スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ

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ユリマ・サーゲノムの正体

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♢♦♢
 
~フィンスター・大聖堂~

 ラグナレクの討伐説明を終えた大聖堂内は、先程の盛り上がりが嘘かの如く静まり返っていた。

 事を告げ終えたイリウム様や執事、そして明日のラグナレクの討伐について説明を受けた大勢の冒険者達は、その熱気が冷めやらぬまま皆いつの間にか大聖堂を後にし、明日の討伐まで各々の時間を過ごすのであった。

 グリム達が1番最後に大聖堂を後にすると、そこはもう誰もいない無人の聖堂。物音1つしない静かな空間の中、とある一室だけ眩い光が灯されていた――。
 
「……もう誰も残っていませんね。明日が楽しみなんていう感覚は久しぶりです。フフフ」

 光の灯されている場所は、王家ルートヘルム家の当主であるイリウム様の部屋である。この大聖堂もまたイリウム様の所有する物。
見るからに高価そうなテーブルやソファが置いてあり、部屋にあるどれもが煌びやかで気品ある装飾が施されていた。

 この部屋の奥には一際存在感のある大きな椅子が1つ。誰が見ても、この椅子には最も地位の高い者が腰を掛ける場所であろう事が伺えた。
 
 故に、そこに座るのは勿論ルートヘルム家の当主であるイリウム様……ではなく、何故か魔法団の団長であるリリアン・ゾーがその椅子に深く鎮座していた――。

「未だに私にはあの者達がとてもラグナレク討伐の戦力になるとは思えないのですが、何はともあれ全て“ユリマ様”の計画通り順調に進んでおりますね」
「勿論です。私の計画に狂いは生じませんから。それにしても、本当に純粋で真面目な子達ですねグリムさん達は。
念には念をと思いわざわざ白銀のモンスターの情報までチラつかせましたが、その心配もなかった様です。グリムさん達では他の有象無象と違い、目の前の報酬だけに食いつく事はないでしょうからね」

 そう話すリリアンとイリウム様……いや、今は当主であった筈のイリウム様が片膝を付き、目の前の椅子に座るリリアンこと“ユリマ・サーゲノム”と言葉を交わしている。

 彼女は他でもないリューティス王国が誇る七聖天の1人である、あのユリマ・サーゲノム。座る彼女の膝の上では魔道賢書ノアズが淡い輝きを発している。そして彼女のその姿は、グリム達に声を掛けたユリマというあの王家の者ともまた“同一”であった。

 ユリマは下ろしていた紫色の綺麗な長い髪を結ぶと、横に置かれていたカップを手に取り飲み物を一口飲んだ。

「彼らや他の冒険者達にも最後までバレませんでしたね」
「ええ。他の七聖天の方々と違い、私は元々公にあまり顔を出していませんからね。グリムさん達も流石に私の顔を知らなかった様です。私の事を元から知っているか余程勘が良くない限り、名前だけで私との正体を一致させるのはほぼ不可能。
まぁそれ以前に、私は既に“視て”いましたから絶対にバレませんけどね。フフフ」

 七聖天のユリマ。魔法団団長のリリアン。そして王家の者ユリマと、彼女は幾つもの名前と姿に変化する神出鬼没な謎多き女。 そんな彼女の本当の狙いや思惑など、この時はまだ到底彼女以外に知る由もなかった。

「ユリマ様、明朝のラグナレク討伐にはユリマ様も加わるのですか?」
「それは勿論です」
「そうですか。それとラグナレクは勿論の事ですが、国王様より直々に命を出されているあの少年と白銀のモンスターの事はこのままで良いので?」

 イリウムは心配そうな表情でユリマに問う。すると彼女は、優しくもあり何処か冷たさも感じる笑みと共に口を開いた。

「フフフ。そんな心配にならずとも大丈夫です。何時も言っているでしょう。私には未来が視えているのですから問題ありません。相手が例え国王であったとしてもね――。

それに、どちらにせよ前回のラグナレクの襲撃はあの状況では誰が来ても防げなかった。ただ気が済むまで暴れさせて帰らせる手段しかね……。確かに国王はグリム・レオハートと白銀のモンスターを始末しようとしていますが、ただ彼を始末するよりラグナレクを相手にさせた方が多くの者にメリットがあるでしょう。始末するのはその後でも問題ありません」
「分かりました。私は……これまで当然ユリマ様の事を1度たりとも疑った事はございません。
ですが、本当にあの若い青年達なんかがラグナレクを相手に出来るのですか? まともな武器も装備していませんでしたよ。
あれではドミナトルを撃ち込む為の僅かな隙すら作れないままやられてしまうのでは……」

 イリウムが疑ってしまうのも無理はない。神器を与えられ、未来が視えていると言うユリマの発言が外れた事など、確かにイリウムが知る限りでも1度もなかった。だが今回は初めてと言ってもいい程の異例な状況。

 これまで微塵の疑いも抱かなかったイリウムが、グリム達のその若さや手にする最弱の武器を目の当たりにし、初めて一抹の不安を抱いてしまっていたのだった。

「大丈夫ですよイリウム。彼らは貴方が思っている以上に強い存在です。今日集まった冒険者達が束になっても勝てない程にね。
しかも明日は私も討伐に参加します。勿論この姿ではなくリリアンとしてですが、絶対にドミナトルを奴に食らわせるべく最善をつくしますよ。
グリムさん達の本気の力量を最も近くで拝見出来ますしね――」

 ユリマはそう言いながら再び笑みを浮かべていた。

「そうですね……。ユリマ様が言うなら間違いないでしょう。では私もこれから明日の討伐の準備に入ります。団員達とも再度明日の作戦を確認し合っておきたいので」
「分かりました。無理は禁物ですよ。必ず最前線にはあの冒険者達を配置しなさい。彼らは遅かれ早かれ“そうなる運命”ですから――」
「分かりました」

 立ち上がったイリウムはユリマに一礼をし、そのまま部屋を後にした。

 部屋の大きな窓。
 真っ暗な夜空に美しく輝く満月を見つめながらユリマは再び飲み物を口に運ぶと、月夜に照らされながら不敵に微笑んだ――。
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