スキル「共感覚」のおかげで最強の魔法使いになったので魔人を集めて魔王になることにしました 〜最恐魔王の手さぐり建国ライフ!〜

熊乃げん骨

文字の大きさ
81 / 143
第五章 氷獄に吠ゆ

第2話 出発

しおりを挟む
 チンピラを撃退した俺たちは買い出しを早々に終わらせ、情報収集を始めることにした。

 欲しい情報は二つ。
 訪問者《ビジター》の目撃情報とロシア軍の動向だ。

 一般市民がこれらについて深く知っているとは考えにくいが噂話だけでも入手しておきたい。
 なに、いざとなったらちょちょいと精神魔法で催眠してやればいい。
 簡単な話だ。

「……と思ってたんだがなあ」

「くっ! 力及ばず申し訳ありません」

 見事に収穫ナシだった。
 町の人たちは未だ自分が生き残るのに必死であり、他の事にまで気が回ってないようだ。
 地道な聞き込みは日が暮れて通りに人がいなくなるまで続いたのだった……。


 ◇


「遅かったじゃねえか大将!」
「ああ。思ったより手こずってな」

 聞き込みを切り上げた俺と火凜はあらかじめ決めたおいた集合場所である酒場に行くと既に酒を飲み始めているヴォルクがいた。
 酒には相当強い筈のヴォルクだが頬がほんのり赤くなっている。そうとう飲んだな。

 まあ久しぶりの故郷の酒だ、思うところもあるだろうから許してやるとしよう。

「まあまあ座ってくれよ! 飯なら色々頼んどいたからよ!」

 ヴォルクは上機嫌で手招きすると座るよう促してくる。
 テーブルの上には色とりどりの料理。
 地元民がすすめるだけあってどれもうまそうだぜ。

「ところでヴォルク……そっちは何か情報はつかめたか?」

 俺は一縷の望みをかけてヴォルクに尋ねる。
 こいつはそういうのは得意じゃないだろうが、何か手掛かりだけでも掴んでてくれないだろうか?

「ん? 情報ならあらかた集まったぜ。じゃなきゃこんなに飲んだくれねえぜ」

 ヴォルクはニヤリ。と笑みを浮かべるとこちらに書類の束を渡してくる。

 その書類には訪問者《ビジター》と思われる巨大な獣の情報と最近のロシア軍の動向が細かく記されていた。
 とても一般人から聞き出せるレベルではない。どのようにしたらここまでのモノを入手できるのだろうか。

「こ、これは……」

「へへ、俺には悪い友達がたくさんいるからな。そいつに頼んだら快く教えてくれましたぜ」

 鼻を指でこすりながら誇らしげにするヴォルク。
 まさかこいつの交友関係がここで役に立つとは。人生何が役に立つか分からないモノだ。

「よし。じゃあこの軍の巡回ルートを避けるようにして目的地へのルートを決めよう」

「確か次の目的地は魔法使いの村でしたね」

「ああ」

 その名も「最果ての村」。
 ここより北に進んだところにあるらしい魔法使いの村だ。
 その存在は秘匿されており、もちろん地図には載っていない。

「しっかしそんな村がホントにあるんすかね。俺は一回も聞いた事がねえけどなあ」

「テレサの話だと限られた魔法使いしかその存在を知らないらしい。現地人が知らないのも無理はないさ」

 テレサの話によるとその村の歴史は古く、千年近く昔から存在するという。
 そこの村人が村の外へ出ることは滅多に無く、細々と魔法の研究をして暮らしているらしい。
 まず俺たちはその村に行き訪問者《ビジター》について聞き、もしその過程で友好が築ければ仲間になってもらおうと考えている。
 まあ無理に魔王国に来てもらう気はないけどな。

「隠された村か……何だか面白くなってきたな!」

「おいおい、あまりはしゃぐと足元を掬われるぞ?」

 ヴォルクを諫める俺だが、何を隠そう俺自身もワクワクしている。

 こんな気持ちになるのはいつぶりだろうか。
 少なくとも魔王として活動しているときは感じなかった。
 それにこの体に変わってからまるで別人のように思考がクリアになった。いったい何故だろうか?

「ジーク様?」

 俺が考え込んでいると火凛が心配そうに俺をのぞき込んでくる。
 いかんいかん、しっかりせねば。

「大丈夫。少し考えこんでただけだ」

 俺は安心させるため笑顔を向けて返事する。
 しっかりしろ。いくら国から離れているとはいえ俺は一国の主なんだ。

「さて! 話はこれくらいにして飯を食おうじゃないか! せっかくのごちそうが冷めてしまうからな!」

 俺はそう誤魔化すと飯に手をつけ口に運ぶのだった。





 ◇




「こ、ここまで寒いとはな……」

 朝、「クラスノヤルスク」を出た俺はその寒さに驚愕する。
 現在の気温は-5度。鼻水も凍る気温だ、そんな機能はこの体には無いが。

「気になってたんだがよ大将。その体なら寒さを感じないように出来るんじゃないのか?」

「ああ、出来るよ」

「じゃあ何でしないんだ?」

「簡単な話だ。この体は寒さや暑さに強いワケじゃないからだ。それらの感覚を切ってしまえば気づかぬうちに体が駄目になっちまう」

 この体は機械だけでなく生体組織も使われているため普通に痛むし血も出る。
 そのため痛覚をしっかり搭載している。いざとなれば切ることも出来るが、あまりしたくない。

 俺が死ねば、本体の俺がどうなるか分からないからだ。

 痛覚を切ってしまえば絶対に油断や慢心が生まれて、勝てた戦いも負ける恐れがあるからな。
 痛いのは嫌いだが致し方ないのだ。

「さて、それじゃ行くとするか」

 俺は町で買ったモコモコの手袋をはめなおすと二人に顔を向ける。
 すると二人は信頼に満ちた顔でこちらを見返す。それがなんともむず痒いが悪い気はしない。

「出発!」

 こうして俺の人生二度目の旅が幕を開けたのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

処理中です...