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第10章:ルクシアの町と女を忘れたギルド団長編
第3話:虚毒竜ホローレックス
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「先手必勝だ!! はあっ!!」
キアラが槍で虚毒竜の頭部を突き刺す。
が、ゴムのようにぶにぶにとした弾力があるようで効いていない。
ホローレックスが「ギャース」と、恐竜のような咆哮を上げる。
大気がビリビリと震え、俺たちは少し竦んでしまう。
そこへ、虚毒竜は突進をぶちかましてきた。
ドーンッ!!
「くぅ!!」
キアラが突進を受けて後方に吹っ飛ぶ。
思わず心配になったが、鉄壁のロータスメイルのお陰でダメージは少ないようだ。
身体全体が柔らかく、斬撃を通しにくいらしいな。
俺は、すかさずホローレックスの側面に移動して、剣を振るう。
「『ルーンブレード』!!」
ザン!! という音と共に、ホローレックスの身体に大きな傷ができる。
やはり、伸縮する皮は断ち切りにくいようで、両断とはいかなかった。
「おらあああああっ!!」
怯むホローレックスの顔面目掛けて、ロウナが渾身の蹴りをお見舞いする。
ベキイイイィ!!
骨が折れるような音がして、虚毒竜が大きく仰け反った。
「そこだ!! ヘビーショット!!」
露になった首元にリズの隕石鼠弾が炸裂する。
喉元で爆発して、ホローレックスが斃れた。
だが、気を緩めてはいけない。
もう一匹いる!
残ったホローレックスは「ゲギャギャギャ」と怪しげな鳴き声を上げて首を震わせる。
そうすると、その頬がぷくーっと風船のように膨れ上がった。
そして、次の瞬間……!!
口から、紫色の液体を勢いよく吐き出した。
「……!? ロウナ!! ……避けて!!」
それを見たシレイドが、後方から叫ぶ。
ロウナはその声を聞いて、瞬時に液体を回避する。
ジュウウウウッ!!
紫色の液体がかかった木の幹が、ドロドロに溶けていく。
「あれは……酸か!?」
「……多分正確には、強酸性の毒……!! ……当たったら、皮膚どころか骨まで溶ける……!!」
なんて恐ろしい毒だ。
「接近戦は危険だ!! 遠距離で倒すぞ!!」
俺の号令に、皆が首肯して返事をする。
「くらえ!! 精霊強化……からの!! 『精霊砲突』——!!」
強化魔法をかけた上での、霊属性の光線を槍から発射するキアラ。
「ギャアアアアアス!!」
光線は、ちょうどホローレックスの腹部に直撃して大きな傷を作る。
「まだだぜ!! 『ブレッドパンチ』!! 連発だぁ!!」
ロウナの拳弾の雨が虚毒竜に降り注ぐ。
「トドメだ!! 『マグナムブレイド』!!」
ヨロヨロになったところを、俺が突きの弾丸でバックリと露になった心臓部を貫いた。
ホローレックス二頭の討伐完了だ。
「ふいー! ヒヤヒヤしたよぉ!」
「危ない毒でしたね……皆さん、お怪我はありませんでしたか?」
後方のリズが冷や汗を拭い、セーラが心配そうに尋ねてくる。
「突進をくらったが、なんら問題はない。やはり、このロータスメイルは頑丈だ」
「あたしもだ。溶解性の毒はビビったけど、シレイドのお陰で回避できたしな」
キアラとロウナが問いかけに答える。
シレイドは、慎重にホローレックスの素材剥ぎ取りを行っている。
「ご主人様……この『虚毒竜の猛毒袋』……シレイド、一個欲しい……」
ホローレックスのタプタプした頬袋を綺麗に取り出し、キラキラした目で俺におねだりしてくるシレイド。
まあ、欲しがるだろうなとは思っていたが。
「ああ、分かった。構わないぞ。ただし、気を付けて扱うんだぞ。めちゃくちゃ危ないみたいだし」
「ん……わかった」
俺の注意喚起に、聞き分けのいい子供のように首を縦に振るシレイド。
「なかなか、敵も強くなってきたな。一流冒険者用のダンジョンは、これまでのダンジョンに比べて、明らかに難易度が上がっているように感じる」
「ああ、同感だ」
キアラの言葉に、同意を返す。
明確な力量差は感じないものの、一撃でも食らえば大ダメージという魔物がダンジョンを経るごとに多くなっている気がする。
これが、一流冒険者の冒険というものなのだろう。
山の一合目、いわばダンジョンの初っ端でこのような強さの魔物に巻き込まれるとは。
注意深く進んでいく必要がありそうだ。
そのまま、ハクオウ山一合目を進んでいく。
そうすると、次は身体に橙色の花が生えた白く巨大な蟷螂が出てくる。
大きさは人間の子供ぐらいだろうか。
キシキシと音を立てながら群れる姿は、なんとも気色悪い。
鑑定をしてみる。
名前:ポピーマンティス
危険度:B+
説明:大きなケシの花を身体に持つ蟷螂の魔物。鋭く尖った鎌のような脚を持っており、花に誘われて近づいてきた獲物を脚で捉えて捕食する。
素材:「芥子蟷螂の鎌」
レア素材:「マンティスポピー」
なるほど。以前、霧の森で遭遇したリリーマンティスの亜種だろう。
奴らと同じように、地球でいうところのハナカマキリのような姿である。
「レオ……どうする?」
リズが眉をハの字に曲げて聞いてくる。
うむぅ……流石に、あの気持ち悪い蟲と取っ組み合うのは遠慮したい。
「よし。とりあえず、遠距離で攻撃してみよう」
虫というからには、火で燃えるだろう。
「『エルフレイム』!! 『エルフレイム』!! 『エルフレイム』!!」
山の木々を燃やしてしまわないように、芥子蟷螂がいる範囲に絞って、火属性魔法を放つ。
「キシャアアアアア!!」
「キョエエエエエエ!!」
「グキョオオオオオ!!」
聞くに堪えない鋭い断末魔をあげて、芥子蟷螂たちが息絶えていく。
と、そのうち二匹が火を逃れて、こちらに向かってくる。
「シャーー!!」
身体に生えるケシの花をゆさゆさ揺らし、大砲のように構えると花弁がこちらに向かって飛んでくる。
サクッ!! サクッ!!
花弁が、まるで苦無のように近くの木に突き刺さる。
「あ、あぶねぇ……」
「ん……あれ、飛ばされたら危険……早く斃す!」
俺の言葉に、シレイドが力強く答える。
「任せて!! 『ヘビーショット』!!」
「はぁ!! 『エルシャイン』!!」
リズの重い弾丸と、セーラの鋭い光の矢が、それぞれポピーマンティスに突き刺さる。
二匹の芥子蟷螂は「キュウ……」と鈍い呻き声をあげてこと切れたのだった。
キアラが槍で虚毒竜の頭部を突き刺す。
が、ゴムのようにぶにぶにとした弾力があるようで効いていない。
ホローレックスが「ギャース」と、恐竜のような咆哮を上げる。
大気がビリビリと震え、俺たちは少し竦んでしまう。
そこへ、虚毒竜は突進をぶちかましてきた。
ドーンッ!!
「くぅ!!」
キアラが突進を受けて後方に吹っ飛ぶ。
思わず心配になったが、鉄壁のロータスメイルのお陰でダメージは少ないようだ。
身体全体が柔らかく、斬撃を通しにくいらしいな。
俺は、すかさずホローレックスの側面に移動して、剣を振るう。
「『ルーンブレード』!!」
ザン!! という音と共に、ホローレックスの身体に大きな傷ができる。
やはり、伸縮する皮は断ち切りにくいようで、両断とはいかなかった。
「おらあああああっ!!」
怯むホローレックスの顔面目掛けて、ロウナが渾身の蹴りをお見舞いする。
ベキイイイィ!!
骨が折れるような音がして、虚毒竜が大きく仰け反った。
「そこだ!! ヘビーショット!!」
露になった首元にリズの隕石鼠弾が炸裂する。
喉元で爆発して、ホローレックスが斃れた。
だが、気を緩めてはいけない。
もう一匹いる!
残ったホローレックスは「ゲギャギャギャ」と怪しげな鳴き声を上げて首を震わせる。
そうすると、その頬がぷくーっと風船のように膨れ上がった。
そして、次の瞬間……!!
口から、紫色の液体を勢いよく吐き出した。
「……!? ロウナ!! ……避けて!!」
それを見たシレイドが、後方から叫ぶ。
ロウナはその声を聞いて、瞬時に液体を回避する。
ジュウウウウッ!!
紫色の液体がかかった木の幹が、ドロドロに溶けていく。
「あれは……酸か!?」
「……多分正確には、強酸性の毒……!! ……当たったら、皮膚どころか骨まで溶ける……!!」
なんて恐ろしい毒だ。
「接近戦は危険だ!! 遠距離で倒すぞ!!」
俺の号令に、皆が首肯して返事をする。
「くらえ!! 精霊強化……からの!! 『精霊砲突』——!!」
強化魔法をかけた上での、霊属性の光線を槍から発射するキアラ。
「ギャアアアアアス!!」
光線は、ちょうどホローレックスの腹部に直撃して大きな傷を作る。
「まだだぜ!! 『ブレッドパンチ』!! 連発だぁ!!」
ロウナの拳弾の雨が虚毒竜に降り注ぐ。
「トドメだ!! 『マグナムブレイド』!!」
ヨロヨロになったところを、俺が突きの弾丸でバックリと露になった心臓部を貫いた。
ホローレックス二頭の討伐完了だ。
「ふいー! ヒヤヒヤしたよぉ!」
「危ない毒でしたね……皆さん、お怪我はありませんでしたか?」
後方のリズが冷や汗を拭い、セーラが心配そうに尋ねてくる。
「突進をくらったが、なんら問題はない。やはり、このロータスメイルは頑丈だ」
「あたしもだ。溶解性の毒はビビったけど、シレイドのお陰で回避できたしな」
キアラとロウナが問いかけに答える。
シレイドは、慎重にホローレックスの素材剥ぎ取りを行っている。
「ご主人様……この『虚毒竜の猛毒袋』……シレイド、一個欲しい……」
ホローレックスのタプタプした頬袋を綺麗に取り出し、キラキラした目で俺におねだりしてくるシレイド。
まあ、欲しがるだろうなとは思っていたが。
「ああ、分かった。構わないぞ。ただし、気を付けて扱うんだぞ。めちゃくちゃ危ないみたいだし」
「ん……わかった」
俺の注意喚起に、聞き分けのいい子供のように首を縦に振るシレイド。
「なかなか、敵も強くなってきたな。一流冒険者用のダンジョンは、これまでのダンジョンに比べて、明らかに難易度が上がっているように感じる」
「ああ、同感だ」
キアラの言葉に、同意を返す。
明確な力量差は感じないものの、一撃でも食らえば大ダメージという魔物がダンジョンを経るごとに多くなっている気がする。
これが、一流冒険者の冒険というものなのだろう。
山の一合目、いわばダンジョンの初っ端でこのような強さの魔物に巻き込まれるとは。
注意深く進んでいく必要がありそうだ。
そのまま、ハクオウ山一合目を進んでいく。
そうすると、次は身体に橙色の花が生えた白く巨大な蟷螂が出てくる。
大きさは人間の子供ぐらいだろうか。
キシキシと音を立てながら群れる姿は、なんとも気色悪い。
鑑定をしてみる。
名前:ポピーマンティス
危険度:B+
説明:大きなケシの花を身体に持つ蟷螂の魔物。鋭く尖った鎌のような脚を持っており、花に誘われて近づいてきた獲物を脚で捉えて捕食する。
素材:「芥子蟷螂の鎌」
レア素材:「マンティスポピー」
なるほど。以前、霧の森で遭遇したリリーマンティスの亜種だろう。
奴らと同じように、地球でいうところのハナカマキリのような姿である。
「レオ……どうする?」
リズが眉をハの字に曲げて聞いてくる。
うむぅ……流石に、あの気持ち悪い蟲と取っ組み合うのは遠慮したい。
「よし。とりあえず、遠距離で攻撃してみよう」
虫というからには、火で燃えるだろう。
「『エルフレイム』!! 『エルフレイム』!! 『エルフレイム』!!」
山の木々を燃やしてしまわないように、芥子蟷螂がいる範囲に絞って、火属性魔法を放つ。
「キシャアアアアア!!」
「キョエエエエエエ!!」
「グキョオオオオオ!!」
聞くに堪えない鋭い断末魔をあげて、芥子蟷螂たちが息絶えていく。
と、そのうち二匹が火を逃れて、こちらに向かってくる。
「シャーー!!」
身体に生えるケシの花をゆさゆさ揺らし、大砲のように構えると花弁がこちらに向かって飛んでくる。
サクッ!! サクッ!!
花弁が、まるで苦無のように近くの木に突き刺さる。
「あ、あぶねぇ……」
「ん……あれ、飛ばされたら危険……早く斃す!」
俺の言葉に、シレイドが力強く答える。
「任せて!! 『ヘビーショット』!!」
「はぁ!! 『エルシャイン』!!」
リズの重い弾丸と、セーラの鋭い光の矢が、それぞれポピーマンティスに突き刺さる。
二匹の芥子蟷螂は「キュウ……」と鈍い呻き声をあげてこと切れたのだった。
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