スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ

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67 神の特別指導・6日目 & 来訪者

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~ローロマロ王国~

 所変わらず、イヴ達の特別指導という名の特訓が始まって6日目。

「やっと使える様になったか。ほら、もう1発撃ってみな」
「うん!」

 エネルギーの感覚をかなり掴んだ俺達は初日とは比べ物にならない程成長したと思う。その証拠に、俺とフーリンは大分ハクの動きに付いて行けるようになっていた。相手のエネルギーの流れを見るとはこういう事なのだろう。今までの戦い方とまるで違う。凄い効果だ。

 だが、そんな俺とフーリン以上にエネルギーをコントロールし始めたのはエミリア。彼女は一呼吸し意識を集中させると、一瞬で膨大な魔力を練り上げた。

「おー、凄いな」
「これがエミリアの本当の力よ」

 高められたエミリアの魔力は今までの比ではない。エミリアの全身を包み込む様に輝く聖なる魔力は、神秘的な輝きと力強さを纏った特別な存在感を放っている。更にその聖なる魔力を練り上げたエミリアは直後、滑らかな魔力の動きから魔法を放った――。

「精霊魔法、“エルフズ・フレイム”!」

 エミリアが放ったのは火炎球。
 その火炎球は真っ直ぐ勢いよく飛んでいくと、遥か数十メートル先で静かに消え去った。

「やったやった! また撃てた! グリム、フーリン、今の見た⁉」

 子供の如くはしゃいで喜びを露にするエミリア。
 そう。彼女はこの特別指導によってなんと魔法が撃てるようになったんだ。それもマグレではなく、しっかりと自分でコントロールしているっぽい。

「そんな雑魚火炎球1つ出たからってはしゃぐんじゃないよみっともない。精霊魔法が安っぽく見えるじゃないか」
「ハハハ……ごめんなさい。でも私、防御壁以外でこんなにしっかり魔法使えたの初めてだから、嬉しくてつい……」

 正直、エミリアが普通に魔法を使った事に俺もフーリンも驚いた。エミリアと出会ってから、彼女はずっと防御壁しか出せないと燻っていたから驚く半面、何故か自分の事の様に嬉しくも思ってしまった。

「私がアンタに力を与えた事によって、元々アビスから与えられた魔力と私の魔力が反発していたんだよ。自分のエネルギーをコントロール出来れば自ずと魔力もコントロール出来る。今の様にねぇ」
「本当に自分でも信じられない! ありがとうイヴ!」
「馬鹿者。だからはしゃぐんじゃない全く。アンタはまだ本来の力の3分の1も引き出せていないんだよ。今のだってせいぜい1級魔法レベル。アンタが扱っているのは、アンタ達人間が“神1級魔法”とか呼んでいる精霊魔法。
私の精霊魔法を使ってやっと火炎球を出してる様では、まだアンタに『恵杖イェルメス』を渡す事は到底出来ないねぇ。渡しても扱えん」
「うん、分かってる。私だって満足している訳じゃない。もっと強くなりたいんだから!」

 恵杖イェルメス。
 これはイヴがエミリアに与えた神器だ。

 俺達の特別指導が始まった日、俺はふとこの神器の事を思い出していた。目的であるイヴを呼び起こしたのだから、自然な流れでいけばフーリンと同様にエミリアも神器で本当の力を覚醒させるべきだろう。だがイヴは未だに神器をエミリアに渡していなかったのだ。

 イヴ曰く、エミリアに限らず俺もフーリンも、ただ神器を手にすれば良いという訳ではないと言った。全ては使う者の力量次第という事だ。まだまだ強くなれというイヴからのメッセージとも受け取れる。

「さて、それじゃあ私達も再開しましょうか。グリムもフーリンも思った以上にエネルギーの流れが見えてきたみたいだから、ここからはもう一段階ギアを上げるわね。
先ずグリムはこのエネルギーのコントロールをもっと洗練させて。自分の動きは勿論、相手の動きも完璧にね。その上で私がもっと剣術を教えるわ」
「ああ、分かった」
「次にフーリン。貴方にも勿論エネルギーのコントロールをより高めて欲しいけど、貴方はそれと同時に“神威”を完璧に自分の物にしてもらいたいの」
「ラウアーと戦った時のアレか」
「うん。神威を完璧に扱えた時こそ、私が貴方に力を託した事の意味が成るの。頼んだわよフーリン」

 ハクはそう言い終えると再び剣を構え、話し終えた俺達は特訓を再開する。

 すると、俺達が特訓していたこの荒地に、突如来訪者が現れたのだった――。

「まさか本当にこんな所におられたのですね、精霊王イヴ様」
「ん? アンタは確か……」

 突如俺達の前に姿を現した男。その男は短い髪に髭を蓄えた屈強な肉体を持つ男の人だった。彼は屈強な筋肉を覆う様に鎧を纏い、大きく重そうな大剣を後ろに背負っている。

 俺達はこの男と面識はない。

 いや、正確に言うとこの男は俺達を知らないと思うが、俺達はこの男を“知っている”。

 何故ならば……。

「突然のご無礼をお許し下さい。私はこの王国の国王である“ウェスパシア様”の命によって貴方様の元へ参りました。名を“ヘラクレス”と申します。
偉大なる我らがローロマロ王国の守護神、精霊王イヴ様よ。どうかお願いです。悩める我々を、その大いなる力で救って頂けないでしょうか!」
「「――!?」」

 何を何処から言い出せばいいのだろう。

 突如誰かが現れたかと思えば、その男は俺達がローロマロ王国に辿り着いた初日に閻魔闘技場であのラグナレクをいとも簡単に倒した戦士、ヘラクレスだった。

 しかもこのヘラクレスが現れた挙句、予想だにしていないかった目の前の展開は何なんだ。俺達はヘラクレスが現れた事にも当然驚いている。だが、それ以上に目を疑っているのが、現れたヘラクレスが当たり前の様にイヴの前で片膝を付き、まるで崇める様にイヴに何かを訴えているからだ。

 一体全体何が起きている……?

 突然の展開に俺達が呆気に取られていると、そんな俺達を他所に今度はイヴがヘラクレスに話し掛けたのだった。

「ウェスパシアの命だと? これはまた久しい名を聞いたものだねぇ。ヒッヒッヒッ、まだ生きていたのかいあの“小娘”は」
「はい。貴方様の事は昔からウェスパシア様に伺っておりましたイヴ様。ですが、ウェスパシア様はもう先が“長くありません”……。それに加え、先日の“予知夢”によって今ローロマロ王国は窮地に立たされているのです」

 続けられるイヴとヘラクレスの会話。直ぐ近くにいた俺達にも当然話は聞こえているが、2人の会話を聞いても全く話が見えてこない。

「ウェスパシア様の予知夢では“イヴ様の力”によってローロマロ王国に平和が訪れると暗示された様です。だからどうかお願いします精霊王イヴ様! 我々に……どうかお力添えをして頂けませんでしょうか――!」

 人気のない静かな荒地で、ヘラクレスの懸命な思いが響き渡ったのだった――。

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