スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ

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33 王国最大の神器

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 リリアンはそう言うと、自らも近くのソファに腰掛けながら説明を始めた。
 
「イリウム様の討伐説明を聞き終える前に抜けてしまったから、ここで私が“真実”を説明するわね。
先ず、実際にラグナレクと2度対峙した貴方達なら、その強さを十分分かっているわよね?」
「ああ」
「ラグナレクのは最早異次元の存在。奴らの魔力は凄まじく強大であり、私の渾身の王2級魔法でも全くのノーダメージだったわ」
「やっぱりな。じゃあお前達は今堂々と嘘を付きながら向こうにいる冒険者達を洗脳しているという訳か」
「洗脳なんて人聞き悪い言い方ねぇ。まぁ間違ってはいないけど、かと言って嘘も付いていないわ。前回だって大勢の団員が死に物狂いで奴の攻撃を防いだ事は事実。それで3分の2が犠牲になった事もね……。

強いてさっきのイリウム様の発言を“正確”に言うとすれば、私が王2級魔法を放ったけど全く無傷だったという事と、奴は致命的なダメージを受けて退いた訳ではなく、ただただ多くの人間を食らって満足したのか気が済んだのかは分からないけれど、奴自らが勝手に何処かへ去って行っただけ……という感じかしらね」

 リリアンは不敵な笑みを浮かばせながらそう言った。何処までも信用出来ない奴らだ。

「成程、物は言いようって事か。イリウム様とやらも大した実力だ」
「フフフフ、そうね。でもフィンスターが奴に襲われた事も、こうして流れの冒険者や実力者を手あたり次第必要としているのもまた事実なのよ。
折角集めた人材に、これから“確実に死ぬと思うけど報酬の為に頑張ってくれ”なんて誰が言うのかしら」
「それもごもっともな意見だが、あんなレベルの連中じゃ何万人集めようとラグナレクは倒せない。無駄に死ぬだけだ」

 俺がそう言うと、リリアンは再び不敵な笑みを浮かべながら冷酷な目つきで言った。

「連中ならば丁度いいでしょ。今集まっている大半は野良の冒険者。まともに人助けなんてしていないし、寧ろ盗みや売買などに手を染めている罪人共。
救いようのない連中に最後のチャンスを与えてあげているのよ。ラグナレクの討伐で活躍出来してくれれば儲けもの。もしそうでなくても、連中は死ぬだけで王国に価値をもたらす。罪人がいなくなれば誰かが被害に遭う事もなくなり一石二鳥なのよね」

 リリアンの話を聞いた途端、怒りを露にしたエミリアは勢いよく立ち上がった。
 
「幾ら何でも酷すぎます! あの人達が罪人だからって……とてもそれは正しい行動だとは思えません! 今の話は私が皆さんに伝えて、直ぐにここから逃げてもらいます!」

 エミリアはその勢いのまま本当に部屋を出て行こうとしたが、俺はそんなエミリアの腕を掴んで止めた。

「え、ちょっとグリム……!」
「落ち着けエミリア。今の連中にこの事を伝えても誰も信じないぞ。完全にイリウム様に乗せられてるからな」
「でも……このままだと皆死んじゃうよ!」
「分かってる。でもまだ話の途中だ。例え連中がラグナレクを倒せなかったとしても、何か“他の意図”があるんじゃないのか? リリアン――」

 コイツらは良くも悪くも頭がキレる。あのラグナレク相手に数だけの兵隊など無意味。それを分かっていながら連中や俺達を集めたのにはまだ何か裏があっての事だろう。

「フフフフ、察しが良いわね。ちょっとゾクゾクしちゃったわ」
 「そんな冗談はいいからさっさと全て話せ。時間がないんだろう」
「ええそうよ。使えない冒険者達を大勢集めた理由は“時間稼ぎ”」

 時間稼ぎ……?

「リューティス王国には古来より、七聖天の持つ神器を遥かに凌ぐ伝説の神器が存在するの。その名も『滅神器・ドミナトル』――。
王国最大にして最強の威力を持つそのドミナトルの一撃は、大きな大国を一瞬で消し飛ばす程の威力と言われているわ」

 リリアンの思いがけない言葉に、俺達は少なからず困惑した。
 七聖天の神器以外に、王国にそんな兵器の様な物が存在するなんて今までに聞いた事がない。滅神器やドミナトルなんて言葉も初耳だぞ……。

「ちょ、ちょっと待て……。何だその滅神器とやらは」
「俺も知らんな」
「私も聞いた事がありません……」

 こういった知識に疎い俺やフーリンならまだしも、物知りなエミリアでさえも知らない様だ。

「勿論それが普通よ。これは王国の超機密情報。一般的に知られている七聖天が持つ神器は全部で7つ。

『神剣ジークフリード』
『雷槍グルニグ』
『聖杖シュトラール』
『大戦斧ニルドール』
『狩弓アルテミス』
『龍籠手ポルック』
『魔道賢書ノアズ』

そして『滅神器・ドミナトル』はリューティス王国が女神と関係を築いた際に1番最初にもたらされたと言われる、全神器を凌駕する最強の武器――。
しかし最強故、その発動までに時間と魔力を装填するのにかなり時間が掛かってしまうの。
前回奴が攻撃を仕掛けてきた時もこのドミナトルさえ間に合って使えていれば、あの第5形態のラグナレクでさえ1発で倒す事が出来た筈よ。

今回は遂にこのドミナトルを使う事が出来る。もう少しで装填が完了するから、連中と貴方達にはドミナトルが発動出来るその時まで時間を稼いでほしいの。勿論倒してくれるに越した事はないわ。
けれどラグナレクの討伐経験がある貴方達でも、今回は少し相手が悪いんじゃないかしら? 
だから協力してほしいのよ。お互いのメリットの為にね――」

 リリアンはそう言って静かに俺達を見てきた。

 どうやらそのドミナトルという滅神器の存在も本当らしいな……。そもそもコイツ等にはそんな嘘を付く理由もないし、向こうの連中に犠牲になってほしいというのも本音だろう。全て話しの辻褄が合うしな。

 ここまで聞かされたらどの道選択肢は1つ……。

「そうだな。アンタらの事情はどうでもいいが、やはりこの討伐には参加するぜ」
「フフフフ。嬉しい限りだわ」
「俺達はそのドミナトルの発動まで手を貸す。だが無事に討伐が終わった時には必ずハクの情報を渡してもらうからな」
「勿論。正直私にはそのワンちゃんの事情なんて興味ないし、知っていてもここで使う以外価値はないの。しっかりラグナレクを倒した際には全て教えてあげるわ。もし破ろうものなら貴方私に襲い掛かって来るつもりでしょ?」
「よく分かってるじゃないか」

 俺とリリアンは互いに腹を探る様に交換条件を出し合い、そして応じる事にした。想定外の成り行きとなったが、目の前に迫るラグナレクの討伐までは共同戦線。

 ハクの事さえ分かれば、俺達の今後の動き方も大きく変わってくるだろう。

「じゃあここら辺でお開きにしましょうか。私も案外忙しい身なの。ラグナレクの討伐は明朝。
フィンスターから少し離れた場所で奴を誘き出し、ドミナトルを撃ち込む段取りだから宜しくね。それに、ドミナトルの攻撃はこの1度きりだから絶対に失敗は許されないわ。装填が完了してから奴を誘き出すのもアリだけど、結局ドミナトルを奴に確実に撃ち込む為には隙が必要。って事で期待しているわよ、選ばれし呪われた世代の御三方――」

 リリアンはそう言い残し、部屋から去って行った。

「思ってもみない展開になったが、取り敢えず明日のラグナレクの討伐に集中しよう」
「そうだね。なんかもうそれしかないみたいだし」
「どれ程の強者か楽しみだな」
「バウワウ!」

 こうして、俺達は明日のラグナレク戦に向け一夜を明かしたのだった――。
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