死よりも苦しい痛みが走るという奴隷の呪いか。
一旦、場が落ち着いたところでローガンが言う。
「すみません。レオ様……この商談、無かったことに致しましょう。奴隷商としてこのような欠陥品を売るわけにはまいりません」
「ローガン……彼女はどうなるんだ?」
声にならない呻き声を上げ続けて苦しむロウナを見て、思わず問う。
「このまま一週間、呪いを継続し苦しみ続けてもらいます。主人に背くとはそういうことです」
「今にも死んでしまいそうだが?」
「その時はその時です。損失ではありますが、商品として使い物にならない以上仕方ありませんな」
俺の言葉に、ローガンが当然のように答える。
それは……あまりにも可哀そうではないだろうか。
この世界の奴隷文化というものはよく知らないが、鑑定で見た限り彼女自身、相当な境遇でここに流れ着いたはずだ。
すぐに『奴隷として言うことを聞け』というのが受け入れがたいのは、よく解る。
「ローガン。呪いを解いてやってくれ。少し話がしたい」
「え……で、ですが……」
「俺が買った奴隷だ。これから同じ仲間として活躍してもらわなければならない。呪いが原因で戦えなくなったら、その方が困る」
「で、ですから、他の奴隷を紹介します。この商談は無かったことに……」
「俺は『彼女』を買ったんだ」
ここで救わなければ、彼女は死んでしまうかもしれない。
少々強引だが、我を通させてもらおう。
ローガンはしばらく俺を見つめた後、ふうっと息を吐く。
そして短く「分かりました」と言い、呪いを解いた。
ロウナはすでに抵抗する力がないらしく、倒れたまま「はぁっ、はぁっ」っと激しく肩で息をしている。
俺は彼女に近づいて語りかける。
「ロウナ。俺は、奴隷が欲しいわけではない。一緒に冒険して戦ってくれる仲間が欲しいんだ。俺は君に仲間になってほしい。もし、それが嫌ならここで断ってくれて構わない……それも君の自由だ。だが、その場合、ローガンの下で再び罰を受け続けることになってしまうぞ」
半ば脅迫気味の言葉だが、彼女のためだ。
ロウナは激しく呼吸したまま言う。
「あんたの……はぁっ、はぁっ、仲間に……はぁっ、はぁっ、なる! なるから……!! 呪いはやめてくれ……!! はぁっ、はぁっ、助けてくれ……!!」
目に涙を浮かべながら訴えてくるロウナ。
奴隷の呪いは、よほどキツイものなのだろう。
シレイドが従順なので、その威力を目にする機会はなかったが……。
この世界の魔法が時に恐ろしく感じるな。
「……話はまとまりましたかな?」
ローガンが頃合いを見て話しかけてくる。
「ああ。すまないな、わがまま言って。商人の矜持も曲げさせてしまったみたいで……」
「構いません。私にとっては矜持の前に『お客様のお気持ち』が第一ですから。それでは……レオ様、ロウナ、改めて手を前に出してください」
俺とロウナは手を突き合わせるように前に出す。
「奴隷連結《スレイブ・コネクト》」
俺とロウナの間に確かに奴隷契約が結ばれたのだった。
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