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第10章:ルクシアの町と女を忘れたギルド団長編
第23話:神の武器
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そうして、さらに二週間後。
オルガからようやく俺の剣ができたと連絡が入った。
リズたちはじめ、パーティメンバーも連れて『オルガ工房』に赴く。
「いやー、どんな武器になったんだろうね!」
「ん……ワクワク! ご主人様、さらにパワーアップ……!」
「うむ。オルガのことだ、きっと良い武器に仕上げてくれているはずだ」
「うふふ。新しい装備を取りに行く時って、とっても心が躍りますわよね」
「へへへっ! ご主人様も嬉しそうだな!」
五人と明るく談笑しながら通りを歩き、店に着く。
「お! 来たね! 皆、お揃いみたいだね!」
そこに、いつも通りの明るい声をかけてくれるオルガ。
「連絡ありがとう。約束の品を貰いに来たよ」
「ああ。ちょっと待っててね……おーい、ダグラスさーん!」
ん? ダグラスさん?
そうして、奥から現れたのは以前ルクシアで鍛冶屋を開いていた、伝説のドワーフ鍛冶屋ダグラスさんとその奥さんだった。
「おや? 坊主に嬢ちゃんじゃねえか。なんだ、例の剣の依頼主ってお前たちだったのか」
「は、はい。どうも」
「ダグラスさん、お久しぶりです。その節はありがとうございました」
ダグラスの言葉に、俺とリズがペコリと頭を下げる。
「やだよー、そんなに畏まっちゃって!」
隣の奥さんがハッハッハと豪快に笑う。
「なんで、ダグラスさんがここに?」
「いやー、実はさ。あたしだけじゃどうやっても『風神結晶』を扱いきれなくてさ。ルクシアのスタンピード騒動でダグラスさんもこの町に移住して鍛冶屋を始めたって聞いてたから、ダメ元で助力してもらえないか尋ねてみたの」
「ターッハッハッハ。お嬢ちゃんがいきなり珍しい鉱石を持ち込んできて、この鉱石で折れた剣を作り直したいって言ってきたからよ。面白そうだし、一枚噛んでやろうと思った次第だ」
俺の問いかけに、オルガとダグラスが答える。
「そうだったんだね。で、完成したっていう剣は?」
リズは待ちきれないといった具合に、目を輝かせる。
「ああ。コレだよ」
深い緑色の鞘に納められた、どこか神聖な雰囲気を醸し出す一本の剣。
俺はそれを受け取って鞘から抜いてみる。
シュイン……。
風が鳴るような、静かで綺麗な音が響く。
目が眩むくらい神々しい純白の刀身。
反射する厳かな光が、辺り一帯まで伝搬するような神聖な雰囲気を溢れ出させている。
「こ、これは……!」
「すっごーい……キレー……!」
キアラとリズも思わず声を漏らす。
「名付けて『風神剣ゼファー』……この街に伝わる風神様から取った名だよ!」
「『風神剣ゼファー』……!!」
これが、俺の新しい武器……。
胸の奥の鼓動がガッと熱くなるような感覚を覚える。
持っている俺に、自らの意思を返してくれているようなパワーを感じた。
「にしても『風神結晶』なんて、よく持ってたな。ありゃあ、とうの昔にこの国から無くなっちまったって言われているほどの鉱石だぜ? 伝説の鉱石って言われている『オリハルコン』や『ヒヒイロカネ』『天照鋼』なんかと同じクラスの代物だ」
「そうなんですか……」
風神様の凛々しい笑顔が脳裏に浮かぶ。
そんな貴重な品を、俺にくれたのか。
心の中で、風神様に改めて御礼をした。
「じゃあ、お代は前言った通り要らないからね」
「い、いいのか? 流石に、ダグラスさんまで巻き込んだんだし、普通に払うぞ?」
「なーに、風神結晶を触らせてもらって、ダグラスさんとも仕事できたお陰で、あたしの技術が何段階も上がったんだ、それだけでお釣りがくるよ」
「そうか、それならいいけど。……いい物を作ってくれて、ありがとう。オルガ、ダグラスさん」
俺がお礼を言うと、オルガが微笑んで頷く。
「なーに! いいってことよ! ターッハッハッハ!!」
ダグラスさんも豪快に笑っている。
「じゃあ、この辺で失礼するよ」
「ちょ、ちょっと待ちな!」
店を去ろうとしていたところ、ずいっとオルガが俺に顔を寄せてくる。
「あ、あたしの技術が上がったのは上がったけど……だ、代金はタダにしたし……約束は約束だぞ……? あ、あたしのこと、また可愛がってくれるよな?」
小さく呟く可愛い彼女のおねだりに「もちろん」と微笑んでやると「……待ってるからね♡」と満面の笑みを見せてくれた。
そうして、新しい剣を手に入れた俺たちは店を出た。
「まあ、なんにせよ……これで、レオの剣も直ったし、冒険を再開できるね!!」
「だな! とりあえず、国からなんか招集がかかるまでは、自由に冒険してようぜ!」
リズとロウナが俺に笑いかけてくる。
スタンピード騒動の内幕は、ギルドを通じて冒険者全員に通達されている。
もちろん、ガラテアでの会議で決定したことも。
俺たちを始め、Sクラスの魔物と戦えそうな一流と呼ばれる冒険者たちは全員、召集の対象となっているのだ。
といっても、俺の場合、『女神の加護』のお陰で瘴気に耐性があるだけだ。
果たして役に立てるのだろうかという一抹の不安はある。
だが、これは強制的な決定事項として扱われているため、拒否することはできない案件になっていた。
『王魔種』の問題は今や、世界規模に波及している。
邪神アブランも次はどんな手を打ってくるのか分からない。
王国も政府機関や王国騎士団を総動員して事に当たっているようだが、それでも手が足りなければ当然、ギルドの冒険者に役目が回ってくる。
俺たち冒険者も皆、普通の冒険を行いつつ、気を引き締めているのだった。
「さあ、では早速、久しぶりに実戦をしようではないか。ひとまず、勘を取り戻したいし、エルゼリア平原で戦闘してみてはどうだ?」
「そうですね。なにより、レオ様の剣の具合も見ておきたいですし」
キアラとセーラが提案する。
「いいじゃん! 行こうよ、レオ!」
「ん……シレイドも、鍛錬場ばっかりで飽きた……なまった腕を戻したい」
「だな! 凝り固まった身体を久しぶりに温めようぜ!」
他の三人も乗り気である。
「よし、じゃあ平原に向かおう!」
「「「「「おー!!」」」」」
俺の言葉に、みんなが元気に返事をする。
こうして、平原で久しぶりの冒険となったのだった。
オルガからようやく俺の剣ができたと連絡が入った。
リズたちはじめ、パーティメンバーも連れて『オルガ工房』に赴く。
「いやー、どんな武器になったんだろうね!」
「ん……ワクワク! ご主人様、さらにパワーアップ……!」
「うむ。オルガのことだ、きっと良い武器に仕上げてくれているはずだ」
「うふふ。新しい装備を取りに行く時って、とっても心が躍りますわよね」
「へへへっ! ご主人様も嬉しそうだな!」
五人と明るく談笑しながら通りを歩き、店に着く。
「お! 来たね! 皆、お揃いみたいだね!」
そこに、いつも通りの明るい声をかけてくれるオルガ。
「連絡ありがとう。約束の品を貰いに来たよ」
「ああ。ちょっと待っててね……おーい、ダグラスさーん!」
ん? ダグラスさん?
そうして、奥から現れたのは以前ルクシアで鍛冶屋を開いていた、伝説のドワーフ鍛冶屋ダグラスさんとその奥さんだった。
「おや? 坊主に嬢ちゃんじゃねえか。なんだ、例の剣の依頼主ってお前たちだったのか」
「は、はい。どうも」
「ダグラスさん、お久しぶりです。その節はありがとうございました」
ダグラスの言葉に、俺とリズがペコリと頭を下げる。
「やだよー、そんなに畏まっちゃって!」
隣の奥さんがハッハッハと豪快に笑う。
「なんで、ダグラスさんがここに?」
「いやー、実はさ。あたしだけじゃどうやっても『風神結晶』を扱いきれなくてさ。ルクシアのスタンピード騒動でダグラスさんもこの町に移住して鍛冶屋を始めたって聞いてたから、ダメ元で助力してもらえないか尋ねてみたの」
「ターッハッハッハ。お嬢ちゃんがいきなり珍しい鉱石を持ち込んできて、この鉱石で折れた剣を作り直したいって言ってきたからよ。面白そうだし、一枚噛んでやろうと思った次第だ」
俺の問いかけに、オルガとダグラスが答える。
「そうだったんだね。で、完成したっていう剣は?」
リズは待ちきれないといった具合に、目を輝かせる。
「ああ。コレだよ」
深い緑色の鞘に納められた、どこか神聖な雰囲気を醸し出す一本の剣。
俺はそれを受け取って鞘から抜いてみる。
シュイン……。
風が鳴るような、静かで綺麗な音が響く。
目が眩むくらい神々しい純白の刀身。
反射する厳かな光が、辺り一帯まで伝搬するような神聖な雰囲気を溢れ出させている。
「こ、これは……!」
「すっごーい……キレー……!」
キアラとリズも思わず声を漏らす。
「名付けて『風神剣ゼファー』……この街に伝わる風神様から取った名だよ!」
「『風神剣ゼファー』……!!」
これが、俺の新しい武器……。
胸の奥の鼓動がガッと熱くなるような感覚を覚える。
持っている俺に、自らの意思を返してくれているようなパワーを感じた。
「にしても『風神結晶』なんて、よく持ってたな。ありゃあ、とうの昔にこの国から無くなっちまったって言われているほどの鉱石だぜ? 伝説の鉱石って言われている『オリハルコン』や『ヒヒイロカネ』『天照鋼』なんかと同じクラスの代物だ」
「そうなんですか……」
風神様の凛々しい笑顔が脳裏に浮かぶ。
そんな貴重な品を、俺にくれたのか。
心の中で、風神様に改めて御礼をした。
「じゃあ、お代は前言った通り要らないからね」
「い、いいのか? 流石に、ダグラスさんまで巻き込んだんだし、普通に払うぞ?」
「なーに、風神結晶を触らせてもらって、ダグラスさんとも仕事できたお陰で、あたしの技術が何段階も上がったんだ、それだけでお釣りがくるよ」
「そうか、それならいいけど。……いい物を作ってくれて、ありがとう。オルガ、ダグラスさん」
俺がお礼を言うと、オルガが微笑んで頷く。
「なーに! いいってことよ! ターッハッハッハ!!」
ダグラスさんも豪快に笑っている。
「じゃあ、この辺で失礼するよ」
「ちょ、ちょっと待ちな!」
店を去ろうとしていたところ、ずいっとオルガが俺に顔を寄せてくる。
「あ、あたしの技術が上がったのは上がったけど……だ、代金はタダにしたし……約束は約束だぞ……? あ、あたしのこと、また可愛がってくれるよな?」
小さく呟く可愛い彼女のおねだりに「もちろん」と微笑んでやると「……待ってるからね♡」と満面の笑みを見せてくれた。
そうして、新しい剣を手に入れた俺たちは店を出た。
「まあ、なんにせよ……これで、レオの剣も直ったし、冒険を再開できるね!!」
「だな! とりあえず、国からなんか招集がかかるまでは、自由に冒険してようぜ!」
リズとロウナが俺に笑いかけてくる。
スタンピード騒動の内幕は、ギルドを通じて冒険者全員に通達されている。
もちろん、ガラテアでの会議で決定したことも。
俺たちを始め、Sクラスの魔物と戦えそうな一流と呼ばれる冒険者たちは全員、召集の対象となっているのだ。
といっても、俺の場合、『女神の加護』のお陰で瘴気に耐性があるだけだ。
果たして役に立てるのだろうかという一抹の不安はある。
だが、これは強制的な決定事項として扱われているため、拒否することはできない案件になっていた。
『王魔種』の問題は今や、世界規模に波及している。
邪神アブランも次はどんな手を打ってくるのか分からない。
王国も政府機関や王国騎士団を総動員して事に当たっているようだが、それでも手が足りなければ当然、ギルドの冒険者に役目が回ってくる。
俺たち冒険者も皆、普通の冒険を行いつつ、気を引き締めているのだった。
「さあ、では早速、久しぶりに実戦をしようではないか。ひとまず、勘を取り戻したいし、エルゼリア平原で戦闘してみてはどうだ?」
「そうですね。なにより、レオ様の剣の具合も見ておきたいですし」
キアラとセーラが提案する。
「いいじゃん! 行こうよ、レオ!」
「ん……シレイドも、鍛錬場ばっかりで飽きた……なまった腕を戻したい」
「だな! 凝り固まった身体を久しぶりに温めようぜ!」
他の三人も乗り気である。
「よし、じゃあ平原に向かおう!」
「「「「「おー!!」」」」」
俺の言葉に、みんなが元気に返事をする。
こうして、平原で久しぶりの冒険となったのだった。
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