スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ

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68 神の特別指導・6日目 & 国王

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「急にそんな事言われてもねぇ、私も忙しいんだよ。他を当たりな」
「え?」

 イヴの返答に、俺は思わず声を漏らしてしまった。

「どうしたグリム。何か文句でもあるのかい?」
「あ、いや、そういう訳じゃないけどさ……何かヘラクレスさん困ってるみたいだし、てっきり助けてあげるのかなって思ったから……」

 イヴらしいと言えばイヴらしい。
 その答えが最もしっくりくる事は確かだが、話を聞いていた俺達はなんとなく彼の頼みを受けるものだと思っていたから、イヴのまさかの返答に驚いて声を出してしまった。

 これは勿論俺の勝手な思い込みだし、イヴとヘラクレスさんの関係や事情も全く知らない。でもなんとなくの雰囲気でせめて話の続きだけでも聞くものだと思ったから正直不意を突かれている。多分エミリアもフーリンも同じ事を思ってるだろう。ハクだけはどっちとも読み取れない表情をしているけど。

「馬鹿言うんじゃないよ。私はボランティアで神をやっている訳じゃないんだからねぇ。いちいち人間一人一人の頼みなんて聞けるか。
それに何よりも先ず、私はアンタ達を強くさせないといけないんだ。断っておくが時間は無限じゃない。
終焉も迫っていれば、私達の魔力だって何処まで持つか定かではないよ。私の事よりも自分達の立場と状況を理解しな。アンタ達がやらなければこの世界は終わるんだからねぇ――」

 イヴの言ってる事は正論。
 兎にも角にも深淵神アビスを倒さなければならない以上、俺達はイヴの言う様に強くなる事が第一優先。

 それにこれはイヴとヘラクレスさんの話であって、俺が横槍を入れるのは確かに間違っている。

「話ぐらい聞いてあげなよイヴ。そのウェスパシアって国王、貴方の知り合いじゃないの?」
「知っているからと言って手を貸す理由にはならんだろうがシシガミ」
「嘘よ。イヴも本音は気になっているのよね。確かにグリム達の特訓も急ぐけど、目の前の困ってる人をみすみす無視するなんて3神柱としてはどうかしら」

 ハクとイヴは同じ3神柱であり仲間でもある。俺なんかが想像も出来ない程の古い関係でもあれば、互いに互いの事をこれ以上知ってる者は存在しないだろう。だからこそハクはイヴの気持ちを汲み取った上で、わざとイヴを挑発する様な物言いをした。

 そしてそれはイヴもまた、ハクが自分に何を言いたいのかしかと理解していたのだった。

「嫌味な言い方をするねぇ。挑発しても無駄だよシシガミ。全く、アンタは本当にお節介で面倒だ。仕方がない、取り敢えず話だけ聞いてやるぞヘラクレス」

 イヴが溜息交じりにそう言うと、ヘラクレスはパッと顔を上げて明るい表情を見せた。

「感謝致しますイヴ様! ですが……申し上げにくいのですが、私はウェスパシア様から話の内容まで伺っていないのです」
「何だそれは。本末転倒もいいとこだねぇ」
「申し訳ございません。しかし、ウェスパシア様はイヴ様にこの話をすれば、自ずとイヴ様の“お仲間達”が貴方様をウェスパシア様の元へと導いてくれると仰っておりました」

 頭を垂れてイヴに語りかているヘラクレスの近くで、俺達はまたその気になる話の内容に目を見合わせていた。

「お仲間達って、俺らの事?」
「多分……。結果的に今ハクちゃんがイヴを促した様にも取れるし……」
「馬鹿も休み休み言いな! それじゃあまるで私がシシガミに上手い事操られたみたいじゃないか」

 恐らくエミリアに言われる前にイヴも察していただろう。都合の良い捉え方かもしれないけど、今の話を聞くと自然そう思えてくる。何よりも、この話の肝となっている“ウェスパシア様”とは一体誰なんだろうか。

「ねぇイヴ。この国の王国であるウェスパシア様とはどういう関係なの? お互いに前から知っている様な感じだけど。それに予知夢って言うのも何の話なの?」

 ハクは俺達が思っていた疑問を全て聞いてくれた。ハクもこの件に関しては何も知らない様だ。

「別にわざわざ話す事でもないが、ウェスパシアの事は彼女がまだ子供だった時から知っている。
そして予知夢というのは彼女が見る夢の話であるが、彼女の見たこの予知夢がまた特殊でな。絶対に“当たる”のさ――」

 絶対に当たる夢?

「それってユリマみたいに未来が視えるって事か?」
「いや、それとは少し違うねぇ。ユリマ・サーゲノムもウェスパシアも、言ってみればその力は生まれ持っての才。
ユリマの場合は神器を手にした事によって眠っていた才能が開かれ、特殊な未来予知として世界の未来を知っていたが、ウェスパシアの予知夢はユリマよりも視える未来の範囲が著しく狭いのさ。

ウェスパシアの予知夢はユリマの様に都合よく自分の意志で見られるものではなく、本人でさえも何時その予知夢を見るのか分からないのさ。予知夢と言っても、誰もが毎日見る夢の1つだからねぇ。
だが、ウェスパシアが見るその予知夢は、数こそ少ないが私達3神柱やユリマが視る未来よりも確実。いや、絶対に起こってしまうのさ。
未来を変えようと思ってもねぇ――」

 そう語るイヴの話は、単に知っている知識や情報を俺達に説明していると言うより、実際に自分が体験したとでも言わんばかりの口調だった。

「初めてウェスパシアと出会った時も、私にとっては単なる偶然だと思っていたが、それは彼女にとっては既に知っていた必然。ウェスパシアと知り合ったのはそれがきっかけであったが、その時も予知夢は当たっていた。
このローロマロ王国が独自の文化を持ちここまで栄えたのも、全てはウェスパシアの予知夢と言っても過言ではないからねぇ」

 凄いな……。ユリマ以外にもまだそんな人がいるなんて。って言うか、未来視える人が多過ぎると思うのは気のせいだろうか。そんな簡単に見えるものなのか……未来って。俺も視てみたいな。

「へぇ。そんな人がいたのね。だから私達がここにいて、イヴが結局そのウェスパシアっていう人の元へ行く事が分かったのね」
「何を言っている。私は行くなんて一言も言っていないよ」
「貴方こそ何時までも何を言ってるのイヴ。彼女の予知夢がどれだけ的中するかは貴方がもう1番分かっているんでしょ? だとしたらもう彼女の元へ行く他にないと思うけど。そうよね、ヘラクレス」
「え、はい……確かにウェスパシア様の予知夢は外れた事がありません。私が国王にお仕えする様になってもう20年以上は経ちますが、ローロマロ王国にとっての重大な決断は全てウェスパシア様の予知夢通りです。
今回の件も、イヴ様が城に来てから話を続けると仰っておりました。ウェスパシア様は既に何が起こるのかを全て知っているのではないかと……」
「やっぱりそうよね。ありがとうヘラクレス。ほら、聞いたでしょイヴ。皆困っているみたいよ」

 ウェスパシア様という人の予知夢が本当に当たっているのか俺には分からないが、さっきヘラクレスさんが言ったように間違いなく仲間のハクによってイヴが行かざるを得ない空気なってしまった。でもその前に、そこまで知っていながら何故イヴは納得していない様子なんだろう。

「五月蠅いんだよどいつもこいつも。私は常に自分が主導権を握っていないと嫌なのさ。神だからねぇ。だがウェスパシアの予知夢は神の私であっても絶対に覆せない。奴は相当質が悪いのさ!」

 一気にご機嫌斜めになったイヴ。

 成程、つまり面白くないと。気に食わないと。

 そういう解釈でいいのか? 

 主導権を握っていないと嫌ってハッキリ物申したもんな。神なのに。プライド高いなぁおい。

「そんな事だろうと思ったわよイヴ。いいから取り敢えず行きましょう、ウェスパシアっていう人の所に。もうそうなる運命なんだから」
「それが気に食わん」
「何とかお願い出来ないでしょうかイヴ様。ウェスパシア様は貴方様にお会い出来るのが実に“95年振り”だと嬉しそうに話しておられました」

 きゅ、95年!? ウェスパシア様って何歳なんだ!?

「元からウェスパシア様はとても温厚な方で何時も穏やかな笑顔を向けられている方ですが、イヴ様の話をした時のウェスパシア様のその表情は、私が今まで見た中で最も素敵な笑顔でありました」

 ヘラクレスはその時の事を思い出しているのか、とても暖かい笑みを浮かべながらイヴに伝えていた。

 ウェスパシアの思いとヘラクレスの気持ち。
 
 ここにきてやっと少し心情に変化が生まれたのか、イヴは再び深い溜息を吐くと、そのまま突如体の向きを変えて歩みを始めたのだった。

「イ、イヴ様?」
「何だい。何時までそこにいるつもりだ。私は決して暇ではないが、取り敢えずウェスパシアの話だけ聞いてやる。さっさと行くよヘラクレス――」

 イヴがそう言うと、ヘラクレスは嬉しそうにイヴの後を追って行った。

「何してるんだい! アンタ達もさっさと付いて来な!」 

 歩いていたイヴは突然こちらを振り返るや否や俺達にも勢いよくそう言い放ち、戸惑いながらも俺達もイヴとヘラクレスと共にウェスパシア様の所へ向かった――。





 忍び寄る影に気付く由もなく――。
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