スキル「共感覚」のおかげで最強の魔法使いになったので魔人を集めて魔王になることにしました 〜最恐魔王の手さぐり建国ライフ!〜

熊乃げん骨

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第五章 氷獄に吠ゆ

第1話 極寒の地

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「さっむ!!」

 俺はついて早々その寒さに辟易する。

 ここは既にロシア。
 予定通りに俺と火凛とヴォルクの三人は予定通り早朝に魔王国を出発。
 転移門《ゲート》をくぐりロシア国内に侵入したのだった。

「はあ……息も白いですね。ここまで寒いのは私も初めてです」

 火凛は手をさすりながら寒そうにしている。
 白い肌が雪景色にマッチしており非常に絵になるのだが、寒さはあまり得意ではない様だ。

「ここいらはまだあったかい方だぜ。目的地の方がここよりずっと寒《さみ》いぜ」

 俺たちがいるのはロシアの中央部、その南端にある都市「クラスノヤルスク」だ。
 魔獣騒ぎでいくつもの都市が潰れたロシアだが、ここの都市は運よく被害が軽微で済んだらしい。
 元から大きな都市ではあったらしいが、壊滅した他の町からも人が流れ込んでるらしく都市内は人でごった返している。


「じゃあここで情報収集と足りないモノを調達しよう、明日の朝には出発したいところだな」
「はい。お供いたします」
「俺は一人にさせていただきます。色々と調べたいことがあるんで」
「そうか」

 ヴォルクは俺にペコリと一礼すると雑踏の中に溶けていく。
 久しぶりの故郷だ。あいつにも思うところがあるのだろう。

「じゃあ二人でいくとするか」
「はい」

 図らずも俺は火凛と二人きりで買い物をすることになってしまった。
 まるでデートだぜ。

 本体が忙しくしてる中少し申し訳ないが、勘弁してくれ。
 これも仕事の内なんだ。へへ。



 ◇



 魔力大規模感染《マジカル・パンデミック》が影響を与えたのは動物だけでは無かった。
 気温や気候にも大きな影響を与えたのだ。

 暑いところはより暑く。寒いところはもっと寒く。
 その土地の特徴が伸びる形に変化していったのだ。

 ここロシアも例外ではなくほぼ全域が一年を通して気温が一桁以下という事態になってしまった.
 当然そうなってはまともに暮らすことは出来ない。
 そこでロシア政府はロシアに元々いた魔法使いと協力し、気温を一定に保つ魔兵器を開発。
 そして大きな都市にそれらを配備し事なきを得たのだ。

「つっても寒いもんは寒いけどな」

 現在の気温は12℃。
 8月のこの都市では普通の気温らしいが日本生まれ日本育ちの俺にはなかなか厳しい。

 しかも町の外はこれよりずっと寒い。
 嫌になるぜ。

「城のあったかいご飯が恋しくなるぜ」
「そうですね……。それにしてもジーク様、お城にいる時もよりも随分その……くだけた感じになりましたね」
「ああ。外で活動するにあたり、お前らが緊張しないように少し性格を調整したんだ。本体の方はいつも通りさ」
「なるほど……! お気遣いありがとうございます」

 感動しているところ申し訳ないが、これは真っ赤な嘘だ。
 俺が魔王モードをやめている理由は二つ。

 ひとつはボロが出るから。
 鎧を脱ぎ素顔をさらしたこの状態では絶対に魔王モードを維持できない。
 だったら最初からくだけて接すればいいという考えだ。

 もう一つは単純に部下達と距離を縮める為。
 彼らが俺に全幅の信頼を寄せているのは分かっている。
 しかし仲がいいかと言えばちょっと微妙だ。
 なのでこれを機に彼らともっと親密になり、気軽に世間話や遊んだりが出来る仲になろうという魂胆だ。

「お! なんか旨そうなもんが売ってるぞ! 食ってみようぜ火凛!」
「……!! はい!!お供します!!」

 今まで俺に見せたこと無い自然な笑みを見せる火凛。
 よかった。
 この調子で全員と真の意味で心を許せる中になりたいものだ。



 ◇



「うーん、旨い!!」
「はい! 初めて食べましたがこれは中々……!」

 俺と火凛は屋台で買ったものをベンチに座って食べていた。
 買い食いなんて久しぶりだな。まるで学生に戻った気分だぜ。
 学生の頃と違う点と言えば隣にいるのが男友達ではなく美少女メイドなところか。

 ……いかん、意識したら恥ずかしくなってきたぞ。

「このピロシキというのはよく出来てますね。これなら移動しながらでも食べられます」

 ピロシキ。
 ロシアのソウルフードであるこの食べ物は、パンの中に肉や野菜を入れて焼いただけのシンプルな食べ物だ。しかしシンプルゆえに作り手の技量が試されそうだ。
 俺の買った奴は肉と玉ねぎというシンプルな構成だったが、これが少し硬めのパンとよく合って美味い。
 やはり遠くに来たら現地のモノを食わなくちゃな。

 そんな感じで俺と火凛が学生のデートみたいなことをしていると、3人のチャラチャラした格好の若者がこちらに近づいてくる。

「お嬢さん観光客かい? ここいらは危ないから俺たちが案内してあげるよ」
「そうそう。たっぷり楽しませてあげるよ・・・・・・・・・

 どうやら目的は火凛のようだ。
 無理もない。こんなかわいいメイドさんがさえない俺とピロシキ食ってたら横取りできると思うだろう。
 ……なんか自分で言ってて空しくなってきたな。


「…………もぐもぐ」

 そんなラブコールを受けた当人は全く意に介さずピロシキを食らい続けている。
 興味ゼロって感じだ。スカッとするぜ!

「おい無視してんじゃ……」

 業を煮やした男が火凛の腕を掴もうとする。
 おいおいそれは……。

「見過ごせないな?」
「な……!!」

 俺は男が火凛に伸ばした腕を超反応でつかみ取る。
 チンピラぐらい火凛に任せても問題ないだろうが、さすがにそれはカッコ悪すぎる。

「てめえ離しやがれ!」

 男は俺の手を振りほどき距離を取ると、仲間と共に俺へ殺気を向ける。
 すると殺気と共に魔力も彼らの体から感じ取れる。
 どうやら3人とも魔人の様だな、それならちょうどいい。

「この体の試運転といきますか……!」

「ごちゃごちゃうるせえ! 氷結拳撃《アイスブラスト》!!」

 チンピラは拳に氷の魔力を纏い殴りかかってくる。
 中々の魔力だ、
 厳しい自然環境だと魔力も強くなるのだろうか? 興味深い。
 だけど……。

「まだまだだな」

 俺はその渾身の一撃を片手、しかも素手で受け止めてみせる。

「馬鹿な……!?」
「そんじゃお返しするぜ?」

 俺はお返しとばかりにチンピラのボディに拳を打ち込む。
 その一撃は魔力の防御膜を容易く貫通し、チンピラの腹に命中。

 メコォ! と鉄板がへこむような音を響かせチンピラを吹っ飛ばす。

「うん……上々だな」

 これが、俺の新しい力。
 この仮初の肉体には様々な機能が盛りだくさんに搭載されている。
 それは俺と賀ヶ山が魔力再生機能が作れなくて手を持て余せていた時に、「ぼくのかんがえるさいきょうのサイボーグ」を目指し悪ノリともいえる程機能を盛り込んだからだ。

 そのうちの一つ。
 それは最高クラスの攻撃力と防御力だ。

 希少な鉱石や魔獣の素材をふんだんに盛り込まれたこの体は、かなりの硬度を持っておりちょっとやそっとの攻撃では傷つかない。
 動力部にも希少な魔道具を埋め込んだため、その馬力は常時強化魔法を重ね掛けしたようなものだ。

「……つまり貴様らに負ける道理は無いという事だ!」

 俺はキメ顔でチンピラに言い放つ!
 ……しかしそこには肝心の奴らがいなかった。

「あり?」
「……彼らなら最初の一撃を見て逃げだしましたよ?

「…………そうか」

 ロシアの凍てつく風は、俺の熱くなった顔までは冷やしてくれないのだった……。
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