スキル「共感覚」のおかげで最強の魔法使いになったので魔人を集めて魔王になることにしました 〜最恐魔王の手さぐり建国ライフ!〜

熊乃げん骨

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第七章 憤怒の果てに

第3話 侵入

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「さて、そろそろ明日の作戦でも立てるかの」

 今後の動きを決めるため二人で話し始めるとテレサがそう切り出してくる。

 すでに外は暗くなっているが、時々魔王兵の声が聞こえてくる。
 どうやら夜通しで俺を探しているらしいがこの家はテレサが人払いの魔法をかけているため訪ねてくることはなかった。
 おかげで今日はゆっくり休んで明日に臨む事ができそうだ。

「そうだな。何か案はあるのか?」

 恥ずかしながら俺は何の案も浮かんでいなかった。

 魔王城は俺が考案した防衛システムでガチガチに守られている。
 そんな中を隠れて侵入し最も警備の厚い最上階に向かわなければならないのだ。
 しかもこちらの戦力は二人。
 正直言って無理ゲーだ。

「うむ。わしが裏切ったことはおそらくまだ知られておらぬ。なのでまずはわしが城内を探ってくるから主人どのはその間に何とかして警備しすてむを何とかしてくれるかの?」

「その警備システムの中枢も城内にあるからなあ……何をするにもまずは城内に入れなければ話にならないぞ」

 警備システムを統括している『マザー』と呼ばれるプログラムは魔王城一階の中央部分にある。
 まずはそれを止めなければ話にならないのだが、そこに行くには大勢の警備員を掻い潜らなければいけない。

「その『警備しすてむ』はわしには止められないのかの?」

「ああ、あれは限られた人じゃないと止められないんだ」

 マザーにアクセスするには魔力の波長『魔紋』が一致する必要がある。
 アクセス権限を持つのは俺やマーレやシェンなどの極々わずかな限られた者のみであり、いくら幹部といえどアクセスは出来ない。
 もとよりテレサは機械のたぐいが得意で無いため無理かもしれないがわざわざそれを口に出すほど俺も無神経では無い。

「となるとやはり主人どのが直接乗り込むしか無いわけか……」

 俺とテレサはしばし考え込む。
 何とかしてバレずにマザーの元へ行く方法はないものか。

 俺は記憶をたどり様々な手段を模索していき……一つの方法に辿り着く。

「一つだけ、方法があるかもしれない。でもこれにはお前の協力が必要不可欠だ。少々辛い思いをさせることになるかもしれないが頼めるか?」

「かかっ、当然じゃ。どんな苦難も乗り越えて見せようぞ」

 俺が申し訳なさそうに聞くとテレサはニカっと笑みを浮かべながら答えてくれる。

 俺はそんな彼女に敬意を払い作戦の内容を伝える。
 するとその作戦を聞いたテレサは顔を真っ赤にし、「そ、そんなことをするのか!?」と大声をあげる。

「やっぱり駄目か?」

「だ、駄目とは言っておらぬがそんな恥ずかしいことはさせられるとは思っていなかったのじゃ! しかし、むう、それしか方法がないのは事実じゃし……ああもう! わかったのじゃ、こうなったらわしも覚悟を決めるのじゃ!!」

 しばしの葛藤の末テレサは折れ、俺の作戦に乗ってくれることになった。

「よし、じゃあ明日の明朝作戦開始だ! よろしく頼むぞ!」

「うう、なんでこうなったのじゃ……」









 ◇








「第六区画の捜索も完了しました! 引き続き残りの区画も捜索します!」

「了解した。何としても国外に逃げられる前に発見しなければならぬ、頼んだぞ」

 翌日の明朝。
 兵士たちは夜通し俺の捜索をしていたにも関わらず今だ全力で捜索を続けているらしい。働き者で俺は嬉しいやら悲しいやら複雑だ。

「頑張れよー」

 俺は小声でそう呟きながら彼らの横を素通りして城内に侵入していく。しかし彼らは俺に気づくことなく作業に没頭している。
 城前には何十人もの兵士がいるというのに誰一人として俺のことを見ようともしない。

「どうやらうまく行きそうだな」

「……そうじゃな。わしがこんな状態じゃなければもっと喜べたかもしれないのが残念じゃ」

 俺の肩の上でテレサが羞恥をこらえた様な表情を見せる。
 肩の上にいると言っても立っているわけではない。お尻を肩に乗せ両足を首から下に下ろしている状態、平たくいえば肩車をしているのだ。
 テレサの小さなお尻が俺の首筋にあたり俺も気恥ずかしいがテレサほどではないだろう。

 なぜ俺がテレサを肩車しているかというと、もちろんそういうプレイだからというわけではない。
 その訳はテレサが今身につけている白いマントが関係している。
 このマント、実はある魔道具を改造して作った物なのだ。

 以前魔王城に侵入してきた魔法使いが来ていた服型の魔道具「認識外の存在《ミス・ディレクター》」のことだ。
 これを装備すれば格下の相手から認識されることはなくなる。それは警備システムも例外ではなく、あらゆるカメラや魔力検知装置を欺く事ができるのだ。
 しかし一度この魔道具に侵入を許しているため、現在は警備システムを改良してしまっている。そのため以前のこれではすぐに見つかってしまうのだが心配はいらない。

 なぜかと言うと俺はこの「認識外の存在《ミス・ディレクター》」も改良していたのだ。
 そのおかげで消費魔力こそ増えたが今の警備システムでもしばらくは見つからずに行動できるのだ。

 ここまで言えばなぜテレサを肩車しているかがわかるだろう。
 そう、俺は魔道具が現在使えない身体だからだ。なのでテレサに魔道具を起動してもらい、そのテレサを肩車する事で魔道具の効果を俺にも分けてもらっているのだ。

「のう、お主よ。いつまでわしを辱めるつもりじゃ。はよう行かんか」

 そう言ってテレサは俺の後頭部をペチペチ叩いてくる。
 確かに他の者から見えないとは言え、こんなに人がたくさんいる中で肩車されては恥ずかしいったらないだろう。
 俺は了解し速度を上げ城内に入っていく。

 城内も兵士や使用人達がせわしなく動き回っている。
 まあ無理もない、指導者の片割れが裏切ったとあっては混乱するのも無理はないだろう。
 悪いな、必ず解決してやるから待っててくれ。

 俺は心の中でそう誓い、警備システムの中枢へと足を進めた。


「見えたぞ……! あの部屋だ!」

 城内に侵入して10分も経たぬうちにその部屋は姿を表した。
 幸いここに至るまでに誰にも発見されることはなく順調に来る事ができた。

 俺は急ぎその部屋の前に行くと周囲を見渡し見張っている者がいないか確認し、テレサを下ろす。

「ここから先には一人で行く。テレサは誰か入ってこないか見張っていてくれるか?」

「よかろう。あまり待たせるでないぞ?」

「ああ、すぐに済ませる」

 俺はそう約束するとテレサを部屋の外に待たせ中に入り込む。
 部屋の中は広くドーム状になっている。
 その中央にそびえ立つ大きな機械がこの魔王国の警備システムを担う「マザー」だ。
 急いでそれを停止させようとした瞬間、俺を呼び止める声が部屋に響き渡る。

「ちょーっと待った! そう簡単に行くと思ったら大間違いだぜ裏切り者さんよお!」

 そう言って機械の後ろから現れたのは3人の人物。
 たしかキング、クイーン、ジャックと呼ばれるもう一人の俺が新しく部下にした奴らだ。
 その中でもクイーンと呼ばれる人物は初めて見る。
 彼女はスタイルのいい体全身を黒いボンテージで包んでおり、手には長い鞭を持っている。
 顔の下半分は黒い仮面の様なもので覆っておりその表情は見えないが、その目からは捕食者の様な残虐性が見え隠れしている。髪は長いブロンドをこれまた鞭の様に揺らしている。

「いやーさすがボスだぜえ。本当にここに来るなんてなあ! いったいどうやってここまでバレずにこれたんだ?」

 太った男、ジャックが馬鹿にした感じで聞いてくる。
 クソ! そうやら俺の行動パターンは読まれていた様だ。まさか先回りされているとは。

「一対三は分が悪いな……!」

 テレサに応援を頼もうと俺は後ろを向くが、その瞬間入ってきたドアの周りにイバラの様な蔦が生えてきて行く手を阻む。

「つれないわね。私たちだけで楽しみましょうよ」

 クイーンが扇情的な声で俺に話しかけてくる。
 どうやら彼女の魔法の様だ。破れないことはないがその間は隙だらけになってしまうだろう。

「やるしかないか……!」

 俺は覚悟を決め3人に向き直るのだった。
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