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31 間違った熱気
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大聖堂内は一気にどよめきに溢れた。
第5形態のラグナレク。
確かに俺達が石碑で遭遇した奴よりも更に人の姿に近い。と言うかもうほぼ人型だ。逆を言えば人間が3mぐらいの大きさになっている様な見た目。勿論あの気持ち悪い質感は変わらないけど、間違いなくこれまで見た中では最も人に近い。
「第5形態って、1番強い……って事か?」
「何だコレ。俺が見た気持ち悪いモンスターの方がデカくて強そうだったぞ」
「おいおい、確か第4形態の奴でも七聖天が3人向かってるとか言ったよな⁉ そんな化け物をどうやって俺達が倒すんだよ!」
「そりゃそうだ! こんなどこの馬の骨とも分からない連中じゃ到底無理だろうよ! まともなスキル覚醒者すらいないのがオチだろ!」
「テメェだって人の事言えないだろうがッ!」
先程まで余裕のあった冒険者達が瞬く間に困惑している。まぁ無理もない。まさか石碑の奴より強い奴と出くわすとは想定外だ。
「確かにフィンスターを襲っているラグナレクは1番強い。そして七聖天は愚か他の騎士魔法団ですら応援が何時来るかも分からない。加えて、前回の奴の襲撃によって前線で奮闘していた団員達の3分の2が犠牲となっている。
だからラグナレクの次の攻撃を凌ぎ、奴を討伐出来るか否かは貴方達次第なのです」
「滅茶苦茶だろそんなの! 騎士団の奴らでさえそんな死んでる相手に相手に俺達が勝てる訳ないだろ!」
「そうだそうだ! こんな無駄に命を捨てる様な事なら俺は抜けさせてもらう!」
そう言った男が大聖堂の出入口に引き返そうとしたが、直後目の前に魔法団のローブを纏った1人の女性が現れ男の行く手を阻んだ。
「――何処に行くのですか?」
「な、なんだお前は突然! おい、そこを退け!」
「フフフフ、それは断るわ。男のくせに今更逃げ出すつもり?」
「なんだとッ⁉ 誰だこの生意気な女は! 悪いがそんなを挑発しても俺は乗らん。もう帰るからさっさとそこを退け」
男が威圧的な口調でそう言った瞬間、魔法団の女性は手にしていた杖を輝かせ魔法を放った。
「“ストーン・ロック”」
「ぐわッ⁉」
女性の魔法で突如上から大きな岩の塊が男に落下した。下敷きとなった男はいとも簡単に押し潰され、必死で重さに耐えながら藻掻いているが岩はビクともしていない。
「まだイリウム様の話しの途中よ。それにもうこの討伐から抜けるなんて有り得ない。まさかとは思うけど、この下敷きになっている男以外にも今更逃げ出そうなんて考えている者はいないわよね――?」
魔法団の女性から発せれた刺さる様な気迫に圧倒され、他の冒険者達はもう何も言えなくなっていた。場の空気が殺伐としたものに変わった刹那、再びイリウム様が口を開いた。
「止めなさいリリアン。貴重な戦力が減ってしまいます」
「イリウム様……。分かりました」
注意されたリリアンという女の人は少し納得いかない表情を浮かべていたが、ゆっくりと静かに杖を下ろした。するとそれと同時、冒険者達が何やらザワザワと騒ぎ始めた。
「リリアンだって? その名前どこかで聞いた覚えが……」
「もしかしてあの有名な魔法団の団長じゃないか?」
「団長のリリアンと言えば、オレオールで1、2を争う魔法使いだろ⁉」
「馬鹿!オレオールどころかリューティス王国内でだよ!
リリアン・ゾー、彼女はあの王2級魔法の使い手でもある最強の魔法使いだ!その実力は七聖天にも及ぶとの噂もある程だ!」
「何⁉ そんな凄い者がいるのか。だとすれば彼女と共に戦えば俺達にも勝機がある。手柄を上げて報酬も貰えるかもしれないな!」
良くか悪くか、正解か不正解か。彼らにとってどちらの選択が正しいのかは定かじゃないが、少し前までの重い空気が一転して前向きになったのは確かだった。
そして偶然か否か――。
空気が明らか変わったこの瞬間、イリウム様がこの場の士気を一気に高めた。
「その通りだ皆の者! 確かに多くの犠牲が出てはいるが、この第五形態のラグナレクの攻撃は前回1度防ぎ切っている!そしてその時に彼女、リリアンも最前線で討伐に加わり王2級魔法をしかと奴に食らわせているのだ!」
「「おおぉぉ……!」」
「再び奴はこのフィンスターを攻撃してくるだろうが、1度退いた奴は以前よりも弱っている筈だ! 最強の魔法使いであるリリアンと共に、ここにいる冒険者が全員で結託すれば、決してラグナレク討伐は不可能でないッ!
もし個々に手柄を上げなくとも、この場にいる全員で見事奴を討伐した際には全員に同じだけの報酬を与える事も約束する! それも我々全王家からは勿論の事、更に私が直々に国王へ追加の報酬を手配しよう! 皆の力でラグナレクを倒そうではないか――!!」
「「うおぉぉぉぉぉぉッ!!」」
大聖堂は一瞬にして熱気と歓喜に溢れ返った。
「凄ぇ歓声だな」
イリウム様の大演説によって冒険者達皆がやる気満々だ。凄まじい歓声や雄叫びが響く中、俺は不敵に笑うイリウム様の表情に違和感を覚えていた。
「なぁエミリア、今の本当だと思うか?」
「ううん。私はとても信じられない……。だって私がいたエンビア様の魔法団だって全く歯が立たなかったんだよ。しかも洞窟にいたあのラグナレクは恐らく第2形態かそれ以下じゃないかな?
その相手でさえ、エンビア様の王2級魔法でも掠り傷すら与えられなかったのに、あれ以上のラグナレクを王2級魔法で倒すなんて絶対に無理だと思う」
実際にラグナレクと対峙した俺とエミリアだから分かる事。
「やっぱそうだよな。俺も全く同意見だ。洞窟の4つ頭でさえ倒せない騎士魔法団レベルの奴らが束になったとしても、到底この第5形態とやらを倒せる訳がない」
普通に考えれば分かる事だ。神器に選ばれた王国の七聖天が動いている時点でそれ相応の相手。確実に脅威だ。だが今回のこの異例とも言える事態やら報酬やら雰囲気やらが変に相まっている所に、今のイリウム様の誘導で完全に皆の判断が狂った。
そんな事を思っていた次の瞬間、今しがた騒ぎを起こしていたリリアンという魔法団の女性が突如俺達の前に現れた。
「フフフフ、貴方達の言う通り。あのラグナレクを倒すなんて不可能に近いわよ」
「……!」
「あ、お久しぶりです、リリアン様!」
彼女が突如目の前に現れた事にも些か驚いたが、それよりもエミリアの反応に驚いた。
「久しぶりね、エミリア」
「知り合いなのか?」
「うん。知り合いというか……無能な私をノーバディの討伐に参加させてくれたのがリリアン様なの」
「へぇ。じゃあこの人がエミリアを危険な目に遭わせた黒幕って事か」
「フフフフ。これはこれは厳しい言葉を貰ったわね。エンビアの魔法団壊滅状態と聞いていたから心配でしたけど、兎も角貴方だけでも無事で良かったわエミリア」
何処か掴めないこのリリアンという女に、俺は不信感が拭えなかった。心配してる様な事を言ったが、元はと言えばお前が原因だろ。
「はい。こちらにいるグリムに助けて頂いて何とか無事でした」
「良かったわ。それにしても、まさか貴方が“白銀のモンスター”と“指名手配の青年”と一緒にいるなんて思わなかったわ。しかもこのラグナレクの討伐に参加しているなんて」
「「……⁉」」
ヤバい。俺とハクの事がバレている――。
第5形態のラグナレク。
確かに俺達が石碑で遭遇した奴よりも更に人の姿に近い。と言うかもうほぼ人型だ。逆を言えば人間が3mぐらいの大きさになっている様な見た目。勿論あの気持ち悪い質感は変わらないけど、間違いなくこれまで見た中では最も人に近い。
「第5形態って、1番強い……って事か?」
「何だコレ。俺が見た気持ち悪いモンスターの方がデカくて強そうだったぞ」
「おいおい、確か第4形態の奴でも七聖天が3人向かってるとか言ったよな⁉ そんな化け物をどうやって俺達が倒すんだよ!」
「そりゃそうだ! こんなどこの馬の骨とも分からない連中じゃ到底無理だろうよ! まともなスキル覚醒者すらいないのがオチだろ!」
「テメェだって人の事言えないだろうがッ!」
先程まで余裕のあった冒険者達が瞬く間に困惑している。まぁ無理もない。まさか石碑の奴より強い奴と出くわすとは想定外だ。
「確かにフィンスターを襲っているラグナレクは1番強い。そして七聖天は愚か他の騎士魔法団ですら応援が何時来るかも分からない。加えて、前回の奴の襲撃によって前線で奮闘していた団員達の3分の2が犠牲となっている。
だからラグナレクの次の攻撃を凌ぎ、奴を討伐出来るか否かは貴方達次第なのです」
「滅茶苦茶だろそんなの! 騎士団の奴らでさえそんな死んでる相手に相手に俺達が勝てる訳ないだろ!」
「そうだそうだ! こんな無駄に命を捨てる様な事なら俺は抜けさせてもらう!」
そう言った男が大聖堂の出入口に引き返そうとしたが、直後目の前に魔法団のローブを纏った1人の女性が現れ男の行く手を阻んだ。
「――何処に行くのですか?」
「な、なんだお前は突然! おい、そこを退け!」
「フフフフ、それは断るわ。男のくせに今更逃げ出すつもり?」
「なんだとッ⁉ 誰だこの生意気な女は! 悪いがそんなを挑発しても俺は乗らん。もう帰るからさっさとそこを退け」
男が威圧的な口調でそう言った瞬間、魔法団の女性は手にしていた杖を輝かせ魔法を放った。
「“ストーン・ロック”」
「ぐわッ⁉」
女性の魔法で突如上から大きな岩の塊が男に落下した。下敷きとなった男はいとも簡単に押し潰され、必死で重さに耐えながら藻掻いているが岩はビクともしていない。
「まだイリウム様の話しの途中よ。それにもうこの討伐から抜けるなんて有り得ない。まさかとは思うけど、この下敷きになっている男以外にも今更逃げ出そうなんて考えている者はいないわよね――?」
魔法団の女性から発せれた刺さる様な気迫に圧倒され、他の冒険者達はもう何も言えなくなっていた。場の空気が殺伐としたものに変わった刹那、再びイリウム様が口を開いた。
「止めなさいリリアン。貴重な戦力が減ってしまいます」
「イリウム様……。分かりました」
注意されたリリアンという女の人は少し納得いかない表情を浮かべていたが、ゆっくりと静かに杖を下ろした。するとそれと同時、冒険者達が何やらザワザワと騒ぎ始めた。
「リリアンだって? その名前どこかで聞いた覚えが……」
「もしかしてあの有名な魔法団の団長じゃないか?」
「団長のリリアンと言えば、オレオールで1、2を争う魔法使いだろ⁉」
「馬鹿!オレオールどころかリューティス王国内でだよ!
リリアン・ゾー、彼女はあの王2級魔法の使い手でもある最強の魔法使いだ!その実力は七聖天にも及ぶとの噂もある程だ!」
「何⁉ そんな凄い者がいるのか。だとすれば彼女と共に戦えば俺達にも勝機がある。手柄を上げて報酬も貰えるかもしれないな!」
良くか悪くか、正解か不正解か。彼らにとってどちらの選択が正しいのかは定かじゃないが、少し前までの重い空気が一転して前向きになったのは確かだった。
そして偶然か否か――。
空気が明らか変わったこの瞬間、イリウム様がこの場の士気を一気に高めた。
「その通りだ皆の者! 確かに多くの犠牲が出てはいるが、この第五形態のラグナレクの攻撃は前回1度防ぎ切っている!そしてその時に彼女、リリアンも最前線で討伐に加わり王2級魔法をしかと奴に食らわせているのだ!」
「「おおぉぉ……!」」
「再び奴はこのフィンスターを攻撃してくるだろうが、1度退いた奴は以前よりも弱っている筈だ! 最強の魔法使いであるリリアンと共に、ここにいる冒険者が全員で結託すれば、決してラグナレク討伐は不可能でないッ!
もし個々に手柄を上げなくとも、この場にいる全員で見事奴を討伐した際には全員に同じだけの報酬を与える事も約束する! それも我々全王家からは勿論の事、更に私が直々に国王へ追加の報酬を手配しよう! 皆の力でラグナレクを倒そうではないか――!!」
「「うおぉぉぉぉぉぉッ!!」」
大聖堂は一瞬にして熱気と歓喜に溢れ返った。
「凄ぇ歓声だな」
イリウム様の大演説によって冒険者達皆がやる気満々だ。凄まじい歓声や雄叫びが響く中、俺は不敵に笑うイリウム様の表情に違和感を覚えていた。
「なぁエミリア、今の本当だと思うか?」
「ううん。私はとても信じられない……。だって私がいたエンビア様の魔法団だって全く歯が立たなかったんだよ。しかも洞窟にいたあのラグナレクは恐らく第2形態かそれ以下じゃないかな?
その相手でさえ、エンビア様の王2級魔法でも掠り傷すら与えられなかったのに、あれ以上のラグナレクを王2級魔法で倒すなんて絶対に無理だと思う」
実際にラグナレクと対峙した俺とエミリアだから分かる事。
「やっぱそうだよな。俺も全く同意見だ。洞窟の4つ頭でさえ倒せない騎士魔法団レベルの奴らが束になったとしても、到底この第5形態とやらを倒せる訳がない」
普通に考えれば分かる事だ。神器に選ばれた王国の七聖天が動いている時点でそれ相応の相手。確実に脅威だ。だが今回のこの異例とも言える事態やら報酬やら雰囲気やらが変に相まっている所に、今のイリウム様の誘導で完全に皆の判断が狂った。
そんな事を思っていた次の瞬間、今しがた騒ぎを起こしていたリリアンという魔法団の女性が突如俺達の前に現れた。
「フフフフ、貴方達の言う通り。あのラグナレクを倒すなんて不可能に近いわよ」
「……!」
「あ、お久しぶりです、リリアン様!」
彼女が突如目の前に現れた事にも些か驚いたが、それよりもエミリアの反応に驚いた。
「久しぶりね、エミリア」
「知り合いなのか?」
「うん。知り合いというか……無能な私をノーバディの討伐に参加させてくれたのがリリアン様なの」
「へぇ。じゃあこの人がエミリアを危険な目に遭わせた黒幕って事か」
「フフフフ。これはこれは厳しい言葉を貰ったわね。エンビアの魔法団壊滅状態と聞いていたから心配でしたけど、兎も角貴方だけでも無事で良かったわエミリア」
何処か掴めないこのリリアンという女に、俺は不信感が拭えなかった。心配してる様な事を言ったが、元はと言えばお前が原因だろ。
「はい。こちらにいるグリムに助けて頂いて何とか無事でした」
「良かったわ。それにしても、まさか貴方が“白銀のモンスター”と“指名手配の青年”と一緒にいるなんて思わなかったわ。しかもこのラグナレクの討伐に参加しているなんて」
「「……⁉」」
ヤバい。俺とハクの事がバレている――。
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