狼さんのごはん

中村湊

文字の大きさ
13 / 22

味わって欲しい

しおりを挟む
 雅和は、考えていた。なぜ、ここに? たしかに連絡はあった。『仕事が終わったら、彼女と来なさい』と。会長であり、自分の父親から。久しぶりの電話だった。
 彼女にも、一緒に来て欲しいというと二言ふたこと返事で了解してくれた。

 「おっきなおうちですね?」
 「んっ」
 
 久し振りの本家に、見事に口調は「んっ」状態に戻った。彼女の小さな手を握り立派な門構えの入り口に立つと、「お入りください」と声がし迎えが来ていた。

 「お久しぶりです、雅和様」
 「んっ」
 「そちらが……お初にお目にかかります。坂口家に仕える山井やまいと申します。気軽に、山ちゃんと呼んでくさい」
 「……やま、ちゃん?」
 「あぁ、なんと愛らしいお方でしょう!! 旦那さま方も喜びます!!」
 「んんーーー」
 「失礼しました。では、ご案内いたします」

 山ちゃんこと、山井は軽いスキップを踏みながら屋敷へと案内していく。軽いステップすら……踏んでいる。
 理人といい、朝といい……なんで自分の周りには、こうもへんてこな人間が多いんだろう? と、雅和は思っている。しかし、彼も充分そうなのだが……。
 
 「旦那さまぁーー!! 奥様ーー!! 山ちゃん戻りましたぁ!!」
 「おーっ、大役ご苦労だぞ。山ちゃん!!」
 「あらあら、どうしたの? 悦びの舞だなんて?」
 「初めまして、さわ絵里えりです」
 「「「っっっ!!!!」」」

 小さな女性が挨拶をすると、応接間に居た山ちゃんはじめ、旦那さまと奥様はきゃっきゃっと悦び始める。奥様は、絵里の手を握り涙を流し、「嬉しいわぁ」「雅ちゃんと一緒に居てね」と言う。
 山ちゃんは……涙しながら、優雅にくるくると回りつつステップをかろやかに踏み悦びの舞。
 旦那さまイコール父は、大泣きして「雅くんがぁ」と言っている。
 コレが、自分の両親だっただろうか? と、男は見てボンヤリする。絵里は戸惑いつつも、彼の母と手を握って「私も一緒に居たいです」と。

 悦びの対面をした両親達と改めて食事を一緒にした。週末という事もあり、「泊まっていきなさい」と話しは進み。部屋が既に用意されており一緒に泊まることになった。
 なにか、既に決まっている感がひしひしと伝わっていたが。そこは考えないようにした。雅和は。
 綺麗に手入れされている部屋は、誰か来ても快適に過ごせるようにとなっている。華美かびすぎない調度品に、大きなベッド。座り心地の良さそうなソファ。窓際には、テーブルと椅子が2脚。 部屋の中にバスルームもトイレもあった。
 ベッド横のチェストの引き出しを引くと……雅和は、少しひいた。色んな意味で、ひいた。
 自分の使い勝手の良いコンドームがあったからだ。

 ーーコレは……使って……いいよな? ーー

 パタンと引き出しをゆっくり押し戻した。

 「雅和さん、着替えもありました」
 「んっ」
 「お風呂……先に入ります?」
 「んんっ」
 「えっ、一緒? ですか……」
 「んっ?」
 「いや、じゃない……です」

 会話が不思議と成り立つ2人。雅和は、彼女を抱きかかえて一緒にバスルームへと脚を運ぶ。既に湯は張られている。
 彼女は耳を紅くしながら背を向けて、着ていたワンピースを脱ぎ始めた。小さな背に、綺麗な曲線の身体。長めの髪の毛は纏めていたのを、ゆっくりとほどく。流れるようにおりていく髪の毛が、愛おしく感じ優しく一房つかみ口づける。
 ビクリと身体を震わせ、男に後ろから抱き締められる。すでに昂ぶっている雄が感じられ、下腹部の中心が疼く。

 「入る」
 「あっ、はい」

 彼に誘われ、一緒にバスルームで身体を洗い湯にかる。程よい温度で、心地よく彼に背を預けている。とても安心する、と絵里は思った。
 とても大きい身体で逞しい彼は、彼女の首筋をゆっくりとキスをしながら可愛がる。
 
 ーー風呂ではしないようにしないとーー

 そう考え、身体を温め湯冷めしないようにと彼女の身体を綺麗に拭き一緒にベッドに向かった。
 ベッドにいる彼女は綺麗だった。用意されたネグリジェを身にまとい、小さな胸の頂きを尖らせている。頬を染め、少し身体を寄せて来ている愛らしい行為に彼は激しく胸を鳴らす。
 ドクドクと雄に全て血が集まっていく。彼女の唇にキスをし、舌を滑り込ませて愛撫するように……。小さな舌が彼に応えていく。腕を彼の大きな背中にまわして、離さないで欲しいと云う。
 雅和は、キスをしながら彼女の柔らかい胸を揉みしだき刺激する。小さな唇から甘い声が漏れ啼いている。もっと啼いている声を聴きたいと、愛撫をし続ける。
 秘部を潤い蜜が溢れるのを感じている絵里は、彼の優しく激しい愛撫に翻弄されている。

 「っあ、んぅ……んぁ、ぁあ……雅和さん」
 「絵里、可愛い……もっと、喰べたい……んんっ」

 喰べて良い? 可愛いなどと、繰り返して絵里の全てを食べ尽くし始める。蹂躙じゅうりんするのではなく、愛おしく優しく、激しく……彼女を求めていく。
 絵里の中で、なにかを感じ始めているように彼も感じ始めていた。ただ、彼女を抱いて満たされたいだけでなく、心も満たされたいと……。それは、絵里も同じだった。初めてのキスに、全ての行為も雅和が初めてで、女としてでなく……初恋というものを、彼に対して持っていることに気づき始めた。
 一緒に居たい、居て欲しい。傍に……彼の傍に。ずっとずっと、身も心も……全てを味わい尽くされながら……。

 「……って欲しいです……」
 「んっ? 今……なんて?」
 「味わって欲しいです。たくさん……」
 「っっっっ!!!!!!!!!」
 「雅和さんに……たくさん……んっんんっ!!」
 「んっぅ……ダメだよ? そんなにあおったら……本当の本当に……もぅ、ダメだ……我慢、無理!!」

 無理!! と、言いながら。今まで何を我慢していたのか……というか……雅和の愛撫の激しさや濃度がいっそうましていく。翻弄される以上に、呑まれて呑み込まれ、堕とされていく。
 絵里は、囚われた状態から逃れることもせず、彼を受け容れていく。抗うそぶりもなく、堕ちていく姿が色香を増し彼を刺激していく。
 全て残さず、雅和は彼女を味わい尽くし始める。自分のつがいとしてだけでなく、なにか、もっと深い繋がりを求めるように彼女に……。
 下腹部の熱い疼きに彼女は刺激され、彼の昂ぶりを受け容れた瞬間に、達してあえぎ啼きむせぶ。そのまま、彼は激しく、優しく。緩急をつけながら、彼女を刺激しながら唇を味わう。
 キスをされながら、全身を大きな手で包み込まれながら愛撫され、下腹部すらも……どこも逃げることも出来ない、彼に食べ尽くされ続ける状態が続く。

 「っあ、はぁ、あぁ!! んぅ、雅和さぁん!! もぅ、あっ、あぁあぁあぁ!!」
 「ぅくっ、はぁはぁ、絵里!! もっと、もっと味わいたい!! あぁ、絵里!!」
 「ひぁ、あぁん!! もっ、あぁ、らめぇ!!」
 「可愛い……あぁ、絵里……くぅ、イクっ!! 一緒に、イこう? また、一緒に……」
 「あっあぁぁあぁ!!」

 絵里の絶頂の声を挙げると、雅和も一緒に達する。何度目のラウンドだか、絵里は分からない。初めての第○ラウンドは、超えた……。
 その夜、というより……夜明け近くになっていたようで、絵里は気絶するように雅和に抱かれて眠った。
 彼は、初めて味わい尽くせた彼女をいたわりながら抱き締め眠った。

 翌朝、遅くの朝食を部屋に運んで貰うと……山ちゃんこと、山井は。とぉーーーーっても、喜んでにこやかな。柔やか過ぎて恐いくらいの笑顔で扉をしめた。

 「連休はまだありますので、ごゆっくりしてください」

 と、去り際に言い残して……。

 雅和は、その言葉に……存分に、甘えた。連休明け前の最後の休みは、絵里の身体をいたわって控えめにシタ。彼にしては、の控えめ。絵里にとっては、味合われた方……味わい尽くされてはいなかったが……味合われました。
 彼に存分喰われないと、寂しく感じ始めている気持ちが彼女の中で少しでてきていた。

 ーー雅和さんに……もっと、べられたいーー

 彼の実家から一緒に住む絵里のマンションで、一緒に夕飯を食べながら……ふと、そう頭の中にぎった。小さくかぶりをふりながらも、彼を見つめてしまう。
 あの、獣のようになる彼の瞳。どう猛さを孕んでいるけど、優しい瞳。もっと、もっと……そう思うほど、身体が粟立って彼を胡乱だ瞳で見つめていた。
 早鐘を打つ心臓の鼓動が、彼に伝わっているかのように彼は彼女の好きな瞳で見つめていた……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

思い出のチョコレートエッグ

ライヒェル
恋愛
失恋傷心旅行に出た花音は、思い出の地、オランダでの出会いをきっかけに、ワーキングホリデー制度を利用し、ドイツの首都、ベルリンに1年限定で住むことを決意する。 慣れない海外生活に戸惑い、異国ならではの苦労もするが、やがて、日々の生活がリズムに乗り始めたころ、とてつもなく魅力的な男性と出会う。 秘密の多い彼との恋愛、彼を取り巻く複雑な人間関係、初めて経験するセレブの世界。 主人公、花音の人生パズルが、紆余曲折を経て、ついに最後のピースがぴったりはまり完成するまでを追う、胸キュン&溺愛系ラブストーリーです。 * ドイツ在住の作者がお届けする、ヨーロッパを舞台にした、喜怒哀楽満載のラブストーリー。 * 外国での生活や、外国人との恋愛の様子をリアルに感じて、主人公の日々を間近に見ているような気分になれる内容となっています。 * 実在する場所と人物を一部モデルにした、リアリティ感の溢れる長編小説です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

愛想笑いの課長は甘い俺様

吉生伊織
恋愛
社畜と罵られる 坂井 菜緒 × 愛想笑いが得意の俺様課長 堤 将暉 ********** 「社畜の坂井さんはこんな仕事もできないのかなぁ~?」 「へぇ、社畜でも反抗心あるんだ」 あることがきっかけで社畜と罵られる日々。 私以外には愛想笑いをするのに、私には厳しい。 そんな課長を避けたいのに甘やかしてくるのはどうして?

2人のあなたに愛されて ~歪んだ溺愛と密かな溺愛~

けいこ
恋愛
「柚葉ちゃん。僕と付き合ってほしい。ずっと君のことが好きだったんだ」 片思いだった若きイケメン社長からの突然の告白。 嘘みたいに深い愛情を注がれ、毎日ドキドキの日々を過ごしてる。 「僕の奥さんは柚葉しかいない。どんなことがあっても、一生君を幸せにするから。嘘じゃないよ。絶対に君を離さない」 結婚も決まって幸せ過ぎる私の目の前に現れたのは、もう1人のあなた。 大好きな彼の双子の弟。 第一印象は最悪―― なのに、信じられない裏切りによって天国から地獄に突き落とされた私を、あなたは不器用に包み込んでくれる。 愛情、裏切り、偽装恋愛、同居……そして、結婚。 あんなに穏やかだったはずの日常が、突然、嵐に巻き込まれたかのように目まぐるしく動き出す――

ハイスペックでヤバい同期

衣更月
恋愛
イケメン御曹司が子会社に入社してきた。

処理中です...