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第七章 憤怒の果てに
第9話 ラース
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走る。ひたすらに。
走る。振り返らずに。
俺の後方からはけたたましい爆音と激しい魔力のぶつかり合いが絶えず起きている。
確かめるまでもなくそれは俺の愛する仲間たちが殺し合って起きているものだ。
本当は今すぐ引き返して止めたい。
しかしそうするわけにはいかない。
それは身を呈して俺を送り出してくれた彼女を裏切る行為だから。
ここまで連れてきてくれた仲間たちのためにも俺は進まなくてはいけない。
「……ついた」
俺はとうとう王の間の扉へとたどり着いた。
女王の間から王の間へと至る通路はそれほど長くないというのに随分と長いこと走っていた気分だ。
俺はそれほどここに来るのが嫌だったのだろう。
今だって尻尾を巻いて逃げたしたい気持ちでいっぱいだ。
だけど俺は扉に手を掛ける。
この無意味な戦いを終わらせるため。
俺は、俺を倒す。
「ほう、意外と早くきたな」
扉の先、王の間の玉座に俺はいた。
漆黒の鎧に身をまとったそいつはふてぶてしい態度で玉座に踏ん反り返る様に座っている。あれが俺とはにわかにも信じがたいな。
「俺には優秀な仲間がいるもんでね。意外とすんなり来れたぜ」
「くくく、その割には消耗しているようだがな」
ちっ、流石に見透かされているか。
今の俺はキング達のせいで魔力と体力共にそこそこ消耗してしまっている。
しかしその程度で諦めるわけにはいかない。
「どれ……ここまで来たことを讃え、俺が直々に捻り潰してやろう」
もう一人の俺、鎧姿のジークは玉座から立ち上がり俺と相対す。
圧倒的な強者のオーラ。俺ってこんなおっかない見た目だったんだな。
奴からは膨大な魔力と共になにやら『赤黒いオーラ』の様なものが体から放たれている。
あれは見覚えがある。
確かゴルディオと戦った時に同じオーラが俺の体から出てきて、物凄い力が溢れてきたんだ。
今ジークから放たれる赤黒いオーラの量はあの時の比ではない。身体中が赤いオーラで覆いつくされるほどだ。
俺は気になってそのオーラを俺の能力『共感覚《シナスタジア》』で覗く。
すると驚くべきことがわかった。
「そのオーラ……なるほど、てめえが原因か」
「くく、今更気づいたって遅えよ」
次の瞬間、ジークから放たれいた赤いオーラが急に意識を持ったかの様に動き出し、一つにまとまる。
まとまったそれはうねうねと形をかえかえ、やがて人の形へと変化を遂げる。
「ふうー! この姿になるのはいつぶりかねえ」
現れたのは赤黒い人型のナニカ。
筋骨隆々の上半身で下半身は煙の様になっていて存在しない。赤黒い体皮は頭部にまで及び、その皮膚からは赤黒いオーラが漏れ出している。
今までに見たどんな存在とも違うナニカ。
それが俺の体内に入っていたのだ。
「灯台下暗しってやつだな……まさかお前みたいのが体内にいたとは。いったいいつからだ?」
「最初っからさ。お前が魔法に目覚めたあの日、俺はお前の力で吸い寄せられて吸収された。その時からずっといつかお前の体を乗っ取ってやろうと画策していたのさ」
まさかあの時からずっといたとは。
通りで気づかないはずだ。
あの時は体に色々な異変が起きたからな。その時に紛れ込んでいたなら気づかないのも納得だ。
「お前が怒りに身を任せた時に体を奪えそうになったんだが結局失敗しちまった。もう無理かと思っていたんだがお前は自分から体を二つに分けてくれた。おかげでお前の精神力は半減、少し時間はかかったが俺様が乗っ取るのも超簡単だったぜ」
つまり俺の軽率な行いのせいってわけか。
くそっ、もう一人の俺は抗ったのだろう。己のうちから侵食されるナニカと戦っていたのだろう。
俺はそんなことなど知らずに国外へ行っていたのか……自分の愚かさが嫌になる。
「もうこの体は思い通りに動かせる様になった。後はお前に分け与えた魔力を返してもらえば俺様は完全体になる!」
「そんなことさせると思うか! こっちこそ俺の体を返してもらうぞ!!」
俺と奴は魔力を放出し牽制し合う、ぶつかり合う魔力はバチバチと火花を巻き起こし、広い王の間をも揺らす。
「我が名は憤怒《ラース》! 貴様を倒し食う者の名だ!」
俺の体を乗っ取ったナニカ、ラースが叫ぶ。
てめえが何者かは知らんが、全部返してもらう!
走る。振り返らずに。
俺の後方からはけたたましい爆音と激しい魔力のぶつかり合いが絶えず起きている。
確かめるまでもなくそれは俺の愛する仲間たちが殺し合って起きているものだ。
本当は今すぐ引き返して止めたい。
しかしそうするわけにはいかない。
それは身を呈して俺を送り出してくれた彼女を裏切る行為だから。
ここまで連れてきてくれた仲間たちのためにも俺は進まなくてはいけない。
「……ついた」
俺はとうとう王の間の扉へとたどり着いた。
女王の間から王の間へと至る通路はそれほど長くないというのに随分と長いこと走っていた気分だ。
俺はそれほどここに来るのが嫌だったのだろう。
今だって尻尾を巻いて逃げたしたい気持ちでいっぱいだ。
だけど俺は扉に手を掛ける。
この無意味な戦いを終わらせるため。
俺は、俺を倒す。
「ほう、意外と早くきたな」
扉の先、王の間の玉座に俺はいた。
漆黒の鎧に身をまとったそいつはふてぶてしい態度で玉座に踏ん反り返る様に座っている。あれが俺とはにわかにも信じがたいな。
「俺には優秀な仲間がいるもんでね。意外とすんなり来れたぜ」
「くくく、その割には消耗しているようだがな」
ちっ、流石に見透かされているか。
今の俺はキング達のせいで魔力と体力共にそこそこ消耗してしまっている。
しかしその程度で諦めるわけにはいかない。
「どれ……ここまで来たことを讃え、俺が直々に捻り潰してやろう」
もう一人の俺、鎧姿のジークは玉座から立ち上がり俺と相対す。
圧倒的な強者のオーラ。俺ってこんなおっかない見た目だったんだな。
奴からは膨大な魔力と共になにやら『赤黒いオーラ』の様なものが体から放たれている。
あれは見覚えがある。
確かゴルディオと戦った時に同じオーラが俺の体から出てきて、物凄い力が溢れてきたんだ。
今ジークから放たれる赤黒いオーラの量はあの時の比ではない。身体中が赤いオーラで覆いつくされるほどだ。
俺は気になってそのオーラを俺の能力『共感覚《シナスタジア》』で覗く。
すると驚くべきことがわかった。
「そのオーラ……なるほど、てめえが原因か」
「くく、今更気づいたって遅えよ」
次の瞬間、ジークから放たれいた赤いオーラが急に意識を持ったかの様に動き出し、一つにまとまる。
まとまったそれはうねうねと形をかえかえ、やがて人の形へと変化を遂げる。
「ふうー! この姿になるのはいつぶりかねえ」
現れたのは赤黒い人型のナニカ。
筋骨隆々の上半身で下半身は煙の様になっていて存在しない。赤黒い体皮は頭部にまで及び、その皮膚からは赤黒いオーラが漏れ出している。
今までに見たどんな存在とも違うナニカ。
それが俺の体内に入っていたのだ。
「灯台下暗しってやつだな……まさかお前みたいのが体内にいたとは。いったいいつからだ?」
「最初っからさ。お前が魔法に目覚めたあの日、俺はお前の力で吸い寄せられて吸収された。その時からずっといつかお前の体を乗っ取ってやろうと画策していたのさ」
まさかあの時からずっといたとは。
通りで気づかないはずだ。
あの時は体に色々な異変が起きたからな。その時に紛れ込んでいたなら気づかないのも納得だ。
「お前が怒りに身を任せた時に体を奪えそうになったんだが結局失敗しちまった。もう無理かと思っていたんだがお前は自分から体を二つに分けてくれた。おかげでお前の精神力は半減、少し時間はかかったが俺様が乗っ取るのも超簡単だったぜ」
つまり俺の軽率な行いのせいってわけか。
くそっ、もう一人の俺は抗ったのだろう。己のうちから侵食されるナニカと戦っていたのだろう。
俺はそんなことなど知らずに国外へ行っていたのか……自分の愚かさが嫌になる。
「もうこの体は思い通りに動かせる様になった。後はお前に分け与えた魔力を返してもらえば俺様は完全体になる!」
「そんなことさせると思うか! こっちこそ俺の体を返してもらうぞ!!」
俺と奴は魔力を放出し牽制し合う、ぶつかり合う魔力はバチバチと火花を巻き起こし、広い王の間をも揺らす。
「我が名は憤怒《ラース》! 貴様を倒し食う者の名だ!」
俺の体を乗っ取ったナニカ、ラースが叫ぶ。
てめえが何者かは知らんが、全部返してもらう!
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