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4杯目~導き酒~
48 終焉の光~鎮魂曲~
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俺の後ろからそう声が聞こえた。
確認しなくても分かる。
今の言ったのはエマだ。
「何言ってるんだ。お前まさかそんな状態で……!」
振り返ってエマを見ると、そこにはさっきまでの怯えは一切感じられなかった。
それどころか、何とも冷たい冷酷な視線と禍々しい空気を纏っている。
まるで初めて出会った頃の……他の何者でない、世界最凶の暗殺者と呼ばれるピノキラーの姿がそこにはあった。
「アナタ達と長く過ごしたせいで、いつの間にか甘ったれていたわ」
「エマ……」
「これは私の任務。命令通り、満月龍を殺す――」
これが彼女なりの戦い方なのだろう。
自分を押し殺し、無になった事で恐怖を打ち消したのだ。
「でも私1人じゃ殺せない。だからオヤジが首を落とす隙を生み出してあげる」
今のエマは確かに出会った頃と同じ雰囲気を醸し出しているが、何故だろう……エマの言う通り、それなりの時間を共にしたせいか、まるで生気を感じなかったあの頃からは想像も出来ない程優しさも伝わってくる。
「ハハハ」
「何笑ってるのよ」
「いや、何でもねぇ」
「気持ち悪」
何故だか俺は無意識の内に口元が緩んでいた。
ミラーナやジェイルが生きていたらどんな会話をしていたのだろうか。
「リフェル、早く付与魔法を。一瞬で殺すわよ満月龍」
リフェルが付与魔法を掛けると、エマも一気に魔力を練り上げ戦闘態勢に入った。
「――ちょいちょいちょい! 早く参戦してくれないと死ぬよ俺だけ!」
「情けない。さっさと殺しに行くわよ」
「お、いつの間にかエマお嬢ちゃんもやる気じゃん」
「次で仕留める。分かったらもう1回集中し直せ。オラも渾身の魔法を打ち込む」
「ルルカはまたシールド10枚消えてますね。本当に死にますよ」
「え⁉ しっかりフォローしてよリフェル姉さん」
全く……頼もしい奴らだなホント。
「何故だろうな……全然根拠もねぇのに、何故か次で“イケそう”な気がしているのは俺だけか?」
この感覚が勘違いなのか、はたまた正しい野生の勘なのか。それは直ぐに答えが出るだろう。
「どちらにせよ、何十年ぶりかに気分が上がってるぜ」
長い様な短かい様な……。
たかが1年程度だが、いざ離れてみるとリューテンブルグも幾らか恋しいな。
フリーデン様やエドにも語り尽くせないぐらい土産話があるし、Dr.カガクやトーマス少年にもリフェルの成長を見せてやりてぇ。Dr.カガクには文句も幾つかあるけどな。
それに何より、俺には“行かなくてはならない場所”がある――。
――グオォォォン!
俺は極限まで練り上げた魂力を一気に“ベニフリートへ”注いだ。
注がれたベニフリートは魂力に呼応するかの如く力が徐々に共鳴していく。そしてベニフリートを持つ俺の手から腕、体へと次第に“竜化”していった。
「へぇ~、コレがジンの旦那が言ってた奥の手か」
「満月龍を倒す唯一の手段だ。かつてジンフリーの先祖であるバン・ショウ・ドミナトルが紅鏡龍を倒したとされる秘技。魔力が全生命の基礎となる中、混じり気のない純度100%の魂力のみに反応するらしい。……とは言っても、並大抵の魂力量では成し得ない技だがな」
そう。
コレが俺の最後の切り札。
魂力とベニフリートの更になる高みの領域だ。
「そろそろケリを着けようか……満月龍――」
『ギィィィヴオ″ォォォォ!!』
泣いても笑ってもこれで最後。
「行くぞお前らッ!!」
俺達は一斉に満月龍目掛け飛び掛かった。
「魔風の処刑台!」
「青炎流れ星!」
ルルカがかまいたちの如き強力な風の刃で奴の頭部を集中攻撃、空いた胴体を狙ったアクルは灼熱の炎を纏った複数の隕石を撃ち込む。
『ヴォォォッ!』
付与魔法と無尽の魔力によって常人離れした火力を生み出してアクルとルルカの攻撃だが、相手は満月龍……これ程の攻撃にも怯むことなく反撃してくる。
「食らえぇッ!」
「頑丈過ぎなんよッ!」
それでも手を休める事なく、2人は更に攻撃を繰り出し続けた。
ここだ――。
さっきまではここからあと1歩奴に届かなかったが……“今”は違う。
「……無重力殺」
――シュ…………スパンッ!
『ギィィィッ……!』
完全に気配を消していたエマが満月龍に攻撃を食らわした。
恐らく奴も今の攻撃を受けた瞬間までエマに気付いていなかったのだろう。
その証拠に、ずっと待っていた“この瞬間”が訪れた――。
「「……行けぇぇぇッ!!」」
『――!』
時間にしたら1秒にも満たない。
届きそうで届かなかった僅かな隙。
エマが……リフェル、アクル、ルルカが。
皆が必死こいて生み出してくれたこの一瞬を……。
「――終わりだ、満月龍……」
――ズバァンッッ!!!
『ギヴォ……ッ……⁉』
俺が振り下ろしたベニフリートは、満月龍の首を一刀両断した――。
確認しなくても分かる。
今の言ったのはエマだ。
「何言ってるんだ。お前まさかそんな状態で……!」
振り返ってエマを見ると、そこにはさっきまでの怯えは一切感じられなかった。
それどころか、何とも冷たい冷酷な視線と禍々しい空気を纏っている。
まるで初めて出会った頃の……他の何者でない、世界最凶の暗殺者と呼ばれるピノキラーの姿がそこにはあった。
「アナタ達と長く過ごしたせいで、いつの間にか甘ったれていたわ」
「エマ……」
「これは私の任務。命令通り、満月龍を殺す――」
これが彼女なりの戦い方なのだろう。
自分を押し殺し、無になった事で恐怖を打ち消したのだ。
「でも私1人じゃ殺せない。だからオヤジが首を落とす隙を生み出してあげる」
今のエマは確かに出会った頃と同じ雰囲気を醸し出しているが、何故だろう……エマの言う通り、それなりの時間を共にしたせいか、まるで生気を感じなかったあの頃からは想像も出来ない程優しさも伝わってくる。
「ハハハ」
「何笑ってるのよ」
「いや、何でもねぇ」
「気持ち悪」
何故だか俺は無意識の内に口元が緩んでいた。
ミラーナやジェイルが生きていたらどんな会話をしていたのだろうか。
「リフェル、早く付与魔法を。一瞬で殺すわよ満月龍」
リフェルが付与魔法を掛けると、エマも一気に魔力を練り上げ戦闘態勢に入った。
「――ちょいちょいちょい! 早く参戦してくれないと死ぬよ俺だけ!」
「情けない。さっさと殺しに行くわよ」
「お、いつの間にかエマお嬢ちゃんもやる気じゃん」
「次で仕留める。分かったらもう1回集中し直せ。オラも渾身の魔法を打ち込む」
「ルルカはまたシールド10枚消えてますね。本当に死にますよ」
「え⁉ しっかりフォローしてよリフェル姉さん」
全く……頼もしい奴らだなホント。
「何故だろうな……全然根拠もねぇのに、何故か次で“イケそう”な気がしているのは俺だけか?」
この感覚が勘違いなのか、はたまた正しい野生の勘なのか。それは直ぐに答えが出るだろう。
「どちらにせよ、何十年ぶりかに気分が上がってるぜ」
長い様な短かい様な……。
たかが1年程度だが、いざ離れてみるとリューテンブルグも幾らか恋しいな。
フリーデン様やエドにも語り尽くせないぐらい土産話があるし、Dr.カガクやトーマス少年にもリフェルの成長を見せてやりてぇ。Dr.カガクには文句も幾つかあるけどな。
それに何より、俺には“行かなくてはならない場所”がある――。
――グオォォォン!
俺は極限まで練り上げた魂力を一気に“ベニフリートへ”注いだ。
注がれたベニフリートは魂力に呼応するかの如く力が徐々に共鳴していく。そしてベニフリートを持つ俺の手から腕、体へと次第に“竜化”していった。
「へぇ~、コレがジンの旦那が言ってた奥の手か」
「満月龍を倒す唯一の手段だ。かつてジンフリーの先祖であるバン・ショウ・ドミナトルが紅鏡龍を倒したとされる秘技。魔力が全生命の基礎となる中、混じり気のない純度100%の魂力のみに反応するらしい。……とは言っても、並大抵の魂力量では成し得ない技だがな」
そう。
コレが俺の最後の切り札。
魂力とベニフリートの更になる高みの領域だ。
「そろそろケリを着けようか……満月龍――」
『ギィィィヴオ″ォォォォ!!』
泣いても笑ってもこれで最後。
「行くぞお前らッ!!」
俺達は一斉に満月龍目掛け飛び掛かった。
「魔風の処刑台!」
「青炎流れ星!」
ルルカがかまいたちの如き強力な風の刃で奴の頭部を集中攻撃、空いた胴体を狙ったアクルは灼熱の炎を纏った複数の隕石を撃ち込む。
『ヴォォォッ!』
付与魔法と無尽の魔力によって常人離れした火力を生み出してアクルとルルカの攻撃だが、相手は満月龍……これ程の攻撃にも怯むことなく反撃してくる。
「食らえぇッ!」
「頑丈過ぎなんよッ!」
それでも手を休める事なく、2人は更に攻撃を繰り出し続けた。
ここだ――。
さっきまではここからあと1歩奴に届かなかったが……“今”は違う。
「……無重力殺」
――シュ…………スパンッ!
『ギィィィッ……!』
完全に気配を消していたエマが満月龍に攻撃を食らわした。
恐らく奴も今の攻撃を受けた瞬間までエマに気付いていなかったのだろう。
その証拠に、ずっと待っていた“この瞬間”が訪れた――。
「「……行けぇぇぇッ!!」」
『――!』
時間にしたら1秒にも満たない。
届きそうで届かなかった僅かな隙。
エマが……リフェル、アクル、ルルカが。
皆が必死こいて生み出してくれたこの一瞬を……。
「――終わりだ、満月龍……」
――ズバァンッッ!!!
『ギヴォ……ッ……⁉』
俺が振り下ろしたベニフリートは、満月龍の首を一刀両断した――。
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