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第一章【出会い】
第九話 アイシャ
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「アイシャは男だぞ?」
え?なんて?
「アイシャは、男」
待って、え?あの可愛さで男?
それより、神父さまと良い雰囲気……エエエエ!?
「何だ、知らなかったのか?」
「知らなかったデス」
スン。
考えるのよそう。
いや、ちょっと待てよ?男二人で、女性に護衛してもらうの?情けなさすぎない?
「私は護衛を仕事でしたことあるからな、安心しろ」
ビオルナさんは村一番の強者だもんね。見た目は厳つくないのに……
怖い人に絡まれて、自分で解決できるかって言われたら、できないと思うし。
「よろしくお願いします」
「マリヤって、最初そんな口調だったか?」
最初?あれ?最初俺、敬語使ってなかった?
「すみません、自分でも結構緊張していたみたいで……」
「最初みたいな感じで構わないぞ」
ビオルナさんが、カラッとした笑みを浮かべる。見た目は妖艶な美女なのに、さっぱりとしていて好ましい。
「ありがとう、じゃあこの口調で」
旅も決まっているし、仲良くなるに越したことはないよね。
「二人が並んでると、やたら寄って来そうだからな。祭りでは、はぐれないようにな」
「ビオルナさんはこの国に来たことある?」
「ないない、黒の森を通ると近いが、そんな馬鹿は居ないし、最短ルートで3ヶ月かかるからな」
「黒の森を通ったら?」
「魔獣が多過ぎて、誰も通ったことないだろうな。今回はアイツを連れてたから、皆逃げていたが」
「じゃあ、ここのお祭り初めてだね」
「そうだな。こんなに大きい街に来たのも初めてだ」
二人で笑い合って、この世界に来てやっとほっとした気がする。
ビオルナさんには感謝してもしきれない。
…………!
そうだ!ビオルナさんの腕って治らないのかな?
魔法があるんだから、もしかしたら………
一度、神父さまに確認してみよう。
自分の腕が無くなってる状況で、俺を助けてくれたビオルナさん。彼女に何かできないか、この世界に居る間にしておきたいことができて、もしかしたら元の世界に帰れないかもしれないという恐怖が紛れた。
コンコン
「「マリヤさん」」
アイシャさんと、神父さまが揃ってビオルナさんの部屋に来た。話終わったみたいで、アイシャさんの目は赤くなっていたものの、幸せそうだ。
アイシャさんが男だと言われて見てみても、女性にしかみえない。声、顔、雰囲気どれをとっても女の人だ。
ただ、髪型や服装などは、男がしていても不思議ではないように思う。
「ありがとう、マリヤさん」
アイシャさんに抱きつかれて焦る。
あ、男だわ。
複雑な気持ちになりながら、アイシャさんの背中をポンポンする。
「アイシャさん、上手くいったようでよかったです」
とりあえず、可愛いといっても男と抱き合う趣味はないので、優しくアイシャさんを離した。
「私からもありがとう」
見ると、神父さまが微笑んでいる。
おお、感情戻って来たんですか、神父さま!
忙しすぎて、感情死んでたのかな……
「どうしたんだ?」
ビオルナさんが、微妙な顔をしてこちらを見ている。
「マリヤさんに仲を取り持ってもらったんです」
神父さまの言葉に、やっぱりそうなんだ、と微妙な気持ちになる。いや、気持ち悪いとかではないけど、初めて見たからとても不思議な気持ちなのだ。
「そうか、まだ一緒ではなかったのか」
いやー、ビオルナさんもそう思いますよね。もう既に付き合うの通り越して夫婦だと思ってたもんね。
「ビオルナさんにもお礼を。マリヤさんを連れて来てくださってありがとうございました」
「いやいや、私こそ、傷を治してもらって、本当に感謝しています」
日本だったら感謝合戦になるところだが、二人は深く頭を下げて目を合わすと、頷いて終わった。
やだ、なにカッコイイ。
「ビオルナさんも一緒に夕御飯にしましょう」
アイシャさんの一声で、全員で食卓に向かう。アイシャさん料理もうまいんだよな。
野菜作れて、事務できて、家事全般もできるアイシャさんって、もしかしなくても俺よりハイスペックだよね。え?こんな人が役立たずって言われるって、異世界怖い。
え?なんて?
「アイシャは、男」
待って、え?あの可愛さで男?
それより、神父さまと良い雰囲気……エエエエ!?
「何だ、知らなかったのか?」
「知らなかったデス」
スン。
考えるのよそう。
いや、ちょっと待てよ?男二人で、女性に護衛してもらうの?情けなさすぎない?
「私は護衛を仕事でしたことあるからな、安心しろ」
ビオルナさんは村一番の強者だもんね。見た目は厳つくないのに……
怖い人に絡まれて、自分で解決できるかって言われたら、できないと思うし。
「よろしくお願いします」
「マリヤって、最初そんな口調だったか?」
最初?あれ?最初俺、敬語使ってなかった?
「すみません、自分でも結構緊張していたみたいで……」
「最初みたいな感じで構わないぞ」
ビオルナさんが、カラッとした笑みを浮かべる。見た目は妖艶な美女なのに、さっぱりとしていて好ましい。
「ありがとう、じゃあこの口調で」
旅も決まっているし、仲良くなるに越したことはないよね。
「二人が並んでると、やたら寄って来そうだからな。祭りでは、はぐれないようにな」
「ビオルナさんはこの国に来たことある?」
「ないない、黒の森を通ると近いが、そんな馬鹿は居ないし、最短ルートで3ヶ月かかるからな」
「黒の森を通ったら?」
「魔獣が多過ぎて、誰も通ったことないだろうな。今回はアイツを連れてたから、皆逃げていたが」
「じゃあ、ここのお祭り初めてだね」
「そうだな。こんなに大きい街に来たのも初めてだ」
二人で笑い合って、この世界に来てやっとほっとした気がする。
ビオルナさんには感謝してもしきれない。
…………!
そうだ!ビオルナさんの腕って治らないのかな?
魔法があるんだから、もしかしたら………
一度、神父さまに確認してみよう。
自分の腕が無くなってる状況で、俺を助けてくれたビオルナさん。彼女に何かできないか、この世界に居る間にしておきたいことができて、もしかしたら元の世界に帰れないかもしれないという恐怖が紛れた。
コンコン
「「マリヤさん」」
アイシャさんと、神父さまが揃ってビオルナさんの部屋に来た。話終わったみたいで、アイシャさんの目は赤くなっていたものの、幸せそうだ。
アイシャさんが男だと言われて見てみても、女性にしかみえない。声、顔、雰囲気どれをとっても女の人だ。
ただ、髪型や服装などは、男がしていても不思議ではないように思う。
「ありがとう、マリヤさん」
アイシャさんに抱きつかれて焦る。
あ、男だわ。
複雑な気持ちになりながら、アイシャさんの背中をポンポンする。
「アイシャさん、上手くいったようでよかったです」
とりあえず、可愛いといっても男と抱き合う趣味はないので、優しくアイシャさんを離した。
「私からもありがとう」
見ると、神父さまが微笑んでいる。
おお、感情戻って来たんですか、神父さま!
忙しすぎて、感情死んでたのかな……
「どうしたんだ?」
ビオルナさんが、微妙な顔をしてこちらを見ている。
「マリヤさんに仲を取り持ってもらったんです」
神父さまの言葉に、やっぱりそうなんだ、と微妙な気持ちになる。いや、気持ち悪いとかではないけど、初めて見たからとても不思議な気持ちなのだ。
「そうか、まだ一緒ではなかったのか」
いやー、ビオルナさんもそう思いますよね。もう既に付き合うの通り越して夫婦だと思ってたもんね。
「ビオルナさんにもお礼を。マリヤさんを連れて来てくださってありがとうございました」
「いやいや、私こそ、傷を治してもらって、本当に感謝しています」
日本だったら感謝合戦になるところだが、二人は深く頭を下げて目を合わすと、頷いて終わった。
やだ、なにカッコイイ。
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