章くんの憂鬱【BL】

水月 花音

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「その顔は図星みたいだな」

「ちが……っ」

 冷たい顔をして見下ろしてくるお兄ちゃんに、つい、否定の言葉が出てしまった。


 違ってないのに…



「あきの口から嘘が出るなんて、お兄ちゃんは悲しいよ。そんないけない口は塞いでおこうか…」


 お兄ちゃんは左へ体を屈めて、ベッドの下から箱を引っ張り出し、自分の右隣へ置いた。
 その箱から一つ、何かを取り出し掌に乗せる。
 それは、小さな丸い穴がいっぱい空いているボールで、端には細く黒いベルトがついていた。

「さあ、大人しくしてるんだよ」

「ん!んんっ…!」

 お兄ちゃんはそれを僕の顔まで持ってくると、口にボールを嵌め込んで、ベルトで頭に固定した。

(な、何……!?)

「ああ、可愛いよ。あき。これから、たくさんお仕置きしてあげるからね」

 お仕置きってどういうこと?!

 なんで?!僕、何もしてないのに!!

「んん…!!」

 どこかおかしいお兄ちゃんに呆然としていると、お兄ちゃんが僕のズボンを脱がし始めた。

「白くて綺麗な脚だな。この脚を開いてアイツを誘ったのか?」

 どこかうっとりした表情で僕の足を見ていたお兄ちゃんは、急に表情を変えると僕の膝裏を持って足を広げてきた。

 誘ったってどういうこと?

 女の子じゃないんだから、そんなことしないのに…

「あきは素直じゃないからな。身体にゆっくり聞いてみようか」

 そういうと、お兄ちゃんは僕の左足を抱えてベルトで固定した。
 脚用のベルトみたいで、膝を折った状態で固定されて、腕と鎖で繋がれる。

 もしかして…腕も専用のベルトで固定されてるのだろうか。
 手に繋がる鎖で、両脚が上がる。
 鎖が太いからか、思ったより負担はないけど、足を広げた状態はすごく心もとなかった。

「あき、可愛くて堪らないよ。その怯えた目が、嗜虐心をそそられる」

 クスクスと楽しそうに笑うお兄ちゃんに、すごく戸惑う。
 甘く見えるたれ目が柔らかく細められてるのに、いつものような安心感はなかった。

「何されるか、解ってる?」

 何……って?

 下着姿で拘束されて、される事って…
 頭の端で考えて、直ぐさま否定する。

 何かの冗談だと思いたい自分がいた。

 この状態だけでも充分悪夢なのに、まだ何かされるのだと思うと泣いてしまいそうになる。

「駄目だな…。あきの泣き顔を見ると、もっと虐めたくなる…」

 ゆっくりとお兄ちゃんが近づいてきて、肩がビクッと揺れてしまった。
 そんな僕を見て楽しそうに微笑みながら、お兄ちゃんは僕に触れてくる。

 この、意地悪な顔で微笑んでる人は誰だろう。

 僕の中の優しいお兄ちゃんの像がガラガラと崩れていく。

 僕が泣いた時、優しく慰めてくれたお兄ちゃんはいないのだと思うと、堪えきれなくなった思いがぽたりと雫になった。
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