章くんの憂鬱【BL】

水月 花音

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 水を持ったままお兄ちゃんの顔を眺めていると、ぱちっとお兄ちゃんの目が開いた。

 パシャン、と音がして床が濡れる。

 びっくりしすぎて、しばらく声が出なかった。

「う…あー、びっくりするじゃんかぁ」

「………」

「ごめん、もう一回持って」

 くる、と繋げようとした言葉はお兄ちゃんの突然の行動に遮られた。


 お酒くさい~!


 じゃなくて!な…、何で僕お兄ちゃんにキスされてんの!?

「ん、んぅっ…、あ…はぁ」

 しかも、めちゃめちゃ濃厚。
 お兄ちゃんモテるもんなぁ、何て呑気に考えてる場合じゃない!

「やっ…!おに…ちゃ…んむ……」

 お兄ちゃんの舌が蛇みたいに絡みつく。
 上に乗られてるのに気づいたのは、息も絶え絶えになるくらい蹂躙されてからだった。

 それでもお兄ちゃんはキスを辞めなくて、僕の唇と舌を思う存分貪ってくる。

 熱い、熱い舌に…、脳までとろけそうだ。

 舌をお兄ちゃんに吸われて、頭の芯から疼くみたいな快感に襲われる。


「……ぁ、……」


 頭が真っ白で何も考えられない。

 お兄ちゃんがベッドの下から何かを取り出して、僕の手首に付けた。
 手首に片方ずつ付けられたけど、腕を上に上げさせられているせいか見えない。

「おに…ちゃ…?」


 なんか…


 息が荒い?




「あき…、お前が可愛いからイケナイんだよ…」



 何、そのどこぞの変態さんみたいなセリフ…


「お兄ちゃん…?やだっ!それ、どうするの…!?」

 ベッドサイドにあるライトに照らされ、お兄ちゃんの手にあるソレがキラリと光る。
 ジャキッと嫌な音がして、ロンTの端が切れた。

 ジャキジャキという音が薄暗い部屋に響く。

 あまりの事に呆然として声が出ない僕を尻目に、お兄ちゃんがニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた。


「ああ、可愛い乳首が出てきたよ」

「……!!」

 そう言ってお兄ちゃんは、形の良い指で僕の乳首を触ってきた。
 肌色に同化してしまいそうに薄い色の、小さな突起を人差し指でくにくにと押し潰したり、キュッと摘まんだりしている。
 お兄ちゃんの触り方はイヤらしくて、じんわりと先端が熱くなってきた。

「あきの可愛い乳首を、アイツは触ったんだろう?」

 急に低くなった声にびくりと反応すると、お兄ちゃんは緩く乳輪を撫ぜてきた。

 その目には、強い怒りが宿っている。

「だ…れ?」

「あきといつも一緒に居る、小生意気なガキだよ」

 一緒……

「高斗のこと…?」

「名前で呼んでるのか」

「え…、うん」

 名前で、呼ぶでしょ?友達なら普通。

 というか、高斗に乳首触られたって何で知ってるの!?
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