スキル「共感覚」のおかげで最強の魔法使いになったので魔人を集めて魔王になることにしました 〜最恐魔王の手さぐり建国ライフ!〜

熊乃げん骨

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第七章 憤怒の果てに

第11話 麒麟

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『ゲッ……コォッ!!』

ヴォジャノーイの口からものすごい勢いで水の塊が放たれラースを襲う。
ラースはそれをぶん殴って粉々に打ち消す。あまりダメージは与えられてないみたいだがそれでいい。

今大事なのは2対1の状況をひっくり返すことだ。そうすればもう一人の俺を正気に戻す隙が生まれるかもしれない。

「頼むぞヴォジャノーイ!」
『ゲコオ!』

ちなみに精霊魔法は魔力を消費しない。
魔力を支払わずこれだけの力を行使できるなんて破格のコストパフォーマンスだ。

しかし精霊魔法にももちろん欠点はある。

それは時間制限。
精霊魔法は決まった時間しか維持できず、その時間を過ぎると次の日まで再び使うことができないのだ。

この時間は精霊との絆により増減する。
ヴォジャノーイと付き合いの長い最果ての村の村長は2時間以上召喚できるらしいのだが、まだ付き合って日の浅い俺は10分くらいしか召喚できない。

だから悠長にしている時間はない。
残されている時間は少ないんだ、一気に決める!

「雲より出でよ白き霊獣

空に雷、地に光

天を崩し、地を裂く者よ

万里を駆け抜けその身を晒せ

かの者の名は……麒麟!!」

俺の詠唱が終わると周囲に白い霧が立ち込める。そしてその靄《もや》の中より馬のような生き物が姿を現す。
額には長く美しい角が生えており、体毛は青白い雷のような色をしている。

伝説上の生き物、麒麟きりん。雷と大地二つの相反する属性を持った精霊だ。

こいつは陰陽京での一件が終わった時、たまたま廃墟の中にポツンと立っているのを発見し契約した。

おそらくこいつと契約していたものが死んで行くあてをなくしてしまったのだろう。陰陽師の連中に渡すのも勿体無く感じたので俺が契約したのだ。

まだ出会って日が浅いのでほんの3分くらいしか召喚出来ないがその力は強力。
こいつを使って一気に片をつける!

「頼んだぞ麒麟!ー」
『ブルルッ!』

俺は麒麟にまたがり、もう一人の俺めがけ突進する。
ヴォジャノーイがラースを引きつけている今が最大のチャンスだ!

「いっけえぇっ!!」

麒麟は体中に雷を纏って駆ける。
もう一人の俺は魔法をいくつか飛ばしてくるが、麒麟はそれを全て角で払いのける。

「ちい!」

ラースは俺達の攻撃に気づき焦りの声を上げるがもう遅い。
奴が助けに来るよりも早く麒麟の角は相手を貫く。

「そこっ!」

魔法を放った隙を突き、麒麟は雷を纏った角を胸に突き刺す。
麒麟の上に乗った俺にも激突した衝撃が伝わり、攻撃が命中した事を知らせてくれる。

「よしっ!」

俺は麒麟から飛び降りもう一人の俺に近づく。
今の内にラースと俺のリンクを切り離すのだ。そうすればこちらの方が有利になる。

俺の贈呈物《ギフト》『共感覚《シナスタジア》を使い、俺はもう一人の俺の心の中に侵入をしようとする。
しかし次の瞬間。

「くく、勝てたと思ったか?」

胸部を刺されたはずのもう一人の俺がグルンと俺の方を向き、笑う。
いやよく見たら刺さっていない。麒麟の角はガッチリと両手で掴まれ胸の数センチ手前で止まっていた。

「な……!」

「残念だったな、オレは自由に外に出たり体内に戻ったりすることが出来んだよ。分断なんて最初から不可能ってわけだ」

先ほどの焦った様子は演技だったというわけか。
まさかそこまで知恵が回るとは。

『ブルル!』

麒麟は掴まれた角を抜こうと頭を動かすが、ラースの力を得ているもう一人の俺の握力は凄まじく全く抜ける気配がない。

「ウルせえ馬だな。少し黙ってろ!」

ラースは角を掴んだまま両手を地面に振り下ろし麒麟の首をへし折る。
あまりの衝撃に麒麟は細かい光の粒子となり消えさってしまう。こうなってしまったら明日にならないと再召喚は出来ない。

チラリとヴォジャノーイの方を見ると、雷の槍がヴォジャノーイに突き刺さり身動きが取れなくなっている。
どうやら戦況は振り出し、また2対1に戻ってしまった。

「くだらねえ精霊魔法もここまでのようだな。大人しく吸収されろや」

ラースは再びもう一人の俺の体から出てきて、その赤く太い腕で俺の襟を掴み軽々と持ち上げる。
正直もう打つ手は無い。ゴーレムウェポンは手元に無いし精霊魔法も敗れた。

ここまで、なの……か……?

「さあてテメエの魔力をいただき……ん?」

やられると思った次の瞬間、王の間の扉が開き誰かが入ってくる。
いったい誰だ?

「テメエ、いったい何のようだ?」

俺は頑張って首を回しその人物を確認する。
入って来たのは……

「おやおや何とか間に合ったようですね」

眼鏡をクイ、と上げながら魔王国の頭脳、幹部のシェン=レンは言った。
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