章くんの憂鬱【BL】

水月 花音

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「ちょっと!お兄ちゃん!」


「ん?どうした…?」

 玄関を開けた瞬間、すごいお酒の匂いがした。
 扉の向こうに立っていたのは、我が家のイケメン、平原ひらはら 知彦ともひこ

 長身のモデル体型。

 センスの良いモノトーンの服が、イケメン度をアップさせている。手も足もビックリするほど長い。

「すごい…お酒くさい」

「ああ…結構飲んだからな。あき、ごめん…水くれないか」

 あ、僕の名前はあきら。お兄ちゃんはあきって呼んでる。
 水をくれと言いながら靴を脱いでるけど、ものすごい平行感覚が狂っているらしい。

「いいけど…歩ける?」

 フラフラしてるお兄ちゃんなんか初めて見た。
 いつも隙なんか無くてビシッとしてて、完璧なのに。

「あー…、無理かも。肩貸して…」

「ほんとに大丈夫?」

 僕に何かを頼むのも、すごく珍しい。
 いつも自分で全部やっちゃうから、人に頼むことなんかない人なのだ。

「さあ…?どう思う?」

 耳の側で低い声が聞こえて、ゾワリとした。肩を貸してるから、近くで聞こえるのは当たり前なんだけど…
 いつもストイックなお兄ちゃんは…酔っぱらって隙が多くなっているらしい。

「もう!しっかりしてよね!」

 文句を言いながらもお兄ちゃんを部屋に連れていく。
 僕とお兄ちゃんは身長差が激しいから、ほとんどお兄ちゃんは自分で歩いてる。

 僕、肩貸す必要あったのかな…?

 身長差も激しいけど、僕たちは全くと言っていいほど似ていない。
 連れ子だから、当たり前といえば当たり前。
 僕が小学二年生の時に、僕のお母さんとお兄ちゃんのお父さんが結婚した。
 年の離れたお兄ちゃんができることがすごく嬉しくて。お兄ちゃんもすごく優しくしてくれた。


「あき…、水。」

 ベッドにいち早く寝転んだお兄ちゃんは、胸元をはだけながら手で顔を扇いでる。
 コートなんか着たままだ。
 黒いコートに、濃いグレーのシャツ。服が暗めだからか、お兄ちゃんの肌が浮き上がってドキッとした。

「わ、わかった…」

 なんだかドキドキする胸を押さえてお兄ちゃんの部屋のドアを閉める。
 水を持って戻ってきたときには、お兄ちゃんは寝息を立てていた。


「お兄ちゃん…?お水、持ってきたんだけど…」

 お兄ちゃんって、寝てる時まで綺麗。
 鼻筋もすっと通ってるし、睫毛も長い。

 何でこんなに違うのかなぁ…

 僕がもっとカッコよかったら、血が繋がってないなんて言われないのかな…
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