スキル「共感覚」のおかげで最強の魔法使いになったので魔人を集めて魔王になることにしました 〜最恐魔王の手さぐり建国ライフ!〜

熊乃げん骨

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序章 〇〇世界における魔王国の建国

第5話 魔女たちの集会

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 時同じく南に25km。 

 そこには総勢8名の魔女がいた。 
  
「裏切者がよくのこのこと顔を出せたもんだね。テレサ・スカーレット」 

 黒い魔女装束に身を包んだ女性が声を発する。
 露出度が高く派手な色の服装であるテレサと異なり、相対する7名の魔女たちは皆暗い色で露出も控えめの衣装に身を包んでいる。 
  
「久しいのアイリーン。それにしても腰の重い教会がよく7人も出したものじゃ」 
「無駄話はいいわ。私は教会からの勅命を受けてきたの。それは魔王国の調査とあんたの身柄の拘束よ。協力してもらえるわよね?」 

 アイリーンは口元をゆがめながら得意気に話す。
 気に入らない存在だったテレサに対し教会の力を使い上からものを言えるのが嬉しいのだろう。
 彼女の言葉は徐々に熱を帯びていく。 
  
「教会は今回の件を非常に重く見ている。私の気が変わらないうちに謝罪することをおすすめするわ!」 
「かっ! 何が謝罪じゃ身の丈に合わぬ権利を貰って浮かれるガキが。生憎小娘に下げる安い頭は持ち合わせておらんのじゃ」 
 
 やれやれといった仕草で頭を振るテレサ。 
 その様子がよほど気に食わなかったのだろうか、指先まで真っ赤にしたアイリーンは30cm程の小さな杖を取り出しテレサに向ける。 
  
「自惚れるなよ旧世代の遺産が!教会にたてついた事を後悔させてやる!」 

 アイリーンの言葉とともに周りの魔女たちも杖や箒などを構え、魔法を発動する。 
 行使するのは魔力でできた矢を飛ばす魔法「魔法の矢マジックアロー」、魔女が好んで使う攻撃魔法だ。 

「かっ! こんな魔法でわしをどうにかしようなどと片腹痛いわ!」 

 テレサも杖を振り魔法を発動すると、彼女の周囲に青い半透明の幕が浮かび上がる。 

青の祝幕ブルーベールか……甘いな!」 

 魔法にはランクがあり、最初級、初級、中級、上級、超上級、天級、準伝説級、伝説級、準神級、神級と合わせて十つにわかれている。
 そしてランクが高いほど、習得難度が増し魔力を消費するが効果も大きくなる。
 
魔法の矢マジックアロー」は最初級魔法であり、余程の力量差がないと中級魔法の「青い祝幕ブルーベール」を破ることはできない。 

  
 しかし 


「なっ……!!」 

 30本近く放たれた「魔法の矢マジックアロー」は、何本か貫通できなかったもののそのほとんどが「青い祝帳ブルーベール」を引き裂き、テレサに命中し砂塵を巻き上げた。 

「やっぱりお前は頭が古いよテレサ・スカーレット」 

 満足そうな声でアイリーンは喋る。 

「ランクのみで判別するなんて時代遅れさ。今や初級の魔法も知恵や工夫でいくらでも強くなる時代なんだよ!」 

 彼女らの所属する派閥は「魔工派」とよばれる。
 魔法と科学を組み合わせる魔女界の中でも異端の存在だ。 
 しかし近年の科学の発達により急激に力をつけ、今回のような重要案件にも駆り出されるようになった。 

 先ほどの「魔法の矢」も通常であればただ先端が尖ってるだけの構造だが、矢をドリル状に変化させ、さらに先端を高速回転させることにより魔力の消費量は据え置きで貫通力を大きく向上することに成功している。 
 「科学魔法」と呼ばれるこの魔法だが習得は容易ではなく繊細な魔法技術と科学分野の深い知識を併せ持たないと使用することはできない。 

「小さいころからよく親に言われたもんだよ『緋色の魔女には逆らうな』ってな」 

 曰く『彼女は不死の魔女』だと、曰く『破壊を司る魔女』だと、曰く『我々の最後の希望にして絶望』だと。 
 彼女たちの親や、更にその上の世代は彼女を畏れていた。 
 
 しかし彼女たち若手の魔女は違った。
 
 彼女たちが生まれた後にテレサは転生したため、現在の体の年齢は彼女たちより若く、魔力もそれほど高く感じられなかった。 
 彼女たちは自分より小さなものが好き勝手に振舞ってるのが気に食わなかったのだ。 
  
「あんたが強かったのは過去の話だ。里でいつもゴロゴロしてるだけのあんたにヘコヘコしてる大人たちが気に食わなかった! だから努力した! 邪道と後ろ指をさされようと我慢し科学を勉強した! 全てはあんたの鼻を明かすためっだんだよ!」 

 たまっていたものを全てぶちまけたアイリーンは晴れやかな表情で命令する。 

「まだ生きているはずよ。回収しなさい」 
 
 その言葉に反応しテレサの元に2名の魔女がかけよる――――が。 

「がっ……!!」 
「ぐっ……!?」 
  
 突如砂煙をさいて現れた赤い石のようなものが2名の魔女の頭を正確に打ち抜き、意識を刈り取った。
 テレサの得意魔法「紅玉の弾丸ルビーバレット」だ。 

「くくっ、よもやそこまで嫌われておったとはのう」 

 砂煙が払われ、テレサが現れる。その身には傷どころか汚れすら見当たらない。 

「馬鹿なっ! 確かに矢は当たったはず! 魔法を使った反応もなかったのになぜ!!」 
「不思議ならもう一回やってみればよかろう?」 
 
 先ほどとは逆に今度はテレサが邪悪な笑みを浮かべる。 

「なめるなああぁっっ!!!!」 

 アイリーンは鬼の形相で魔法を構築する。 

 完成した魔法は先ほどの物よりも大きく歪であり、およそ矢とは呼べない邪悪な物になっていた。 
  
「かかっ。まるでおぬしのような魔法じゃな」 
「ほざけぇ!」 

 打ち出された邪悪な矢は恐ろしい速度でテレサに向かっていく。
 ゴテゴテしてるようにみえてその形状は速度を落とさないよう緻密に設計されている。 

「そう、おぬしのように邪悪で―――――――稚拙じゃ」 
 
 矢はテレサの頭部に命中した。 


 しかし。 

  

「なっ……」 

 その光景を目撃した魔女たちの目が見開かれた。

 それもそのはず、矢は彼女に当たると同時に先端から糸のようにほどけていったのだから。 


「いったい何をしたんだ!!」 
「簡単な話じゃ。ほどいただけよ」 
  
『魔法とは編み物である』 
 そんな言葉が魔女たちのあいだでは昔から残っている。 
 魔法を作るときに魔力を糸のように出し、それを編み込むことで形にするやり方が編み物に似てるためだ。 
 今なお教会では魔法をうまく扱えないもののために編み物教室が存在しており、編み物のコツを覚えると魔法もうまくなると評判だ。 

 この発想のもとに作られたのが「ほぐし」である。 
 他者の魔法に己の魔力で干渉し魔力の糸をほぐしてしまう技法だ。 

「おぬしらの魔法は見ためばかり立派で中身がスカスカじゃ。編み物からでなおすんじゃな」  
「ば、ばけもの……」 

 理論はアイリーン達にもわかる。 
 しかしそんな事出来るはずがないのだ。 


 通常「ほぐし」は結界を破ったりする時など時間をかけられるケースでしか用いられない。 

 なぜなら魔法の編み込み方は1人1人違うため、まずは編み方を「解析」し、そのうえで魔法のつなぎ目となっている部分を見つけ、正確にほぐさなければならない。 
 例えるなら落下してくる洋服を空中で糸の状態にほどくようなものだ。

 それを彼女は魔法が皮膚に触れてから傷をつけるまでの0.1秒にも満たない刹那の時間でやってみせたのだ。 

「おぬしらが見てたのはわしの600年のほんの上澄みじゃ。20年にも満たぬ人生でわしを測ろうなどと愚かな」 

 テレサは杖を振り上げると魔力を込める。 

「先輩からの餞別じゃ。魔導の神髄の一端を見せてやろう」 
「あ、あうぅ……」 

 もはやこの場にまともな言葉を発せる者はいなかった。 

 理解したのだ。 

 自分の、自分たちの愚かさを。 

 知識や経験という言葉が陳腐に感じるほどの差を。 

 彼女は何もしなかったのではなく、何もしないでいてくれたという事実を。 

 

「照らせ、『真紅の波動スカーレット・ノヴァ』」 

 行使するは地球上に数えるほどしかいない伝説級魔法。

 彼女たちの視界は紅に染まり、意識は霧散したのだった。 

  

  

  

 ◇ 

  

  

  

「いつまで見ておる」 

 焼け焦げた大地にテレサの声が響く。 
 すると突如空間がゆがみ、30代くらいの魔女がその空間より姿を現す。 

「バレてましたか」 
「当り前じゃ、手の込んだことをしよって」 
「あはは、ごめんなさい」 
  
 新しく表れた魔女、名はハンネという。
 彼女は舌を出し悪戯がバレた子供のような顔でテレサに謝罪する。 

「おおかたおぬしが本命でこいつらは教育のために寄越されたんじゃろ。わしをだしに使うとは教会も大胆なことをしよる」 
「わ、私は反対したんですよ!」 
 
 大げさな身振りで身の潔白を主張するハンネ。そんな様子を見たテレサは表情を緩め、杖を離し戦闘態勢を解く。 
 
「彼女たちのことは私から謝罪させていただきます。荒療治にはなりましたが、これでテレサ様の力を疑うものはいなくなるでしょう」 
「かっ! 泣き虫ハンネが一丁前に」 
 
 子供の頃の不名誉なあだ名で呼ばれ、胸を押さえるハンネだがすぐに表情を元に戻す。 

「それでテレサ様……本当に戻って下さらないのですか?」 
「ああ、これはもう決めたことじゃ。いくら可愛いおぬしの頼みでも聞くことはできん」 

 突然可愛いなどと言われて照れるハイネだが彼女もそう簡単に引くわけにもいかない。 

「理由をお聞きしても?」 
「黄金を見つけた」 

「!!」 

 ハイネの瞳が驚愕の色に染まる。 
 それもそのはず、それはテレサが何百年も前から探していると言っていた物だからだ。
  
「なるほど……得心がいきました。寂しいですが、ここでお別れの様ですね。教会は私が説得いたします」 

「世話をかけるな」 

「いえ、いいんです。あなたが私たちを嫌いになったわけじゃないことが分かっただけで私は嬉しいんです」 

 そうはにかむハイネの目元にはうっすら涙がにじんでいた。 
  
「テレサ様の悲願の成就、心よりお祈りいたします」 
「ああ、おぬしも息災でな」 

 彼女は一礼し、7名の魔女とともに空間のゆがみへと消えていった。 

「くくっ、見ておれ。必ずや我が手に入れてみせるぞ」

 彼女の言葉は虚空へと吸い込まれたのだった……
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