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1杯目~誤飲酒~
04 おっさんの言い争い
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「はい。私が感じたその違和感はある“魔草”の花でした」
魔草……?あんなのただの雑草だろ。
「言うまでもなく魔草など至る所に生えておりますが、そこの雑草と紛れ咲いていた花は、魔力に反応して咲くマミの花……誰もが子供の頃に1度は遊んだ経験があるかと思います」
エドが言ったマミの花。これはそこら辺に生えている誰もが知っている魔草だ。魔草の中には珍しく貴重な物も確かに存在するが、このマミの花にそんな価値は無い。小さい子供の魔力遊びで使われるぐらいの花だからな。
「マミの花か。確かに誰もが遊ぶ、子供の頃の思い出の1つであるな。懐かしいの。しかし何故そんなマミの花に違和感を抱いたのかね? 特に珍しい物でもないであろう」
「確かに……マミの花自体は何も珍しくありません。ただ、ふと目に留まったマミの花の周りに面月龍の血が零れていたのです。勿論、その時は自分でも分からない違和感を覚えましたが、それが氷解したのは直後の事でした。
私達が、被害に遭った人々の救助活動を行っている際に見かけたのです。何十軒という潰れた家の数々……大量の瓦礫や木材が一面に散らばっていた中で、偶然にも、木材から滴り落ちる満月龍の血によってマミの花が咲く瞬間を――。
自分でも一瞬目を疑いました。種族を問わず、命あるもの全てに流れる魔力。それはまた人間もドラゴンも同じ。そしてマミの花はそんな“魔力”に反応する魔草です。しかし、あの時マミの花はしっかりと咲きました。魔力ではなく“血”に反応して……それもたった1滴落ちただけで、なんとそこに纏まって生えていた“数十本全てが満開”に咲いたのです」
話を進めていくにつれ、エドにも心なしか力が入っている様に伺える。
俺も少しばかり驚いた。そんな話は今までに聞いた事無い。血液に魔力は含まれていない筈だから、本来であればマミの花が反応する訳ねぇ。まぁ人間以外の聖霊やドラゴンみたいなモンスター達は知らないけどよ。
それに驚いたのはその後。僅か1滴落ちただけで一画全て満開で咲いただと……? あり得ねぇ。魔力に自信のある大の大人が試したとしても精々2~3本。複数を満開なんて異常だ。
「おいエド。その話マジなんだろうな?」
「俺も目を疑ったさ。だがこれは揺るがない事実だ」
「フッ……終焉を生むとは良く言ったもんだぜ。まさに化け物だ」
「“魔力0”のお前とは正反対だろ。一片も咲かないもんな」
「うるせぇ。代わりに“魂力”があるからいいんだよ」
「まぁそうだな。兎も角……そんな満月龍の血にはかなり強大な魔力があると目の当たりにした我々は、何とか採取出来た僅かな血を集め調べ続けてきた。奴のその強大な力をどうにか利用出来ないかとね」
エドはまだ何か言いたそうな目で俺を見てきた。
成程。そもそもドラゴン自体が珍しい上に、今回手に入れたのはあの満月龍の血。そうとなりゃ間違いなく世界トップクラスの希少品だ。どれぐらいの価値が付くか想像も出来ん……。
ここまで一切理由が分からないままバタバタしていたが、ようやく全てが繋がったぜ。
「――つまり、その超貴重な満月龍の血を俺が飲んじまったから大問題になっていると。そういう事で間違いねぇな」
「ドヤ顔で言い放ってんじゃねぇ! 何処までアホなんだお前は!」
エドはそう言いながら俺の脇腹にドンと拳を当ててきた。
「痛って。しょうがねぇだろ。大体な……そんな大事な物をあんな酒みたいなボトルに入れておくお前らが悪ぃんだよエド! どっからどう見ても酒だぞアレは!」
「何で逆ギレしてるんだよ!百歩譲って酒だったとしても、王国の運搬車から積荷盗むなんて前代未聞だ! 言っておくがなジン、本来なら捕まって速攻牢屋行きだぞお前!」
「盗みなんて人聞き悪ぃな! 元騎士団のよしみで酒1本貰っただけだろうが! 小さい事をブツブツ言ってんじゃねぇよ」
「だ・か・らッ! そもそも酒じゃないからこうなってるんだろう! 100%お前が悪いのに反省するどころか何開き直ってんだよこの酔っ払い!」
「だったら分かりやすく“満月龍の血です”って書いとけやッ!」
「何だとこのぉッ……「――静粛に!」
いつの間にか低レベルな言い争いをしていた俺とエドに、フリーデン様が品よく喝を入れた。
「ホッホッホッ。若き日の其方達を見ている様で懐かしいの。だが2人共、少し話を戻そうかね」
「「……失礼致しました」」
この歳になってまた怒られる日が来るとは……。
「エドワードの話で概ね理解は出来たなジンフリー」
「はい。とても貴重な物に手を出してしまい申し訳ございません。私がこのような事を言える立場ではありませんが……到底返す事も代わりを用意する事も出来ませんので、一体この罪をどう償えば……」
「うむ……。今回の件に関しては前例が無い。当然じゃがな。王国を守ってくれた事は感謝しておるが、たかがお酒1つでも勝手に手を出すことは頂けぬな」
「返す言葉もありません……」
「しかしどうしたものかの……。エドワードよ、この満月龍の血については何処まで調べた結果が出ておるのじゃ?」
フリーデン様が改めてエドに満月龍の血について聞いた。それは俺も知りたい。話によればこれは5年前の血だからな。専門家達の分析や調査で何かしら結果が出ている筈だ。
「このような不測の事態が無ければ、丁度研究所から新しい分析結果を預かっておりましたので、直ぐに届ける予定でした」
俺に嫌味っぽい視線を横目に飛ばしながら、エドは懐から1枚の紙を取り出した。
「こちらがその結果になります」
「そうか。良いぞ。そのまま其方から伝えておくれ」
「分かりました。では――」
エドはそのまま紙に記されているであろう結果を伝え始めた。
魔草……?あんなのただの雑草だろ。
「言うまでもなく魔草など至る所に生えておりますが、そこの雑草と紛れ咲いていた花は、魔力に反応して咲くマミの花……誰もが子供の頃に1度は遊んだ経験があるかと思います」
エドが言ったマミの花。これはそこら辺に生えている誰もが知っている魔草だ。魔草の中には珍しく貴重な物も確かに存在するが、このマミの花にそんな価値は無い。小さい子供の魔力遊びで使われるぐらいの花だからな。
「マミの花か。確かに誰もが遊ぶ、子供の頃の思い出の1つであるな。懐かしいの。しかし何故そんなマミの花に違和感を抱いたのかね? 特に珍しい物でもないであろう」
「確かに……マミの花自体は何も珍しくありません。ただ、ふと目に留まったマミの花の周りに面月龍の血が零れていたのです。勿論、その時は自分でも分からない違和感を覚えましたが、それが氷解したのは直後の事でした。
私達が、被害に遭った人々の救助活動を行っている際に見かけたのです。何十軒という潰れた家の数々……大量の瓦礫や木材が一面に散らばっていた中で、偶然にも、木材から滴り落ちる満月龍の血によってマミの花が咲く瞬間を――。
自分でも一瞬目を疑いました。種族を問わず、命あるもの全てに流れる魔力。それはまた人間もドラゴンも同じ。そしてマミの花はそんな“魔力”に反応する魔草です。しかし、あの時マミの花はしっかりと咲きました。魔力ではなく“血”に反応して……それもたった1滴落ちただけで、なんとそこに纏まって生えていた“数十本全てが満開”に咲いたのです」
話を進めていくにつれ、エドにも心なしか力が入っている様に伺える。
俺も少しばかり驚いた。そんな話は今までに聞いた事無い。血液に魔力は含まれていない筈だから、本来であればマミの花が反応する訳ねぇ。まぁ人間以外の聖霊やドラゴンみたいなモンスター達は知らないけどよ。
それに驚いたのはその後。僅か1滴落ちただけで一画全て満開で咲いただと……? あり得ねぇ。魔力に自信のある大の大人が試したとしても精々2~3本。複数を満開なんて異常だ。
「おいエド。その話マジなんだろうな?」
「俺も目を疑ったさ。だがこれは揺るがない事実だ」
「フッ……終焉を生むとは良く言ったもんだぜ。まさに化け物だ」
「“魔力0”のお前とは正反対だろ。一片も咲かないもんな」
「うるせぇ。代わりに“魂力”があるからいいんだよ」
「まぁそうだな。兎も角……そんな満月龍の血にはかなり強大な魔力があると目の当たりにした我々は、何とか採取出来た僅かな血を集め調べ続けてきた。奴のその強大な力をどうにか利用出来ないかとね」
エドはまだ何か言いたそうな目で俺を見てきた。
成程。そもそもドラゴン自体が珍しい上に、今回手に入れたのはあの満月龍の血。そうとなりゃ間違いなく世界トップクラスの希少品だ。どれぐらいの価値が付くか想像も出来ん……。
ここまで一切理由が分からないままバタバタしていたが、ようやく全てが繋がったぜ。
「――つまり、その超貴重な満月龍の血を俺が飲んじまったから大問題になっていると。そういう事で間違いねぇな」
「ドヤ顔で言い放ってんじゃねぇ! 何処までアホなんだお前は!」
エドはそう言いながら俺の脇腹にドンと拳を当ててきた。
「痛って。しょうがねぇだろ。大体な……そんな大事な物をあんな酒みたいなボトルに入れておくお前らが悪ぃんだよエド! どっからどう見ても酒だぞアレは!」
「何で逆ギレしてるんだよ!百歩譲って酒だったとしても、王国の運搬車から積荷盗むなんて前代未聞だ! 言っておくがなジン、本来なら捕まって速攻牢屋行きだぞお前!」
「盗みなんて人聞き悪ぃな! 元騎士団のよしみで酒1本貰っただけだろうが! 小さい事をブツブツ言ってんじゃねぇよ」
「だ・か・らッ! そもそも酒じゃないからこうなってるんだろう! 100%お前が悪いのに反省するどころか何開き直ってんだよこの酔っ払い!」
「だったら分かりやすく“満月龍の血です”って書いとけやッ!」
「何だとこのぉッ……「――静粛に!」
いつの間にか低レベルな言い争いをしていた俺とエドに、フリーデン様が品よく喝を入れた。
「ホッホッホッ。若き日の其方達を見ている様で懐かしいの。だが2人共、少し話を戻そうかね」
「「……失礼致しました」」
この歳になってまた怒られる日が来るとは……。
「エドワードの話で概ね理解は出来たなジンフリー」
「はい。とても貴重な物に手を出してしまい申し訳ございません。私がこのような事を言える立場ではありませんが……到底返す事も代わりを用意する事も出来ませんので、一体この罪をどう償えば……」
「うむ……。今回の件に関しては前例が無い。当然じゃがな。王国を守ってくれた事は感謝しておるが、たかがお酒1つでも勝手に手を出すことは頂けぬな」
「返す言葉もありません……」
「しかしどうしたものかの……。エドワードよ、この満月龍の血については何処まで調べた結果が出ておるのじゃ?」
フリーデン様が改めてエドに満月龍の血について聞いた。それは俺も知りたい。話によればこれは5年前の血だからな。専門家達の分析や調査で何かしら結果が出ている筈だ。
「このような不測の事態が無ければ、丁度研究所から新しい分析結果を預かっておりましたので、直ぐに届ける予定でした」
俺に嫌味っぽい視線を横目に飛ばしながら、エドは懐から1枚の紙を取り出した。
「こちらがその結果になります」
「そうか。良いぞ。そのまま其方から伝えておくれ」
「分かりました。では――」
エドはそのまま紙に記されているであろう結果を伝え始めた。
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