スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ

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50 岩上の獣進国

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「ハク、俺は今の話で1つ気になったのだが」
「どうしたのフーリン」
「ラウアーという奴が1番強いと言ったな。ここにいるモロウも相当な強者だと感じ取れるが、それ以上なのか?」
「戦闘力だけなら我よりもラウアーの方が上であるぞ」
「そうか」

 フーリンはハクとモロウの言葉を聞き、納得したように頷いている。

 何だ。また相手が強者かどうか聞きたかっただけなのか。……と思った次の瞬間。

「だったら早く“行く”としようか。ラウアーの所に――」

 フーリンはそう言って、早くしろと言わんばかりに直ぐにでも出発する空気を醸し出した。

「ちょっと待ってフーリン。確かにラウアーの協力が必要な以上彼の所には行かないといけないけど、どうするつもりなの?」
「言っただろ。俺は難しい話が苦手だ。結論、俺がラウアーと“手合わせ”をすればこの問題は全て解決するだろう」

 予想外のフーリンの発言に、俺達は思わず言葉に詰まった。様々な理由を削ぎ落したこの問題のシンプルな答え。フーリンが何を考え何を思ったのかは定かじゃない。だが、フーリンのこの答えは1番の正解なのかもしれない。

「成程。一理あるな。其方のその発想は、ある意味ラウアー相手には最も効率のいい手段かもしれぬ。ただそれは勿論、それ相応の実力が其方に備わっている事が前提であるがな」
「俺は強者と手合わせするのが好きだ。しかし、それには当然己も強くあらねばならん。ハクの神器が俺の本来の力を覚醒させると言うなら、俺もまたその力を手にしなくてはいけない。
そうなれば同じ力を狙っているラウアーとは自ずとぶつかる事になるだろう。

奴は人間を恨んでいる。
そして、恨んでいる人間の中でも、ハクの力に選ばれた俺の事を更に恨んでいても可笑しくはない。
だとすれば、俺とラウアーが手合わせをする他に道はないだろう。互いに正々堂々真っ向から力比べをすれば、奴にも伝わる筈だ」

 正直驚いた。

 申し訳ないけど、まさかフーリンがそんな核心を突くとは思っていなかった。何時も槍は突いてるけどさ。

 俺と同じ様にエミリアとハクも驚いてるみたい。そりゃそうだよな。だってまさかフーリンがこんな事言い出すなんて予想外だから。

 でも、フーリンのお陰で全てが決まった。

「よし。フーリンがここまで言ってるなら行こうぜ皆」
「そうだね! どの道そのラウアーっていう獣人さんにも会わないといけないみたいだし」
「ねぇ、本当にラウアーと戦うつもりなの?」
「心配するなよハク。どうせそのラウアーって奴の所には行かないといけないんだろ? だったらもう向かうしかないし、別に戦うと決まった訳じゃない。

まぁ聞いてる感じだと穏やかじゃないから雲行きが怪しいけど、お前とモロウが話して納得してくれるならそれが1番。
万が一本当にやり合う事になってとしても俺達だっているし、モロウだっているから何とかなるだろ」

 ハクは心配そうな表情を浮かべながらも静かに頷き、モロウと俺達に「行こう」と力強く言った。ハクも決断した事でモロウも承諾し、俺達はラウアーがいるという祖の王国の南部に位置する“ウルル岩”へと向かった――。

**

~祖の王国・ウルル岩~

 祖の王国の南部に位置するウルル岩。
 このウルル岩は“岩”と名が付いている通りシンプルに岩なのだが、驚くのはその圧倒的な大きさ――。

 ウルル岩はこの大陸で最も大きいとされている1つのデカい岩だ。エミリアによるとウルル岩はその殆どが地表に埋まっている為、岩の一部しか地上に出ていないらしい。だがモロウに案内され、今俺達の目の前に聳え立っているこの巨大な岩は、とてもその全貌の一部とは思えない程の大きさだった。

「何だコレ」
「凄い大きさだね!」
「ラドット渓谷の岩より更にデカいな」

 天まで続いているんじゃないかと思うぐらいの大きな岩。少し見上げているだけで首が痛くなる。

 このウルル岩の高さは500m以上あり、横幅は約6000m程あるらしい。祖の王国は木々が豊かで緑の多い国であるが、見る限りこのウルル岩は雑草1つ生えていない。周りに緑が多いせいか、そこにドンと存在するウルル岩は特別な存在感を放っていた。

 地面から出た一部だけでこのデカさだ。しかも周囲は30㎞にも及ぶと言うんだから本当に驚く。大き過ぎだろ。村何個入るんだよ。

「ラウアーのいる“獣進国《じゅうしんこく》”はこの上だ――」

 そう。
 モロウやエミリアから聞いたウルル岩にも驚いたが、更に驚くのはこのウルル岩の上にまた“国”が存在しているという事だ。

 正確にはここは当たり前に祖の王国。だがさっき聞いた話の通り、来るべき日に再び自分の力で人間達を倒そうと考えたラウアーは、彼と同じ様に人間を許さない獣人族達を集めて同盟を結んだ。

 初めはまだ小規模の集まりであったが、次第に集まっていく獣人族が増え組織化。更にそこから月日と共に人数も拠点も大きくなり、何時からかこのウルル岩の上に新たに国が築き上げられたという。

 獣進国のトップはラウアー。そして彼らの目的、信念は後にも先にも1つだけ。

 “人間達に復讐する事”。

「既にラウアーは待ち構えている様であるな」
「うん。ラウアーの事だから私やグリム達が祖の王国に足を踏み入れた瞬間からもう気付いていたわ。何時かこの日が来るとも分かっていたからね」
「我の背に乗れ。一気に上まで行くぞ」

 モロウは今までの二足歩行から本来の獣の四足歩行へと体勢を変え、俺達は彼の背中に乗った。それを確認したモロウは力強く地を蹴ると、瞬く間に険しいウルル岩を駆け上がり一気に頂上まで登りつめた。

 ウルル岩の頂上、そこに威風堂々と存在していた獣進国。緑生い茂る祖の王国の光景とは一転し、とても殺伐とした光景ながらもそこにはしっかりと国が築かれていた。

 そして。
 
 犬、猫、獅子、虎、熊、鹿、猪。

 俺達が頂上に登すと、既にそこには多くの種類の獣人族が何十人も待ち構えていた。彼らは獣進国の入り口前で俺達の行く手を阻むかの如く立ち塞がり、全員が殺気を込めた鋭い視線を飛ばしてきている。

 物々しい空気が辺り全体を漂う中、漆黒の体毛を靡かせた一際存在感のある大きな獣人族が1歩前に出てきた。




「――実に数百年ぶりか……モロウ」
「ああ。相変わらずそうだな、ラウアー」

 ラウアーと呼ばれた大猩々の獣人族。

 コイツが獣進国のトップ、ラウアーか――。
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