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第六章 戦乱の京
第13話 礼堂院
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『礼堂院《れいどういん》虎徹《こてつ》』
どうやらそれが虎鉄のフルネームのようだ。
それにしても礼堂院という姓。
俺はその姓に聞き覚えが……
全く無かった。
陰陽師という存在について、俺は魔王国を建国する以前にマーレから色々聞いて勉強したはずだったのだが、その姓はまるでスッポリ頭から抜け落ちたかのように俺の頭には残ってなかった。
「『五行相克《ごぎょうそうこく》』を受け継いだお前の妹がいなくなったせいで礼堂院家は実質崩壊してしまった。何しにお前がここへ戻ってきたかは知らないが身の振り方に気をつけるんだな!」
朱凰院という男はそう吐き捨てると足早に去ってしまった。
虎鉄を罵倒しにきたのか心配しにきたのかよく分かんなかったな。
「拙者の妹は……優秀でした」
朱凰院がいなくなるのを見届けた虎鉄は、昔を思い出すかのようにポツリポツリと妹のことを話し始める。
「拙者の父親は礼堂院家の血を強くするため、四象家の者を妻にしました。そして生まれたのが拙者です。しかしなんの因果か強力な血筋を二つ合わせ持ったはずの拙者には陰陽師の適性がありませんでした。当然拙者の一族は大揉めしました、両親は別れ、父親は新たに分家の者と結婚し妹を産みました」
ということは虎鉄と妹は腹違いの兄妹なのか。
現代社会でもお家騒動ってのはまだあったんだな。
「奇跡的に妹には陰陽師としての才能がありました。五行全てを扱える礼堂院家秘伝の贈呈物《ギフト》『五行相克』を受け継ぎ、なおかつ高い魔力と緻密な魔力操作技術を持っておりました」
多少の妹贔屓は入ってそうだが、虎鉄がそこまで言うのだから実際優秀な人物だったのだろう。
もし会うことが出来るならぜひ仲間になって欲しいものだ。
「おまけに妹は優しく、そして使命感に溢れていました。しかしそれ故に魔力大規模感染《マジカル・パンデミック》が起きた際、彼女は都市部で人命を守るためその力を振るったようです。最後の通信記録によると変な男と出会い、その男と共に仲間の陰陽師と合流するという連絡を残し消息を絶ちました」
「虎鉄はその時こっちにいたのか?」
「はい。京は古来より魔力が豊富な場所です。当然魔獣もたくさん出現し人々を襲いました。その時拙者は選択を迫られました、妹を探しに東京へ行くか、京に残り人々を守るか。その二つを拙者は天秤にかけ……後者を選びました。優秀な妹なら大丈夫、愚かにもそう思ったせいで拙者は妹を失い、そして我が一族も守ること叶わず拙者を除き全滅しました」
悲痛な表情で虎鉄は当時のことを語る。
きっとさんざん悩み抜いた末の決断だったのだろう。
しかし正しい決断だったかどうかなんて終わってみないと分からない。俺たちに出来ることと言えば自分の下した選択を信じ、全力を尽くすのみだ。
「……つまらない話を長々と申し訳ありません。少し頭を冷やしてきます」
虎鉄はそう言うとトボトボと一人で歩き出す。
「ちょっ、あんた……」
「よせ、一人にしてあげよう」
引き止めようとするハコを俺は制する。
「男には一人になりたい時があるんだ。なぁにあいつなら大丈夫さ」
「……せならええんやけど」
少しむくれるハコだが渋々言うことを聞いてくれる。
「俺たちは俺たちで芭蘭の手がかりを探そう。奴だけは見逃すわけにはいかない」
どうやらそれが虎鉄のフルネームのようだ。
それにしても礼堂院という姓。
俺はその姓に聞き覚えが……
全く無かった。
陰陽師という存在について、俺は魔王国を建国する以前にマーレから色々聞いて勉強したはずだったのだが、その姓はまるでスッポリ頭から抜け落ちたかのように俺の頭には残ってなかった。
「『五行相克《ごぎょうそうこく》』を受け継いだお前の妹がいなくなったせいで礼堂院家は実質崩壊してしまった。何しにお前がここへ戻ってきたかは知らないが身の振り方に気をつけるんだな!」
朱凰院という男はそう吐き捨てると足早に去ってしまった。
虎鉄を罵倒しにきたのか心配しにきたのかよく分かんなかったな。
「拙者の妹は……優秀でした」
朱凰院がいなくなるのを見届けた虎鉄は、昔を思い出すかのようにポツリポツリと妹のことを話し始める。
「拙者の父親は礼堂院家の血を強くするため、四象家の者を妻にしました。そして生まれたのが拙者です。しかしなんの因果か強力な血筋を二つ合わせ持ったはずの拙者には陰陽師の適性がありませんでした。当然拙者の一族は大揉めしました、両親は別れ、父親は新たに分家の者と結婚し妹を産みました」
ということは虎鉄と妹は腹違いの兄妹なのか。
現代社会でもお家騒動ってのはまだあったんだな。
「奇跡的に妹には陰陽師としての才能がありました。五行全てを扱える礼堂院家秘伝の贈呈物《ギフト》『五行相克』を受け継ぎ、なおかつ高い魔力と緻密な魔力操作技術を持っておりました」
多少の妹贔屓は入ってそうだが、虎鉄がそこまで言うのだから実際優秀な人物だったのだろう。
もし会うことが出来るならぜひ仲間になって欲しいものだ。
「おまけに妹は優しく、そして使命感に溢れていました。しかしそれ故に魔力大規模感染《マジカル・パンデミック》が起きた際、彼女は都市部で人命を守るためその力を振るったようです。最後の通信記録によると変な男と出会い、その男と共に仲間の陰陽師と合流するという連絡を残し消息を絶ちました」
「虎鉄はその時こっちにいたのか?」
「はい。京は古来より魔力が豊富な場所です。当然魔獣もたくさん出現し人々を襲いました。その時拙者は選択を迫られました、妹を探しに東京へ行くか、京に残り人々を守るか。その二つを拙者は天秤にかけ……後者を選びました。優秀な妹なら大丈夫、愚かにもそう思ったせいで拙者は妹を失い、そして我が一族も守ること叶わず拙者を除き全滅しました」
悲痛な表情で虎鉄は当時のことを語る。
きっとさんざん悩み抜いた末の決断だったのだろう。
しかし正しい決断だったかどうかなんて終わってみないと分からない。俺たちに出来ることと言えば自分の下した選択を信じ、全力を尽くすのみだ。
「……つまらない話を長々と申し訳ありません。少し頭を冷やしてきます」
虎鉄はそう言うとトボトボと一人で歩き出す。
「ちょっ、あんた……」
「よせ、一人にしてあげよう」
引き止めようとするハコを俺は制する。
「男には一人になりたい時があるんだ。なぁにあいつなら大丈夫さ」
「……せならええんやけど」
少しむくれるハコだが渋々言うことを聞いてくれる。
「俺たちは俺たちで芭蘭の手がかりを探そう。奴だけは見逃すわけにはいかない」
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