青い薔薇と金色の牡丹【BL】

水月 花音

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第五章【機械都市】

第七十九話 機械都市

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 3つある天幕のうち一つに、いつか夢で見た魔王が立っていた。魔王は、手を宙に浮かせて何かを握る仕草をしている。

 魔王と目が合う。

 夢の時のように思考が流れ込んできた。俺の運命が魔王とともにある。なぜかそんな気がするのだ。
 それに、恋人のように魔王に惹かれる。違う!俺には、エリオネルが居る!

「マリヤ……」

 泣きたくなるような声に、焦がれる。
 魔王はゆっくりこちらに近づいてきた。懐かしいような錯覚に頭が混乱する。

「来るな!」

 俺の発した言葉に、魔王がビクリと立ち止まった。

「マリヤ、触れたい」

 泣き出しそうな声に涙が滲む。何でそんな声で、そんな顔で俺を見るの。
 ふ、と足首を掴まれてることに気づいた。

「エリオネル!大丈夫?」

「マリヤ……」

 昏睡がどのくらいすごい魔法か知らないが、誰も起き上がってないことから、まだ起き上がらない方が良さそうだ。
 エリオネルの顔を撫でてあげると、彼は小さく微笑んだ。

 さっきまで囚われていた思考がどこかに行く。

 何だったんだ……。あの魔王、危険すぎる。

 その内、呻き声がし始めて、皆が起き出した。エリオネルの上体を起こして、膝の上に寝転ろばせる。
 周りを見ると、魔族も魔王も居なくなっていた。

 魔王ということは本当なのかわからないので伏せて、あったことをそのまま報告する。エリオネルも魔王を見たみたいだったので、すぐに信じてくれた。


 魔族が出たのは異常事態だったらしく、シリアネイズの首都、エクリエールに急ぐことになった。
 魔族というのは、悪魔とは違う生物らしい。端的に言うと、悪魔は実体を持たず魔族は実体があるということみたいだ。
 魔王のことも、黒髪で赤目、魔族より力が強いということで、上級魔族ではないかということになった。なぜ、俺の名前を知っていたのかは謎だが。
 下級悪魔と魔族の言動から、俺が狙われている可能性が高く、このメンツで安全に旅をするのは難しいらしい。どうするのか聞いたら、エクリエールで司祭を同行するということに落ち着いた。

 急ぐということで、イチャイチャはお預けかな、と思ってエリオネルに、しないの?と聞いたら襲われたので、2日に1回は変わらないらしい。



ーーーーーー



 3週間ほどでエクリエールに着いた。エクリエールは機械都市と呼ばれているらしく、すごく楽しみにしていた。魔道具産業が盛んで、そう呼ばれるようになったらしい。
 外壁から、高い煙突がたくさん見える。その煙突からは、もくもくと煙が出ていた。体に悪そうだ。
 検門が終わって中に入ると、思ったより空気は悪くなくて、何故なのかエリオネルに聞くと防護魔法がかけられているとのことだった。街並みはパイプが沢山付いていて、少し工業地帯のようで、さすが異世界という感じがする。こういう街並みでわくわくしてしまうのは、男の子だから仕方ない。

 エクリエールでは、エリオネルの友人のクロウィッチ・バーデンという人のお宅へお邪魔することになった。

「クロウィッチ、久しぶり」

 エリオネルが抱きつきながら、クロウィッチと呼ばれる青年の肩を叩く。む、すごく仲良さそう。
 内心、ちょっと嫉妬しながら、バーデンさんと握手する。握手した手が、ぎしっと傷んだ。

(いった、バカ力かよ……)

 金髪にオレンジ色の瞳。エリオネルと並んでも遜色ないイケメンだ。だが、その瞳に何とも言えない感情が浮かんでいるのが見てとれた。
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