上 下
5 / 6

5.刺身定食

しおりを挟む
毎日なんだかんだと過ごしつつ10歳を迎えた俺。
これまで孤児院では色々な事にあった。例えば誰かが誤って孤児院を放火したり、有毒ガスまきちらかされたり

…よく俺生きてたな?

まあ、俺も晴れて10歳、年長者となったからには年下の面倒の一つでも見るか。…と考えていたがどうやら魔族の子供っていうものは面倒を見なくても大丈夫らしい。

と、言うのも孤児院全体が軍隊のようであり、年下の者たちも当然といった風に物事をこなしていくのだ。

いや、逆に恐いわ。

だから俺は収納ボックスに入っているご飯を渡すくらいしかしていない。

あー、言い忘れていたが俺の収納ボックスは前世で食べた物を含めて、食べた事のある物が収納されている。しかも欲しい分だけ取り出せるハイスペック仕様だ。しかし、出し入れができるのは食べ物だけであり、物を収納ボックスにしまうことが出来ない。

「今日は何を食べるかなー刺身とか良いな。」

ガソゴソと収納ボックスを漁り、刺身定食を取り出す。
勿論孤児院のみんなに配る分も取り出す。

「あ、リートリヒ、これ皆んなに配ってくれ」

孤児院は出入りが激しいため全体の人数がちょくちょく変化する。その為、二十個だけ刺身定食を置いておく。

「あ、ああ、分かった。」

同い年のリートリヒは10歳になってぐんぐん成長している。もう15歳の人と見分けがつかないくらいだ。

「悪いな。じゃあ刺身定食を配るの頼んだ。」

「おう」

いやーしっかしリートリヒもイケメンに育ったもんだ。無口の騎士っていう感じでさぞや女にモテていることだろう。それもこれも俺がリートリヒにご飯を分けていたからだろう。

この美貌は俺が作ったんだ!

ま、この調子で子供達にはぐんぐん育って欲しい。

「俺は定食を食べるか!」

まず手に取ったのは味噌汁だ。豆腐とワカメの王道味噌汁だ。体が温まってくる。刺身はぷりっぷりの新鮮な物を使用していて醤油につけてそのまま食べるのも良いが、ご飯と一緒にかき込むのが1番好きだ。その後にまた味噌汁。
その後、醤油をポン酢に変えても食べる。ポン酢だとまた違った味わいになり飽きることがない。最後に残ったご飯と少量の刺身は味噌汁に使われていた出汁たっぷりのお茶漬けにする。

「…ふぅ美味かった。あ、リートリヒにお茶漬け用の出汁渡してないや。ま、いっか。」

快晴の空をぼんやりと眺めながらご飯の余韻に浸るのであった。
しおりを挟む

処理中です...