17才。

猫野 尻尾

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第14話:季節には少し遠い海。

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季節はもう9月に入っていた。
それでもまだ泳ぎに行けるくらいの暑さは残っていた。
僕は忘れていたことを思い出したように凛とふたりで海に出かけた。
 
近くに恋人同士が遊べるような気の利いた海水浴場がなかったので 
船に乗って島に渡ることにした。
その島には潮が浜って綺麗な浜辺と海の家があった。

僕は小・中学の頃、何度か行ったことがあった。
凛に聞いたら、はじめてだと思う。
でも、その島の潮が浜にたどり着くには30分以上かけて山越えを
しなくちゃいけない。 

その島にも定期的に渡し船が出てるんだけど、それに乗るとどうしても
山越えをする羽目になる。

以前、地方の情報誌に潮が浜の海の家のことが載っていて 夏は、漁師さん
が船でもって潮が浜まで直通で浜に横付けしてくれるって記事を
読んだことがあった。 

しかも夕方も迎えにきてくれるから往復とも彼女に山越えをさせなくていい。
僕はすぐ海の家に電話すると営業はまだやってるって話だった。
だからすぐ釣り船をキープした。

もう船を予約してしまったからには当日は天気になってくれないと困る。 
せっかくのバカンス。
雨なんかフラてた日には、また車の中でイチャイチャするしかない。

はたして当日・・・てるてる坊主がビビるくらい見事な快晴だった。 
まるでふたりに「思う存分遊んできなさい」と神様が言ってるくれてる
ようだった。

僕は朝一で凛を迎えに行った。 
そして、漁師さんの船で無事潮が浜にたどり着いた。
僕たち以外にひと組のカップルと同じ船だった。

島に着いたふたりは、さっそく海の家のよさそうな場所を借りた。
そこが今日のふたりのエリアだ。

「もっと、たくさん来てると思ってた」

凛はまぶしそうに砂浜のほうを見てそう言った。

「もう9月だからね、ピークはとっくに過ぎてるんだよ」
「来てるのは家族ずれもいそうだけど、ほとんどカップルだね」 
「僕たちが一番似合いのカップルだよ」

「だね」

凛は嬉しそうに笑った。

「このくらいがいいね、人だらけで団子状態になってる海水浴場って 
ニュースとかで見るけど 、あ~言うの、やだね」

「季節的にどうかなって思ったけど、丁度よかったかもね」

「でも、こんないいとこあったんだ」

「凛はこの島、知らないんだよね?」

「知らなかった」

「この島は昔から幽霊の片袖伝説とか巨人の足跡とかがあるって有名・・・
でもないかな・・・ま、そんなとこ」
「で、この場所は潮が浜って海水浴場」

「へ~そうなんだ」

たいして関心ないかな。 
もしかして女子高生って僕くらいの歳の人の話って退屈なのかな・・・
今更だけどって僕は思った。

つづく。


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