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第10章:ルクシアの町と女を忘れたギルド団長編
第2話:ハクオウ山一合目
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そうして、やってきたのはハクオウ山の入り口、一合目付近。
ざっくり範囲が分かれていて三合目までをハクオウ山というらしい。
ボス部屋までは一日で行ける距離だが、道中の魔物がなかなか曲者で、時間を取られるようだ。
「レオ、早く行こうよ!」
「だぜ! ご主人様! 一流冒険者になって一発目のダンジョンなんだからよ!」
うずうずしているリズとロウナが鼻息荒く急かしてくる。
「よし! じゃあ、ハクオウ山、踏破開始だ!」
俺たちは、いよいよ山へと踏み込んだ。
一合目は木々が程よく茂り、一見長閑な風景が広がる。
動物も多いらしく、あちこちで鳥のさえずりが聞こえたり、鹿や兎といった動物が前方を通り過ぎたりしている。
だが、油断してはならない。ここはダンジョンなのだ。
現れるのは動物だけではない。
そうこうしていると、真っ黒で立派な巻角を持った山羊の群れが現れる。
瘴気を感じることから、動物ではないことは確かだ。
鑑定を行う。
名前:ダークゴート
危険度:B
説明:山に住む黒い山羊の魔物。角を振り回すことで闇魔法を操ることができる。凶暴な性格のため、家畜には向かない。
素材:「闇山羊の黒毛皮」
レア素材:「闇山羊の巻角」
ふむ。あわよくば捕獲してサマンサの牧場に連れていくかと思ったが、凶暴らしいので諦めよう。
俺、キアラ、ロウナは目を見合わせ、アイコンタクトをとる。
そうして、頃合いを見計らって、闇山羊達に突撃する。
「はあああっ!!」
キアラがヘルズホーンランスで闇山羊を薙ぎ払う。
複数頭の闇山羊がそれによって斃れる。
広範囲攻撃において、槍ほど適した武器はないだろう。
ロウナは闇山羊の顔面に重いパンチを食らわせて、一匹一匹確実に仕留める。
屠るのは簡単だが、角が粉々に砕けたりもしているので、素材入手においては悪手だとも思うが。
俺は、風霊の剣でダークゴートの首元を狙って掻き切る。
一匹、二匹、三匹と素早く確実にこと切れていく。
その時、群れの後方にいた闇山羊たちがブンブンと立派な角を振り回す。
と、同時に、黒く尖った衝撃波が俺たちに向かって飛んでくる。
俺は、土属性の単純魔法で土壁を作り、それを防いだ。
バァン! バァン! バァン!
土壁に当たった衝撃波が霧散していく。
だが、次から次に衝撃波が飛んできて、土壁の方がどんどんボロボロになっていく。
「くっ……なかなか、攻撃に転じれないな」
「相手のMPが無くなるのを待たなければいけないか?」
「くそぉ、姑息な山羊どもだ。イライラするぜ」
俺が歯噛みしていると、冷静にキアラが言う。
ロウナも歯痒そうだ。
その時、茂みから音もなくシレイドが現れる。
「……『デッドスピード』!」
目にもとまらぬ速さで、闇山羊の背後を取り、瞬時に急所である首をダガーで切り裂いていく。
ダークゴートは、俺たちに夢中で彼女の存在に気付かなかったようで、斬られたのも分からぬといった表情のまま、こと切れていく。
遠距離から魔法を撃ってきていた闇山羊たちも全滅する。
「むふー……♪ ダークゴート……倒したー……♪」
嬉しそうなシレイド。
こういう不意打ちや奇襲など咄嗟の状況においては、やはり彼女に救われているな。
前衛にも後衛にも転じれる彼女の存在は、パーティにとっても大きい。
「すごいよ! シレイドちゃん!」
「さすがですね!」
リズとセーラに褒められて、満足げに頬を緩ませるシレイド。
ロウナが倒したダークゴート以外からは、ちゃんと角も素材として採れた。
毛皮も剥ぎ取り、丸裸になった闇山羊たちをじっと見つめ、シレイドが言う。
「ご主人様……これ、食べれない?」
「うーん、どうだろうか……素材としての説明はなかったけど……」
物は試しだ。ちゃんと、使えるものは使ってあげないと斃された闇山羊たちも浮かばれんだろう。
最悪、素材じゃなくてもシレイドなら食いそうだしな。
俺たちは、ダークゴートの肉を切り取って、鑑定をかけてみる。
名前:闇山羊肉
素材ランク:B
説明:山に住む魔物「ダークゴート」の肉。隠しレア素材。山岳では割と有名な食肉素材。独特の臭みがあり、調理には山に住む者の専門的な調理技術が必要。
「おお! これ、食べられるみたいだぞ」
「へー、隠し素材だったんだねぇ」
「むふー♪ わーい……やったぁ!」
俺とリズは驚き、シレイドはテンションが上がっている。
シレイドの食い意地がなければ、発見できなかった素材だな。
俺たちはありがたく、闇山羊たちの肉も頂いた。
再び歩くこと二十分ほど。
今度は、灰色の光沢を帯びた四足歩行の珍妙な恐竜のような魔物が現れる。
目が無く、大きな一本角を持ち、ツルツルとした体は毛や鱗が一切ない。
身体全体が水晶玉のように、滑らかに輝いている。
身体だけなら地を這う人間みたいな姿である。
見方によってはゾンビのようで少々気持ち悪い。
「なんだ? あいつは……?」
今まで出会ったことのない形状の魔物に、思わず声が出てしまう。
とりあえず鑑定を行った。
名前:ホローレックス
危険度:A
説明:瘴気の濃い薄暗いダンジョンで蜥蜴の魔物が進化した竜種の魔物。瘴気で生成した猛毒を頬に溜め込む習性を持つ。
素材:「虚毒竜の皮」
レア素材:「虚毒竜の猛毒袋」
危険度Aの竜種……サラマンダーと同じのようだ。
とはいえ、地を這う奇妙な姿からは、とても竜のようには見えないが……。
一流冒険者ご用達のダンジョン、危険度Aがこんなに早く出現するのか。
「みんな、危険度Aだ……! 気合を入れるぞ!」
俺の号令に五人が首肯する。
ホローレックスたちがクンクンと周囲の匂いを嗅いでいる。
どうやら、こちらの存在に気づきだしているようだ。
俺たちは、注意を払いながら先手を取るように虚毒竜に襲い掛かった。
ざっくり範囲が分かれていて三合目までをハクオウ山というらしい。
ボス部屋までは一日で行ける距離だが、道中の魔物がなかなか曲者で、時間を取られるようだ。
「レオ、早く行こうよ!」
「だぜ! ご主人様! 一流冒険者になって一発目のダンジョンなんだからよ!」
うずうずしているリズとロウナが鼻息荒く急かしてくる。
「よし! じゃあ、ハクオウ山、踏破開始だ!」
俺たちは、いよいよ山へと踏み込んだ。
一合目は木々が程よく茂り、一見長閑な風景が広がる。
動物も多いらしく、あちこちで鳥のさえずりが聞こえたり、鹿や兎といった動物が前方を通り過ぎたりしている。
だが、油断してはならない。ここはダンジョンなのだ。
現れるのは動物だけではない。
そうこうしていると、真っ黒で立派な巻角を持った山羊の群れが現れる。
瘴気を感じることから、動物ではないことは確かだ。
鑑定を行う。
名前:ダークゴート
危険度:B
説明:山に住む黒い山羊の魔物。角を振り回すことで闇魔法を操ることができる。凶暴な性格のため、家畜には向かない。
素材:「闇山羊の黒毛皮」
レア素材:「闇山羊の巻角」
ふむ。あわよくば捕獲してサマンサの牧場に連れていくかと思ったが、凶暴らしいので諦めよう。
俺、キアラ、ロウナは目を見合わせ、アイコンタクトをとる。
そうして、頃合いを見計らって、闇山羊達に突撃する。
「はあああっ!!」
キアラがヘルズホーンランスで闇山羊を薙ぎ払う。
複数頭の闇山羊がそれによって斃れる。
広範囲攻撃において、槍ほど適した武器はないだろう。
ロウナは闇山羊の顔面に重いパンチを食らわせて、一匹一匹確実に仕留める。
屠るのは簡単だが、角が粉々に砕けたりもしているので、素材入手においては悪手だとも思うが。
俺は、風霊の剣でダークゴートの首元を狙って掻き切る。
一匹、二匹、三匹と素早く確実にこと切れていく。
その時、群れの後方にいた闇山羊たちがブンブンと立派な角を振り回す。
と、同時に、黒く尖った衝撃波が俺たちに向かって飛んでくる。
俺は、土属性の単純魔法で土壁を作り、それを防いだ。
バァン! バァン! バァン!
土壁に当たった衝撃波が霧散していく。
だが、次から次に衝撃波が飛んできて、土壁の方がどんどんボロボロになっていく。
「くっ……なかなか、攻撃に転じれないな」
「相手のMPが無くなるのを待たなければいけないか?」
「くそぉ、姑息な山羊どもだ。イライラするぜ」
俺が歯噛みしていると、冷静にキアラが言う。
ロウナも歯痒そうだ。
その時、茂みから音もなくシレイドが現れる。
「……『デッドスピード』!」
目にもとまらぬ速さで、闇山羊の背後を取り、瞬時に急所である首をダガーで切り裂いていく。
ダークゴートは、俺たちに夢中で彼女の存在に気付かなかったようで、斬られたのも分からぬといった表情のまま、こと切れていく。
遠距離から魔法を撃ってきていた闇山羊たちも全滅する。
「むふー……♪ ダークゴート……倒したー……♪」
嬉しそうなシレイド。
こういう不意打ちや奇襲など咄嗟の状況においては、やはり彼女に救われているな。
前衛にも後衛にも転じれる彼女の存在は、パーティにとっても大きい。
「すごいよ! シレイドちゃん!」
「さすがですね!」
リズとセーラに褒められて、満足げに頬を緩ませるシレイド。
ロウナが倒したダークゴート以外からは、ちゃんと角も素材として採れた。
毛皮も剥ぎ取り、丸裸になった闇山羊たちをじっと見つめ、シレイドが言う。
「ご主人様……これ、食べれない?」
「うーん、どうだろうか……素材としての説明はなかったけど……」
物は試しだ。ちゃんと、使えるものは使ってあげないと斃された闇山羊たちも浮かばれんだろう。
最悪、素材じゃなくてもシレイドなら食いそうだしな。
俺たちは、ダークゴートの肉を切り取って、鑑定をかけてみる。
名前:闇山羊肉
素材ランク:B
説明:山に住む魔物「ダークゴート」の肉。隠しレア素材。山岳では割と有名な食肉素材。独特の臭みがあり、調理には山に住む者の専門的な調理技術が必要。
「おお! これ、食べられるみたいだぞ」
「へー、隠し素材だったんだねぇ」
「むふー♪ わーい……やったぁ!」
俺とリズは驚き、シレイドはテンションが上がっている。
シレイドの食い意地がなければ、発見できなかった素材だな。
俺たちはありがたく、闇山羊たちの肉も頂いた。
再び歩くこと二十分ほど。
今度は、灰色の光沢を帯びた四足歩行の珍妙な恐竜のような魔物が現れる。
目が無く、大きな一本角を持ち、ツルツルとした体は毛や鱗が一切ない。
身体全体が水晶玉のように、滑らかに輝いている。
身体だけなら地を這う人間みたいな姿である。
見方によってはゾンビのようで少々気持ち悪い。
「なんだ? あいつは……?」
今まで出会ったことのない形状の魔物に、思わず声が出てしまう。
とりあえず鑑定を行った。
名前:ホローレックス
危険度:A
説明:瘴気の濃い薄暗いダンジョンで蜥蜴の魔物が進化した竜種の魔物。瘴気で生成した猛毒を頬に溜め込む習性を持つ。
素材:「虚毒竜の皮」
レア素材:「虚毒竜の猛毒袋」
危険度Aの竜種……サラマンダーと同じのようだ。
とはいえ、地を這う奇妙な姿からは、とても竜のようには見えないが……。
一流冒険者ご用達のダンジョン、危険度Aがこんなに早く出現するのか。
「みんな、危険度Aだ……! 気合を入れるぞ!」
俺の号令に五人が首肯する。
ホローレックスたちがクンクンと周囲の匂いを嗅いでいる。
どうやら、こちらの存在に気づきだしているようだ。
俺たちは、注意を払いながら先手を取るように虚毒竜に襲い掛かった。
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