スキル「共感覚」のおかげで最強の魔法使いになったので魔人を集めて魔王になることにしました 〜最恐魔王の手さぐり建国ライフ!〜

熊乃げん骨

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第二章 ○○世界における魔王国の建国

第8話 真夜中の訪問者

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「おーいしー!!」
「ん。肉、美味」
「おいおい落ち着いて食いなさい」

 貪るように食事をする姉妹の口を拭ってやりながら俺も食事を楽しむ。
 うん、今日もうまいな。

「ジーク様どうっスか? あーしの料理は?」
「ああ、今日も美味しいよイブキ」
「へへ~♪」

 俺の後ろで給仕をしてくれている金髪ツインテのメイドさんはイブキ。
 こんな格好をしているが彼女も凄腕の魔人であり幹部の一人だ。

 ちなみに今日のメニューは魔獣肉のシチューに魔王国で栽培されている野菜のサラダ、イブキお手製のパンだ。食材が限られた中でよくやってくれている。

「ほれ、双子ちゃん野菜も食うっす。食わないとジーク様好みの女子《おなご》になれねっすよ」
「う~いやだけどがんばる~」
「ん」

「お前小さい子になんてこと教えてるんだ……」


 食事が終わるとイブキはデザートを姉妹に振舞った。あの時出したパフェもイブキが作ったものを転送してもらったものだ。

「にしてもお前が本当にメイドをこなせているなんて驚きだよ」
「そうなんすよ、あーしは女子力が高いんす!」

 えっへんと胸を張るイブキ。意外とおおきい。

「まあお前はいい加減に見えて意外としっかりしてるからな。頼りにしてるよ」
「ひゃ~、恥ずかしいっす! これはもう結婚するしかないっすね! 玉の輿っす!!」
「お前それ絶対マーレの前で言うなよ!?」

 俺が釘をさすとイブキはイタズラっぽく舌を出し了承する。

「それにしてもこの国もだいぶ大きくなったっすね~」
「ああ」

 実はイブキは月の鏡を使った次の日から来ていたらしい。
 魔力を上手く抑えていたので実力者だと気づけなかったが後日幻影自己人形《ドッペルゴーレム》から「何かスゲエ強い奴が行ったと思うけどしっかりやってる?」と通信があり発覚した。

「あん時は驚いたぞ。東洋の龍巫女と恐れられるお前がメイド姿で雑用をしていたんだからな」
「へへっ、照れるっす」

「そういえばちゃんと聞いてなかったな。なんでそんなことをしてたんだ?」

「恥ずかしい話あーしは憧れてたんすよ女の子らしい仕事に。里ではそんなことさせてもらえず戦闘ばかり。もー飽き飽きしてたっす。でもそんな時ジーク様が来てくれたっす」

 正確には幻影自己人形《ドッペルゴーレム》だがな。

「まさかあーしだけでなく里のみんなまで引き取ってくれるとは思わなかったっす。おかげで里のみんなもあーしがメイドやってても「まあ魔王様のメイドならいいか……」みたいな感じになってるっす!」

 里の守り神であった彼女が人に仕えるというのは複雑な気持ちだろうが幻影自己人形《ドッペルゴーレム》がタイマンでイブキを倒したらしく里の者たちも俺に協力的だ。

「だからジーク様には感謝してるっす!」

 太陽のような笑顔で言い放つ彼女。
 しかし……

「だったら無理して幹部なんて引き受けなくてよかったんだぞ? 私は戦いたくない者に強制はしないぞ」

 俺が幹部に誘ったことを枷に感じて欲しくなくての言葉だったがイブキはその言葉を聞くと真剣な顔つきになり喋りだす。

「確かにあーしは別に戦うことは好きじゃないっす。カワイイ服着て平和に暮らせたらそれでいいと思ってるっす。だけどあーしには力がある、それを行使しないで嫌なことから目を逸らし続けるなんてあーしの女としてのプライドが許さないっす!!」

 俺が彼女を気に入ってるのはこういうところだ。
 一見軽い言動が目立つが彼女にはブレない『芯』がある。

「ふふ、お前がいいならそれでいい。そろそろ私は自室に戻らせてもらうぞ」
「はいっす! 良い夜をっす!!」




 ◇



「うう~ん」

 夜。
 ぐっすり寝ていたはずの俺だが妙な寝苦しさを感じ意識が覚醒していく。

「暑いな……っておわぁ!!」
「くくっ。夜は静かにするものじゃぞ主様?」

 暑いのも当然。
 なぜか一緒の布団にまだ少女と呼べる年の女性が裸同然のネグリジェ姿で入り込んでいたのだから。

「お、お前は……」
「くかっ、そうか。まだわらわの事は知らなんだな」

 まだ知らない?
 まさか幻影自己人形《ドッペルゴーレム》に会っているのか?

「これは驚かせてすまんの。わらわはテレサ・スカーレット、破滅にして救世の魔女。そして主様の伴侶になるものじゃ。よろしゅう」
「ああよろしく……って伴侶!?」

 幻影自己人形《ドッペルゴーレム》の奴そんな約束したのか!?

「くくっ、まだ予定。じゃがな」
「またマーレが暴れそうだ……」

 今から胃が痛いぜチクショウ。

「ジーク様! 音がしたけど大丈夫っすか!」
「あ」

 扉をぶち破り部屋に入ってくるイブキ。
 部屋の中には半裸の男女と乱れた布団。完全に事後だ。

「ひゃああぁぁ!! すっ、すまねえっす!! まさかジーク様が欲求不満だったなんて!! あーしという者がいながらひでえっす!!」

 顔を手で覆いながらおいおい泣きまねをするイブキ。がっつり指の隙間から見てるのバレバレだぞ。

「……ん? 誰かと思えば東の巫女殿ではないか。何だその恰好はコスプレにしては気合が入っとるの」
「そ、そそそういうあんたは西の魔女! そんなハレンチな恰好で何してんすか!!」

 二人の魔女が視線をバチバチと交わす。
 入り込む余地がねえ。俺の部屋なのに。

「まさかぬしがここにおるとはな。しかも給仕の真似事とはかわいい一面があったのじゃな?」
「う、ううううるさいっす!! あんたこそいい歳してそんな恰好で恥ずかしくないんすか!!」

「いい歳じゃと!! この肉体はピチピチでプルプルじゃたわけが!!」
「言葉づかいが古いんすよロリババアが!!」

 業を煮やしたイブキが雷速でテレサに突進する。

「面白い!! かかってくるがいいわ!!」

 バゴン!! と盛大な音を立て二人は俺の自室に大穴を開け外に飛び立っていく。


「……壁直してから追いかけるか」




 ◇



 少し遅れて追いかけると町からけっこう離れたところで怪獣大戦争が行われていた。

 片方は白い鱗の巨大な龍。
 東洋の龍のように蛇のように細長い体で長いひげを蓄え体中に雷光をまとっている。

 そしてそれに対峙するはまるでルビーのようにな美しい紅く透き通った石で出来たゴーレムだ。
 こちらも龍に負けず劣らずデカい。ちなみに肩にテレサが乗っているのが見える。

『白雷息吹《ホワイト・ブレス》!!」
「甘いわ!! 紅染障壁《レッドイージス》!!」

 龍の口より放たれる白い超高出力の雷撃はゴーレムの手に現れた障壁に命中するが貫通する事敵わず辺りに跳ね返り地形を変えてしまう。

「おいおいマジかよ……」

 せっかくここら辺まで整地したというのに……

「ジーク様少々お待ちくださいっす! この痴女はあーしが討伐するっす!」
「くくっ! 小娘がわらわを討とうなどと片腹痛いわ!」

「お前ら……」

 人の努力も知らずに暴れやがって……!!

「頭を冷やしやがれ!! 顕現せし巨神兵サモン・ギガンテス!!」
『グオオォッ!!』


 ゴーーーーン!!

 巨神兵ギガンテスの二つの拳が両者の頭を打ち付ける音が夜空に響いた。



 ◇


「うう、いてえっす」
「くくっいい様じゃ」

 頭を殴られ痛がるイブキをテレサがからかう。
 こっちも一発いっとくか?

「しつこい女は嫌いだぞ」

 俺がテレサに釘をさすとテレサは渋い顔をする。

「ぐぬぬ」
「やーいやーいっす」

 はあ。
 先が思いやられるぜ。

「仲良くやってくれ。これから共に暮らし共に戦う同士なのだから」

「そうは言ってもこのおばあさんが突っかかってくるっす」
「もう仲良くできるなテレサ?」

「……わかったのじゃ」

 渋々といった感じで答えるテレサ。
 やれやれ。道のりは険しいな。
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