スキル「共感覚」のおかげで最強の魔法使いになったので魔人を集めて魔王になることにしました 〜最恐魔王の手さぐり建国ライフ!〜

熊乃げん骨

文字の大きさ
123 / 143
第六章 戦乱の京

第25話 DAEMON CORE

しおりを挟む
『GW-003 DAEMON CORE』

 この魔道具はある副作用がある代わりに膨大なエネルギーを生産することのできる魔道具だ。
 生産されたエネルギーは俺の体の能力を大幅に向上させ、更に体から漏れ出たエネルギーは青色の電気へ変換され相手を焼き焦がす。

「いくぞ……!!」

 地面を蹴り、とても人の目では追えない速度で俺は駆け出す。
 その速度もさることながら驚くべきは初速の速さ。俺の体は一秒にも満たぬ時間で音速に匹敵する速さへ達し勢いそのまま芭蘭の顔面目掛け拳を振るう。

 しかし相手もそんな簡単にくたばる相手ではない。
 すんでのところで腕をねじ込み俺の拳をガードする。

「ふふっ……!! 危ない危ない。どうやらその派手な姿は見掛け倒しでは無いみたいですね」

「はっ! 無駄口叩いてるとすぐに終わっちまうぞ!」

 再び加速した俺は今度は芭蘭の横を通り過ぎ、そのすれ違いざまに拳を打ち込んでいく。
 もちろん一回ではなく二回三回四回と四方八方から襲い掛かりそのすれ違いざまに何回も何回も執拗に攻撃を続ける。
 最初はガードをし直撃を避けていた奴も次第に反応できなくなり攻撃がヒットし始める。

「くっ!!」

 ここに来て奴は初めて焦りの色を見せる。
 ならばここが攻め時だ。一気に片を付けてやる!!

悪魔の雷連撃デーモン・ラッシュ!!」

 悪魔の如き拳の雨が芭蘭目がけ放たれる。
 その一撃一撃は奴の肉体を砕き、壊し、そして焼き焦がしていく。

「ぐ、ぐおおおおおおっっ!!」

 一秒間に百発近く打ち込まれた芭蘭は流石に耐えきれなかったのか苦悶の声を上げその場に膝をつく。
 辺りには肉の焼けた嫌な臭いがたちこめ、奴の体からは黒い煙が上がっている。

「……」

 そのまま芭蘭はピクリとも動かなくなった。
 奴の肉体は所々えぐれ、全身のいたるところから出血しており常人ならもう手の施しようのない状態だ。
 だけど。

「おい、まだ生きてるんだろ」
「あ、バレた?」

 芭蘭は俺の言葉に軽くそう返すとまるでケガなどしてないかのようにすくっと立ち上がる。

「いやあ参った参った。ここまでボロボロにされたのは初めてですよ」

「その割にはピンピンしてる様に見えるがな」

「そりゃ当然ですよ。あなたたちは私と同じステージにすらいないのです。ここまで出来ただけ上出来ですよ」

 芭蘭はそう言って損傷の特に酷い右腕を左腕で撫でる。
 すると何という事だろうか。撫でたところがまるで最初から怪我などしていなかったかのように綺麗に元通りになっているではないか。

「化け物め……!!」

 今の一瞬、魔法や贈呈物《ギフト》を使ったようには見えなかった。
 ということは俺の知ってる範囲外の技。奴の言う『神秘』とやらの力なのだろう。

「これでまた遊べるね。次はどんな面白いものを見せてくれるのかな?」

 気づけば芭蘭は全身を回復させており、服まで元に戻っている。
 化け物め。

「しょうがない。あまり使いたくなかったがこいつも使うとするか」

 そう言って俺が取り出したのは背中に隠していた一振りの日本刀。
 抜き放ったその刀身は紫色に怪しくゆらゆらと煌めいている。

「よかったまだ奥の手があったんですね! これで終わりじゃつまらない!」

「ぼざいてな。その口すぐに開かなくしてやるよ!」




 ◇



 その頃、陰陽京では熾烈な戦いが繰り広げられていた。

「おい虎子! そっち行ったぞ!」

「わーってるわよ! あと虎子言うな!」

 大蛇の噛みつきをすんでのところで避けた虎虎は興亀に悪態をつく。
 まだ目立った傷こそ負ってはいないが肩が上下し息も荒い。
 確実に疲労は溜まっているだろう。

 それは他の四人も同じであり状況は悪くなる一方だ。
 異常な回復力を持つ大蛇は生半可な攻撃では傷をつけることすら出来ず、頑張って頭を一つ切り落としたとしても数十秒で復活。これではジリ貧だ。

「なにか……なにか奴の頭を全て一瞬で落とせる方法はないのか!?」

 興亀の言葉に他の四象家の面々は口をつぐむ。
 多彩な技を持つ彼らだが一度に落とせる首の数はせいぜい二つ。
 それすら誰かのサポートで大蛇の攻撃を止めてもらわなければ出来ない。それゆえみんなで一斉に首を切り落とすわけにもいかない。

「一つだけ方法が、ないこともない」

 そんな中声を上げたのは虎鉄。
 彼は懐より一振りの錆びついた小ぶりの剣を取り出し言葉を続ける。

「これは拙者が賜った『準神話級』の魔道具だ。これを使えばおそらく奴を倒すことも出来るだろう」

「おいおい『準神話級』って……そんなもん扱えんのかよ!?」

 興亀が心配するのも当然。資格のないものがそんなものを無理に扱ってはどうなるかわかったものではない。

「これは拙者用に調整されておる。とはいえもちろん何回も使える代物ではない、一回きりしか使えんだろう」

「……まあこのさいなんでそんな物を持ってるかなんて聞かないわ。でもこれがあるならなんとかなるんじゃない」

「でも一回きりしか打てないんだろ? いったい誰がどうやってそんな隙を作るってんだ!?」

 一回きりしか使えない切り札に混乱する一同。
 そんな中、龍々家が冷静に発言する。

「私に、考えがある」

 その言葉に一同は言い争いをやめ龍々家の言葉に耳を傾ける。
 あまり目立った行動をしない彼だがその実力、そして知識の量は四象家の中でもトップクラスなのだ。

「あの蛇の化け物、あれはおそらく八岐大蛇《ヤマタノオロチ》をイメージして作られたものだろう」

 八岐大蛇。
 八つの頭と八つの尾を持つ有名な怪物の名前だ。目の前の怪物と見た目は酷似している。

「みなも知っているだろうが名前は力を持っている。あれが八岐大蛇を模しているならば再現されているのは力だけではない」

「なるほど、そういうことか……!」
「ま、まあまあの案だね」

 その言葉で龍々家の言おうとしたことを理解した虎鉄と雀長は感嘆する。しかし他の脳筋二名はピンと来て無い様でポカンとしている。

「お、おいもったいぶってないで俺にも教えてくれよ」
「そうよ、わからないわけじゃないけど興亀が可哀想じゃない!」
「おい! 俺だけが分からないみたいにするな!!」

 賑やかに言いあう二人を見て龍々家は思わずクスリと笑う。
 まるで昔に戻ったみたいだ――――。口にはしないがそう思った。

「いいか、よく聞いてくれ。奴が伝承を元にしているなら必ず再現しているものがある」

 興亀と虎虎は言い合いをやめ、龍々家の言葉に耳を傾ける。

「それは、弱点だ」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...