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4.孤児院子供組side

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孤児院子供組side

「今日領土取りするんだってー!」

1人の子供が発した言葉に聞いた全ての子供は真っ青になる。
「本当死ぬ気でやらないと。」

領土取りの勝敗はもうすでに決まっているようなものだから関係ない。問題は領土取りを死ぬ気でやってカルツァの期待に応えないと悲惨な事が発生する事だ。


その後しばらくして領土取りの陣営が発表になったがそこにはしゃぐような子供は存在しなかった。

「うわ、俺黒陣営だわ。死ぬきで働かないと。」
「えー、私なんて白陣営よ。死なないように注意しないと。」
「お互いがんばろうぜ。」
「ええ。領土取りが終わった後にまた会えると良いわね」

そこには遺言のようなものを仲間に言う者などまるで本物の戦場に行く戦士のそれがあった。



黒陣営の苦難は割とすぐに始まった。
まず始めの旗を置く場所だ。カルツァを含め黒陣営全員が集まっているが、ここで下手な発言をすればカルツァの怒りを買ってしまうため誰も発言出来ない。

気まずい雰囲気が場を支配する。

「…旗を屋根のに置くのはどうだ?」

カルツァのその一言でその場は収束したように思えた。

だが実際は旗を屋根に置くと決まった後カルツァが何処かに消え、子供たちは野生の猿と旗を巡った鬼ごっこをする羽目になった。

「これはカルツァからのお仕置きだ。」
1人の子供が呟けば全員が青白い顔でブンブン頭を縦に振る。

その後は何とか領土取りが始まる前に旗を猿から取り返し、ホッとしていた黒陣営。


だがそれが甘かったと気がついたのは始まってすぐの事だ。

カルツァは孤児院にかけられている結界に穴を開け、魔獣を院内に入れたのだ。
当の本人は見当たらず、院内は阿弥陀経になっていた。

「くそっ!俺はもう死ぬのか!」
「いや、何が何でも生き残るぞ!」

この孤児院の子供たちは4歳から10歳までの'子供'である。その子供たちが歴戦の猛者のように殺気をちりばめながら魔獣を討伐していく姿にこの世界、いやカルツァの怒りのほどが見えるだろう。

「よし!あらかた魔獣は倒し終わったな!結界の修復を急げ!」

年長者の声を希望として力を振り絞る。

「結界はりおわったぞ!」
「コッチも魔獣討伐完了だー!」
「よし!俺ら生きてる!」


魔獣を倒し終わった頃にはもう領土取りの制限時間のすぐで、また疲労から今から領土取りをする体力気力は残っていなかった。

「これって引き分けになるのか?」
「んーどうなんだろうな」
「あ!あれ見て!孤児院が真っ黒になっているよ!」
「あんな事をする奴は1人しかいない、カルツァの仕業か」
「でもどうやって?」

実はカルツァが寝た後、寝相によりインクの入っていたバケツがひっくり返ったのだ。



と、言う事で黒陣営の勝利となったが、領地取りの結果に喜ぶ者はおらず皆んな己が生きながらえた事に嗚咽を漏らしていて喜んでいたのであった。
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