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学園生活に変化

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 学園が休みを明ける前、少しずつ生徒が戻ってきていた。寮住まいの生徒は、荷物を運び入れ部屋の掃除や課題の確認。お互い、久しぶりに会う顔に話しの花が咲いた。話題の一つに、マノンが上がっていた。

 「そう言えば、聞きました? 先生方の多くが入れ替わったそうですよ……なんでも、”あの生徒”が関わっていたみたいですよ」
 「やはりそうですよね……殿下に、いえ、殿下の周囲の方々への態度だけでなく。男性教師や教授の方々とのことも……」

 その先は言わず、口を互いにつぐみ「いやだわぁ」と言う。メイが教師たちから受けていた授業中の仕打ちは、誰もが知る事実でもあった。しかし、彼女が受けた他の事態については知られてはいなかった。彼女らの中にも、【魅了】の力による後遺症を残した婚約者を抱えている。教会にて治療を受けた時には既に遅く、彼女らの婚約者は全てと言っていいほどに後遺症を持った婚約者と……お互いに想いあっている婚約者もいれば、家のための婚約をしている者にとっては悩みが増えた。

 学園の外れの庭で久しぶりに婚約者に会った女生徒は困惑していた。彼に対しては、幼い頃の家門同士の取り決めだったが彼女は少しずつ彼を好きになっていっていた。しかし、学園に入学してしばらくしてマノンという女生徒に入れ込み彼女は嫉妬を覚えた。彼は『お互いに家門同士の取り決め』という態度を取り崩さず、デビュタントでも相手の恥にはならないようにはしてくれていた。それが、マノンという女生徒により彼は一切彼女とは口を利かず、婚約の破断を申し出ていた。
 目の前にいる彼は、頬が紅潮し逞しい身体で彼女を抱きしめ息があがっている。その状態でも困惑している。彼に手を握られるようなカタチはあったが、あくまでエスコートで恋人のような扱いは受けてこなかったから……。

 「あ、あの……ヨアヒム様……ど、どうされ、たの、です?」
 「メアリー……あぁ、すまない……今までどれだけ君に……我慢が、でき、ない……」
 「えっ、ヨアヒ……っ、んぅ……ふっ、ぁ……」
 「君の唇は小さいのに甘くて……舌を出して、そう、メアリー」
 「ぁっ、んぅ……ん……」

 メアリーはヨアヒムからの口づけが段々激しく深くなるのを受け入れてしまっている。彼の逞しい胸に必死にすがりついて、足が崩れ落ちそうになった。唇がいったん離れると寂しくなった。小さな甘いため息に、彼が「堪らない」と言い、さらに彼女を求めた。ここが、学園であるのも忘れて……彼女の胸を優しく揉みしだき頂きを刺激していきながら、口づけを続ける。彼女の、メアリーの甘い声がどんどん漏れ、ヨアヒムは滾りが止まらなくなった。
 一度滾ると、止まらない後遺症の相手は一人と決まっていて男にとって【本当に想う相手】と教会の司祭から聞いていた。ヨアヒムは自分の感じている滾りがその、【本当に想う相手】だと本能的に分かった。

 「メアリー、今まですまなかった。君が俺を、慕ってくれているのを知りながらないがしろにして……そんな俺でも、今でも想ってくれているか?」
 「っ!!……ずるい言い方なさらないでください……わたしが、ヨアヒム様の口づけを拒否しなかったのを……お慕いしてます……今も、これからも……」
 「俺は、今になって君を、愛していることに気が付いたんだ……堪らなく君が欲しくて、ずっと君でなければダメなんだ……」
 「ヨアヒム様……っ、わたし、わたしもずっとお傍に……」
 「ありがとう……その、言いにくいんだが……俺は後遺症があって、一度滾りを覚えると止まらないんだ。君だけにだけだが……」
 「……えっと、その……ッ!!!!!!」
 「俺の王都内の別邸になるが、君の初めてを貰っていいか? 婚前前だが……その、君を愛したい」
 「はい」

 メアリーは彼に招かれ、王都内の彼の別邸へと行き……彼の滾りがおさまるまで、おさまった後も彼の愛の囁きにどろどろに溶かされた。

 学園生活が始まる頃、メイも戻って来た時、学園内の男女の様子が違う意味で違っているのを感じた。いわゆる……甘い蕩けた雰囲気の男女ばかりなのだ。婚約者と供に、食事をとっている最中も相手の男性は婚約者の女生徒に愛を囁き、頬に口づけている。
 学園の授業が終わると、甘い雰囲気のまま図書館デートやら王都内の別邸へお家デートへ……というのが、定番になったと。街中でも、学園のカップルがカフェでデートとかも良く見かけるようになった。
 それを聞き及んだ兄リゲルとハロルドが、メイに、「俺とデートしよう!!」「メイ、君の好きなカフェへ行こう」と迫る。毎回、教会の勤めもあるからと断わるとしまいには二人とも「「俺のことは嫌いか?」」と大型犬がしょげたように言う。
 嫌いとかという時点の前に、彼らの押せ押せの状態にメイは断ることが難しくなってきている。特に、ハロルドに対しての自身の気持ちがわかってから彼と一緒にデートしたりしたいと……。
 教会側から、『アレではせっかくの君の力の安定が出来ても、聖女の務めに差し障るから』と数日休みを頂いた。
 学園の休みの日に、ハロルドの誘いでメイは王都内で学園生徒たちが良くデートとして利用しているカフェに着た。

 「あの、ハルは甘いものは大丈夫なのですか?」
 「シェノンがこの店には甘さ控えめのものがあると」
 「えっと……このビターショコラケーキのことでしょうか?」
 「……だと」

 メニュー表には、ケーキやデザート類のイラストと簡単ながらも甘さがわかるように、ハートで3つとか4つとあった。ハートの数が多いと甘さが強くなる。ビターショコラケーキはハートが1つだった。数少ない苦みの強いショコラを使ったケーキの様だ。これに合う飲み物が、ビターココアかコーヒーとあった。ココアのハートは2つ。つまり、苦みに少しの甘さのココアでちょうど良い甘さを味わえる組み合わせになっている。
 カフェ店員にビターショコラケーキとビターココアを注文したハロルドに対し、メイは季節のフルーツタルトとカフェラテのアイスを頼んだ。まだ暑さの残る日だったので、冷たい飲み物が欲しかった。店に入ってから、ハロルドはメイの手を軽く握り続けている。時折、指の間を指で愛撫する様に刺激し、メイの下腹部は熱くなった。
 それを知っているかのように、ハロルドはケーキが届くまで続け、食べている時は彼女の口許へとケーキを運び。頬を優しく撫で、口許についたタルト生地やフルーツのジャムを唇で口づけるように拭う。その度に、身体がびくりと反応して甘い声が出てしまうのを我慢し続けた。
 カフェでの時間が終えると、彼は手を絡めて繋ぎ、「これから俺の屋敷で少し過ごそう。妹が会ってゆっくり話したいと言っているんだ」と。たしかに、彼の妹であるシャルロッテ嬢とは学園で挨拶する程度でなかなかゆっくり話す機会がなかった。快く受け、彼の王都内の邸宅へと馬車で向かった。

 屋敷に着いて、魔法剣士で騎士団長のハロルドの父と、その母。妹のシャルロッテ嬢が……とても歓迎してくれた。シャルロッテ嬢は、兄のハロルドに対し何やらガッツポーズを向けている。何か、違うが兄リゲルと似た者をメイは感じた。そして、屋敷で夕食を頂いて彼の部屋でゆっくりお茶をしていると、彼から指輪を渡された。一瞬戸惑った。初めてのちゃんとしたデートをした日に彼の邸宅には来たけれど……指輪……。

 「メイ・ドライモス嬢。俺の、俺の……妻になってくれ!! 俺には君しかいないっ!!」
 「あ、あの……ハル? わたし達、まだ……気持ちを伝えあったばかりで。その、婚約ということ?」
 「いや、婚約して結婚は待てないから。結婚を学園卒業前にしたい!!」
 「……えっ???? 学園卒業前? ちょっ、ちょっと待って!! あの、父上と母上にも相談して」
 「君の両親に承諾は得て、ここに婚姻届け承認欄に記入は頂いている」
 「……あぁ……そう、なの、ね……」
 「俺の両親もサインしている!! 無論、俺も書いた!!」
 「えっと、考えたら……だめ……そう、ね……」

 期待に満ち満ちている彼の瞳が、『考えたら』という言葉ひとつでガックリと大きく項垂れ。『俺の愛はまだ足りないのか?』『やはりもっと……』と言い始めた。いやな予感しかしてこない。彼が、護士としての勤めをしている時……王宮中に響き渡っていたと後から聞いた、彼の自分に対しての愛の叫び? 雄たけび? というのを思い出した。彼の場合、恐い顔とは裏腹に、溺愛の度合いが異常なまでに激しいというのを身に染みている。アレ以上、どろどろに溶かされたと思うとメイは後戻りも何も彼以外、受け入れる気持ちしかないが……ぐずぐずに溶かされてどうにかなってしまいそうだった。
 想いをめぐらされていると、彼の手がメイの左手の指に婚姻指輪をはめていた。指先、手の甲、手のひらと口づけを始め、ゾクゾクと背中に電流が走り下腹部から熱を帯びた。気が付くとソファから、ベッドの上に運ばれ、彼が上に覆いかぶさるようになって口づけをしてきた。激しいのに優しくて、甘くて蕩けていく。身体が熱を一瞬にしてもち、唇の隙間からは甘い声を漏らし彼が口の中で小さな舌を刺激する様に舌で愛撫しながら唇を食む。逆らえず、彼の口づけを求めて背中に手を回して彼の大きな身体に合図してしまう。
 彼女のその合図に、彼の口づけはさらに激しさをまし、唇だけでなく、耳たぶや首筋をも愛撫した。声が我慢できず、小さかった声はだんだんと大きくなる。グリッっと下腹部に大きく硬く熱いモノを当てられ、彼が滾ってきているのがわかった。それの反応し、腰が浮いて彼に刺激を与えてしまう。

 「んっぅ……ハルぅ……あっ、んぅ……キス、欲しい……好きぃ」
 「はっ、んっんぅ……ちゅっぅ……舌、絡めて……ダメだ、そんな風に俺のを刺激、し、たら……」
 「ハルが、して、きた、の……」
 「メイは可愛い言い訳がうまいな……だが、好きだ。じゃぁ、俺の妻になりたい? それとも、いっぱい俺だけに愛され続けられたい?」
 「あっ……どっちも、おな、じ……」
 「両方がいいのかい? 俺だけに愛され続けられる奥さん?」
 「んっ、あぁん……その触れ方、やぁん……」
 「奥さんになる? メイ?」
 「……いぢわるばかり、言わないで……ハル……」

 どろどろに溶かされ始めていくメイは、ハロルドから与えられる言葉と刺激に反応してしまう。妻になりたい? 俺だけに愛され続けられたい? 両方がいい? と、どれも結局は彼からは離れる事はできないのを知っていて言われる選択肢。全部、選びたい。彼に、愛され続けられる妻で……もう、毎日、彼にどろどろに溶かされる愛され方に溺れてしまいたい。
 そんな考えがよぎった瞬間、彼女のなかで、もう一つの魂が震えた。彼の愛に、2人の魂が、初めて同じ想いの揺れと震えを覚えた。
 小さなソレは、どんどんと重なり。彼が与えていく言葉と愛撫に、溶かされていく。一度溶けて重なり始めた魂は、本当の意味で、彼への想いが一つとなって求めることをやめられなかった。


――休み明けの王宮――

 「それで、わたくしの可愛いメイをあのド阿呆は奪ったのですね? 殿下?」
 「そう怖い顔をしないでくれよ。アイツも、初めて逢った時からずっと片想いできてるんだ。重たすぎるだろ」
 「そ、それは……存じておりますけど……」
 「で、俺の想いには気づいてくれない訳?」
 「へっ? 殿下の想い?!」
 「そっ、俺も結構愛が重たいよ? 君限定でね、フォンテーヌ?」

 そういうと、フォンの髪をすいてひと房を軽くとり口づける。熱い眼差しを向けられたフォンテーヌは心臓が激しく早く動き呼吸を忘れそうになった。気が付くと、フォンは、執務室のソファにシェノンに組み敷かれて口づけをされていた。初めての口づけで、それも彼からの……王子の婚約者候補としてきていたが、こういう関係になるとは思いもよらなかった。メイを守ることばかりで、婚約者候補としての王宮での教育を怠らずにきていたが……家門の取り決めたことで、シェノン殿下は、あまり興味を持っていないと。自分は彼に対して、幼い頃の憧れは持ち続けて……成長する彼の姿は、本当に見惚れて……。
 甘い口づけをされたかと思うと、「俺の愛、これから毎日たぁっぷり教え込んでいくから覚悟してよね?」とニヤリとした。その表情はなにか悪戯っぽいけれど男の表情で……心臓の高鳴りが止まらなくなった。その日、彼の口づけだけで、帰りの馬車の中でフォンテーヌはシェノン殿下でいっぱいになった。
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