青い薔薇と金色の牡丹【BL】

水月 花音

文字の大きさ
10 / 147
第一章【出会い】

第九話 アイシャ

しおりを挟む
「アイシャは男だぞ?」

 え?なんて?

「アイシャは、男」

 待って、え?あの可愛さで男?
 それより、神父さまと良い雰囲気……エエエエ!?

「何だ、知らなかったのか?」

「知らなかったデス」

 スン。

 考えるのよそう。

 いや、ちょっと待てよ?男二人で、女性に護衛してもらうの?情けなさすぎない?

「私は護衛を仕事でしたことあるからな、安心しろ」

 ビオルナさんは村一番の強者だもんね。見た目はいかつくないのに……

 怖い人に絡まれて、自分で解決できるかって言われたら、できないと思うし。

「よろしくお願いします」

「マリヤって、最初そんな口調だったか?」

 最初?あれ?最初俺、敬語使ってなかった?

「すみません、自分でも結構緊張していたみたいで……」

「最初みたいな感じで構わないぞ」

 ビオルナさんが、カラッとした笑みを浮かべる。見た目は妖艶ようえんな美女なのに、さっぱりとしていて好ましい。

「ありがとう、じゃあこの口調で」

 旅も決まっているし、仲良くなるに越したことはないよね。

「二人が並んでると、やたら寄って来そうだからな。祭りでは、はぐれないようにな」

「ビオルナさんはこの国に来たことある?」

「ないない、黒の森を通ると近いが、そんな馬鹿は居ないし、最短ルートで3ヶ月かかるからな」

「黒の森を通ったら?」

「魔獣が多過ぎて、誰も通ったことないだろうな。今回はアイツを連れてたから、皆逃げていたが」

「じゃあ、ここのお祭り初めてだね」

「そうだな。こんなに大きい街に来たのも初めてだ」

 二人で笑い合って、この世界に来てやっとほっとした気がする。
 ビオルナさんには感謝してもしきれない。

 …………!

 そうだ!ビオルナさんの腕って治らないのかな?
 魔法があるんだから、もしかしたら………
 一度、神父さまに確認してみよう。

 自分の腕が無くなってる状況で、俺を助けてくれたビオルナさん。彼女に何かできないか、この世界に居る間にしておきたいことができて、もしかしたら元の世界に帰れないかもしれないという恐怖がまぎれた。




 コンコン

「「マリヤさん」」

 アイシャさんと、神父さまが揃ってビオルナさんの部屋に来た。話終わったみたいで、アイシャさんの目は赤くなっていたものの、幸せそうだ。

 アイシャさんが男だと言われて見てみても、女性にしかみえない。声、顔、雰囲気どれをとっても女の人だ。
 ただ、髪型や服装などは、男がしていても不思議ではないように思う。

「ありがとう、マリヤさん」

 アイシャさんに抱きつかれて焦る。 
 あ、男だわ。

 複雑な気持ちになりながら、アイシャさんの背中をポンポンする。

「アイシャさん、上手くいったようでよかったです」

 とりあえず、可愛いといっても男と抱き合う趣味はないので、優しくアイシャさんを離した。

「私からもありがとう」

 見ると、神父さまが微笑んでいる。
 おお、感情戻って来たんですか、神父さま!
 忙しすぎて、感情死んでたのかな……

「どうしたんだ?」

 ビオルナさんが、微妙な顔をしてこちらを見ている。

「マリヤさんに仲を取り持ってもらったんです」

 神父さまの言葉に、やっぱりそうなんだ、と微妙な気持ちになる。いや、気持ち悪いとかではないけど、初めて見たからとても不思議な気持ちなのだ。

「そうか、まだ一緒ではなかったのか」

 いやー、ビオルナさんもそう思いますよね。もう既に付き合うの通り越して夫婦だと思ってたもんね。

「ビオルナさんにもお礼を。マリヤさんを連れて来てくださってありがとうございました」

「いやいや、私こそ、傷を治してもらって、本当に感謝しています」

 日本だったら感謝合戦になるところだが、二人は深く頭を下げて目を合わすと、頷いて終わった。

 やだ、なにカッコイイ。

「ビオルナさんも一緒に夕御飯にしましょう」

 アイシャさんの一声で、全員で食卓に向かう。アイシャさん料理もうまいんだよな。

 野菜作れて、事務できて、家事全般もできるアイシャさんって、もしかしなくても俺よりハイスペックだよね。え?こんな人が役立たずって言われるって、異世界怖い。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

【完結】お義父さんが、だいすきです

  *  ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。 種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。 ぜったいハッピーエンド保証な本編、おまけのお話、完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! トェルとリィフェルの動画つくりました!  インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのWebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました

芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」 魔王討伐の祝宴の夜。 英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。 酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。 その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。 一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。 これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

処理中です...