マイペースな最強禁術使い~命より大事な本を燃やされたので、記憶喪失の妖精少女とのんびり復讐旅に出る~

きょろ

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第48話 死んだ方がマシ

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「リッパー教会枢機卿ロットである。大人しく降伏し、『神の在処』を含む全ての蔵書を差し出すならば、命までは取らない──」

 拡声魔法で警告を飛ばすロット。
 揺り椅子に座って眺めるアッシュは、欠伸をした。サウスボンス郊外の貸家は今、完全包囲されている。
 貸家の屋根の上にいるヴェロニカが周囲を見回し、アッシュに報告した。

「千人くらいいるの」

 焦る様子のヴェロニカ。

「異端者狩り多過ぎだろ。俺とヴェロニカの二人相手に動員する兵力でもないぞ。ほら、サウスボンス自警軍が警戒を通り越して、戦闘モードだ」

 まるで他人事のように言うアッシュ。

 郊外で睨み合うアッシュとロット達を見守りながらも、都市の防壁上にはサウスボンスの自警軍がずらりと並ぶ。更に防壁沿いには、傭兵が武器を構えて緊張状態にあった。
 ヴェロニカがアッシュを見下ろす。

「お主、落ち着きすぎじゃないかの。向こうは騎兵隊までおるのじゃぞ? もう逃げる事も出来ないねぇ」
「逃げないが、逃げようと思えば逃げられるぞ」
「まぁ全滅させる準備を整えておったのじゃもんな」

 アッシュとヴェロニカがのんびり会話。それを見ていたロット達が、イライラとした様子で睨んでいる。
 正義の御旗を掲げてきている以上、投降の呼びかけをしておいて、自らが先に攻めかかる訳にはいかないからだ。
 アッシュ達が魔力を発しでもすれば別だっただろう。だが、アッシュは揺り椅子に座ってのんびりと本を開き始める始末。抵抗の意思が見られず、かといって不用意に近付けば何をされるか分からない、得体のしれない空気が場に漂っていた。

 焦れたロット。最後通牒を突きつけた。

「半刻待つ、投降せよ」とロットが叫んだ。

 半刻か、とアッシュは空を見上げる。まだ朝方ではあるが、早朝というほど早い時間でもない。

「ヴェロニカ、朝食を摂る時間くらいはありそうだぞ」

 本を読みながら言うアッシュ。

「トーストにするかの」

 屋根から降りてきたヴェロニカが、家の中に入った。
 余裕の態度を崩さないアッシュとヴェロニカ。異端者狩り達が不気味なものでも見るような目を向けている。
 千人の精鋭に騎兵まで勢ぞろい。回復魔法によって、実質不死ともいえる軍団に囲まれているにもかかわらず、二人は微塵の動揺も見せない。
 呪いの神『ンノル』の聖典を競り落とそうとしたという話も伝わっており、余裕の根拠はまさか、と想像してしまうのも仕方のないことだった。

 ヴェロニカが運んできたトーストを齧り、アッシュは本のあとがきを読み終えた。

「さて、そろそろ始めるか」とアッシュ。

 立ち上がったアッシュを見て、異端者狩り達が身構える。アッシュは拡声魔法を使用した。

「命までは取らないが、多分死んだ方がマシって目に遭うぞ。今のうちに逃げろ。始まったら逃がさないからな」

 アッシュからの宣戦布告。色めきだった異端者狩り達に、ロットが指示を出した。

「作戦通り、土魔法で掘り返しながら接近。包囲を狭めよ。結界の持続を怠るな。騎兵隊は待機。対象が逃げ出した場合、指示を待たずとも良い、追いかけるのだ」

 堅実に詰めてくるな、とアッシュはロットの指示を聞きながら、異端者狩りを見回す。逃げ出す者はいないようだ。

「ああ、ご愁傷様じゃの」とヴェロニカが心の声を漏らした。

 心底憐れむように、ヴェロニカが異端者狩りたちに十字を切って黙祷を捧げた。
 直後、異端者狩り達の背後に控えていた騎兵隊がどよめいた。馬のいななきが連続する。異端者狩り達は背後を振り返り、包囲が乱れるのも構わず、泡を食って逃げ出した。
 騎兵隊が、異端者狩り達に向かって突撃を開始したからである。

「な、何をしているッ」

 包囲形成の一翼を担っていた異端者狩りの隊長が、抗議する。
 しかし騎兵隊は、答えを返す余裕もない。愛馬が何の前触れもなく暴れ出した。

 手綱を握りしめ、振り落とされないようにするので精一杯。騎兵達は異端者狩りの包囲を縦横無尽に駆け回った。
 包囲を狭めるどころか、瓦解しつつある異端者狩りの大混乱を見て、ヴェロニカがアッシュを横目で睨んだ。

「何をしおった?」

 ヴェロニカが聞いた。
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