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新たな感情
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美術回廊で倒れた日、また彼に救われた。トーナル氏とマーブル侍女長が部屋に訪れ、彼を紹介してくれた。
「モーネス・ハイランデルと言います。アイリス嬢、具合はどうです?」
「……はい、大分よくなりました……ありがとう、ございます」
「良かったです」
短い挨拶と会話の中で、彼は優しい眼差しの中でアイリスを見ていた。彼に瞳を向けられ、アイリスは何か気持ちの置きどころを考えていた。よく分からないが、落ち着かない。
手を擦るようにしていると、モーネスが「失礼」とひと言断り脈診をした。脈は幾らか早いがリズムは乱れはない。彼はひとまず安心した。あの日の、彼女はなにかに苦しんでいた。ただ、意識を取り戻し「ありがとう」と言った表情は柔らかで彼の気持ちを揺さぶった。
トーナルがしばらく仕事を休むように伝えたが、アイリスは3日で良いと答えた。その返答に、マーブル侍女長も渋った。本当は、1週間は休んでほしかった。彼女の今までの仕事への打ち込みは見事だが、なにかを忘れるため、思いださないため、のようにしか見えない。
「わかりました。3日間、しっかり休みなさい。その代わり、モーネスからの診察を受けなさい」
「モーネス様の?」
「安心なさい、彼は医術の心得があります。実際に医師としての免許も持っています」
「そう、なのですか?」
「あぁ、絵を志す代わりに医術の道を1度通っている」
マーブル侍女長から、明日から3日間と言い渡された。トーナル氏も部屋から出て、モーネスと2人になると彼は幾つか質問をしてきた。それは、養護院に居た時の問診と同じだった。加えて違うのは、倒れた時の状況を確認された。
彼女の記憶と絵画の関連になにか引っかかりを覚えたモーネスは、「トーナル様とマーブル侍女長にも聞いてよいか?」と尋ねてきた。彼女は、「大丈夫です」と答えた。
診察は久しぶりだったが、短い年数の中で叩き込まれた現場での経験は活きていた。
彼女は、【ふた咳病】の犠牲者で、記憶と精神的なストレスが引き金で発作を起こしているかもしれない。無理に記憶の蓋を開けないのが一番だろうが……。
モーネスは彼女の診察を終え、「また明日くる」と言って大きな手を彼女の小さな手を握りかえした。
それは、患者を安心させるためでもあったが彼女を安心させたかった。ただ、それだけが、アイリスには小さな出来事ではあったが手の温もりを久しぶりに感じた。昔にも、幼い時にもあったが……もう、得ることができなくなった昔。再び、大きく温かな手が、優しく包み込んだ手を。彼が部屋から出た後も、確かめるように手を見つめた。
モーネスが部屋を出た後、アイリスは仕事以外は本を読んで過ごしていたが。ふと、文机の箱が目に入った。
侯爵家から王宮に出自する際に執事長から貰った箱にある手紙を久しぶりに手に取り読んだ。侯爵様の滑らかで強い筆跡だが、温かさを感じる言葉。そして、執事長の短い言葉だがアイリスを今も気にかけてくれている言葉。コック長の最近の話し。最近届いた手紙は封をしたままで、開けてもいなかった。いつもより厚みがあり、中になにか入っているようだった。
ペーパーナイフで丁寧に開けると、もう1つ手紙が入っていた。いつも通り、侯爵様たちからの手紙を読んでいく。
――アイリスへ――
王宮での仕事には、大分慣れてきただろうか? 当家に来た新しい絵画の手入れをする侍従は君の仕事にはやはり敵わないようだ。執事長の指導に、毎日、悲鳴を上げている。執事長も、君への絵画の書籍を贈りたいと言っていたのでそのうち贈る。
同封している封書は、私が保管してきた手紙だ。君宛の大事な手紙で、君にとって必要だろうと想い同封した。私の勝手な願いでもあるが、君に幸せになって欲しい。この手紙が、君の辛い気持ちや感情を起こしてしまうこともあるかも知れない。それでも、私が保管し続けるよりも……君に、アイリスに持っていて欲しい。読む決心がついたら、読んで欲しい。そばに、誰かいてくれてもいいだろう。
君のことを大切に想っているのは、意外と傍にいる、というのを忘れないで欲しい。
無論、私も侯爵家当主としての身分を超え、君を家族の様に思っている。
――ライペン・フルフィルメント――
侯爵の手紙の内容に書かれていた手紙は、随分と古いものだったが保管状態が良かった。しっかりと、【親愛なるアイリスへ】と宛名があった。裏を返すと、【常に君と供に……愛する私たちから】と。
心臓がドクドクと早くなり、読みたいが手が小さく震えている。
翌朝、モーネスが部屋を訪れるとアイリスは既に起きていてベッドの端に腰かけ朝食を済ませた後だった。
「おはよう、アイリス嬢。少し顔色が優れないようだが……」
「おはようございます。モーネス様。よくわかりません……ただ……」
「話しを聴きながら、診察をしよう」
「……はい……侯爵様、フルフィルメント様からの新しい手紙が届いていたのを忘れていたんです」
「いつもは、すぐに読んでいたのか?」
「はい。返事も早めに出していたので……その……手紙の中に……」
「アイリス嬢。昨夜はあまり眠れていない?目の下に隈が少し出ているし、脈も少し乱れている。無理して話さなくて大丈夫だ」
「……すみません」
「いや、謝る必要はない。具合が悪いのだから、眠れないこともある」
少し軽く手を握って話そうとしたモーネスの手を、アイリスが握っていた。まるで、まだ手を握っていて欲しいと願っている。モーネスはあえて手をそのまま離さずに、彼女の小さな手の甲の上に手を軽く載せた。ピクリと反応した手は、安心するように彼の手を軽く握る。
そのまま、2人はベッドの端に腰かけ外の庭園の話しをしたりした。チューリップの花が見ごろを終え、夏バラの蕾が膨らんできていることやパーティー以降、仲良くなったモーネスと同じアトリエを使っているヴォルフの様子。そして、ハルとヴォルフが心なしか良い関係になっていると。
アイリスは、ハルが「ヴォルフ様がわたしをからかうの!!」と言いながら笑顔で嬉しそうだったのを思いだした。きっと、ハルはヴォルフ様を慕っているのだろう。アイリスには、異性を慕う、というのが良くわからないのだが。ハルが嬉しそうだと、良いと思える。心があるのかすらわからないが、心臓のあたりが温かさを感じる。
そう、今、モーネスが話しながらアイリスの手を優しく握っていてくれている様に彼女の心臓のあたりが温かくドキドキとしている。
「モーネス様?」
「なにか、気になることでも?」
「はい……その、今、とても心臓のあたりが温かくドキドキしています」
「……っ~~~……」
「わたし変な事を言いましたか?」
「い、いや……意外な言葉だったので。少々、戸惑っているところだ」
「はい。あの、また手を握っていただけますか? そうしていると、良いのです」
「あぁ、君がそれで良いなら。いつでも手を握るよ」
部屋を出っていたモーネスは、考えた。誰が彼女を、『反応が薄い』『仕事だけ』とかって言っている。充分、感情が出ている? というよりも、感情の出方がなにか……こう、いや、今は……モーネスは自問自答しながら、彼女は今は患者だと言い聞かせた。
アトリエに戻ると、ハルとヴォルフが言い合いしながらじゃれあっているのに出くわした。
「お前たち……俺への当てつけか?!」
「「?!?!」」
「いや、なんでもない」
「モーネス、顔が赤いぞ? さっきまで診察だったんだろう?」
「モーネス様、アイリスの具合はどうでした?」
「……あぁ……まぁ、大丈夫だ……」
そう言っているモーネスの顔は真っ赤で熟れた林檎の様だった。まるで、想い人との時間を想い起こしている表情。ハルとヴォルフは、小さく「彼にもとうとう……」と言っていた。
居心地が悪く感じた彼は、「トーナル様とマーブル侍女長との話しを聴いてくる」と言い足早に去って行った。扉に足先をぶつけつつ。
侍女長室には、トーナル氏も待っていた。マーブルの仕事机の中央には、用意されていた書類があった。部屋の応接椅子に腰掛けるようトーナルが言うと、それに倣い腰をかけた。2人が書類を一緒に持ち、前に隣同士に腰掛ける。柔らかな物腰の妻であるマーブルと意思が硬いトーナル。2人が夫婦で上手くいくコツを知りたいのは山々だが、今は、アイリスの過去の状況から王宮入りするまでの話しを確認が先だった。
目の前に出された書類に目を通すようトーナルが言い、モーネスは一言一句見逃さないよう頭に叩き込みながら状況を整理し書類に目を通す。彼女が教会に保護された状況からの診察記録に始まり、養育院での養育記録。そして、彼女が初めて奉公したフルフィルメント侯爵家での記録。どれも、【感情がでない】という言葉が記録の中で多く出てきていた。『教会のステンドグラス下で夜を明かしている日が続いている。保護してから養育院へ移ってからも続いている。彼女の感情が戻る日はくるのだろうか?』『我々にはこれが限界なのだろうか?』『他の保護された子どもたちよりも症状が重い』……記録の途中に、彼女の家の事が短い文章にあった。
――アイリスを知っている侯爵家があった。どうやら、彼女の父親は画家を生業にしていたようだ。連絡をとると、養育院で美術の勉強に援助するという返事が届いた――
「……彼女の父親は、画家、だったのですか?」
「あぁ、それもお前と似たような考えがあって……その考えを実践してしまい王宮から出されてしまった。惜しい人物だった」
「彼の婚約者だった方は、既に身重で家に絶縁されての婚姻だったの」
「2人は、知っていたのですか? 彼女の親の事を?」
「えぇ、彼女を王宮に出自させたいというフルフィルメント侯爵様からの手紙で繋がりました。アイリスの両親と、アイリスの事が……」
「わたしが王宮画家長になるのを推してくれたのは、アイリスの父なのだ」
「えっ?!」
トーナルは懐かしみ惜しみ、アイリスの父の画家の才能が【ふた咳病】で奪われた事が後から分かり苦しんだ。アイリスを王宮画家居住区での仕事を一番難しい絵画の手入れに宛がったのも彼女の才能もあった。幼い頃より、彼女は父の絵画を観て、感じて育ったのだから。それを再度、芽を伸ばしてくれたフルフィルメント侯爵に感謝もした。
そして、マーブルは彼女を娘のように見守り侍女としての仕事もできるよう育てている。感情が完全に欠けていない事を信じて……。
今日の診察での彼女の様子を話すと、2人は手を握り合い顔を合わせ微笑んだ。その様子を見て、モーネスはこれが喜びを分かち合え悲しみを辛さを互いに支えあう夫婦なのだろうと……。
マーブル侍女長は、必要があればまた記録を見に来て良いと言ってくれモーネスは退出した。あとは、侍女長と王宮画家長との時間も必要を感じたからだ。それ以外に、夫婦としての……。
翌日も、モーネスは診察の間、アイリスの手を握り話しをした。一方的に話しているように思えたが、彼女は話しを聴いて時折聞き返したり質問をしてくる。特に、絵画の話しには興味をもち、今まで読んできた蔵書での疑問や手入れでの事をモーネスに聴いたりもしていた。
彼の描いている絵画が、気になっている。というのを、初めて聴き彼は浮足立った。
休みの3日が終わると、仕事の休日だった。マーブル侍女長はそこまでよんでいた。仕事の休みは2日間。ハルから、最後の休みの日に一緒に出掛けようと話があった。街に出かけるのは、久方ぶりだった。ハルと同室になるまでは、出かけることなく自室で本を読んでいるか? 侯爵家や養護院への手紙の返事を書いていた。レターセットは、王宮画家居住区にある店で買っていた。大抵の品は、出入りする商人の品で揃えられていたのでアイリスは困っていなかった。
今回は、ハルが「ヴォルフ様と……」と顔を少し赤くし嬉しそうに話していたのだ。デートする洋服を買いたいというので、一緒に出掛けることに承諾した。同じことをヴォルフも考えていたのも知らず……。
久方ぶりの街は賑わっていた。マルシェも開かれ、屋台料理も多く出店していた。よく売られているパンズ・ドゥ・チキンは、店によってソースが違い人気の店は行列になる。ガレットも、持ち歩けるドルチェのようにしている屋台やテーブル席のある店もある。
侍女たちが良く出入りする手ごろな値段で、着回しもきいたりお洒落着も売っている洋服店にハルと入った。数人の侍女が、「これがいいかしら?」と服を鏡の前であてがいながら選んでいる。ハルは、初夏に合う半袖の小花が散っているようなミディアム丈のワンピースと薄手のカーディガンを選んだ。ワンピースはサンライトイエローで、温かな太陽の色でハルの雰囲気に似合う。カーディガンは、リフレクションブルーで太陽に反射するのを映し出す空色のよう。
2人で店に居たら、他の侍女の小声が聞こえてきた。「あの人じゃない? 仮病使って王宮画家を独占してるっていうの」「あぁ、あの欠落侍女?」卑下する表情と瞳で、アイリスを睨んでいる。王宮画家は、モーネスのこと。彼は、体躯もしっかりしている上に、見目もよくヴォルフと並んでいる姿に黄色い声を出す侍女もいる。ヴォルフと良い仲のハルに対しても、言っていた。
アイリスは胸のうちの中で、黒いものを感じた。ハルはヴォルフ様と一緒にいて他のひとに迷惑をかけていない。ハルに嫌な言葉を浴びせている侍女たちが許せない、という……アイリスは知らず知らず手を強く握りしめていた。ハルが、彼女の握りしめている手をそっととり「大丈夫」と声をかけてくれると気持ちが和らいだ。
最近は、モーネスだけでなく、ハルやマーブル侍女長に手を握ってもらえるだけで落ち着く。特に、モーネスは落ち着くだけでなく、こう、もっと握りしめていて欲しい、温もりを……と考える。
会計を済ませ、店を出ると買い物袋を持ったヴォルフとモーネスに出逢った。と、同時に先ほどまでアイリスたちに嫌味を言っていた侍女たちが出てきて彼らに甘い声を出して声をかけていた。
「ヴォルフ様ぁ、モーネス様ぁ。偶然ですわぁ」
「ハル、買い物か?」
「はい。ヴォルフ様たちもですか?」
「っ!! ヴォルフ様、一緒にお茶でもどうですか?」
「すまない、君たちとお茶をするより俺たちはハルたちとの時間が欲しい」
「「なっ?!」」
「ヴォルフ。お前、そういう言葉をいつも言っているのか?」
「じゃないと伝わらないだろ? ハルを口説くのは」
「ヴォ、ヴォルフ様?! くくっ口説く? えっ、わたしを?!」
「絶賛口説き中だ、ハル。君をね?」
そう言うや否や、ハルの手を握り荷物を持って「じゃぁ、俺たちはこれで」と侍女たちの前を去る。
置いていたかれた侍女たちは、その場にへたり込み愕然としていた。
人気店のパンズ・ドゥ・チキンをベンチで頬張り、ハルは上機嫌だ。約束のデートの前の、デートになった。その意味で、ヴォルフも上機嫌でいる。2人掛けのベンチに、2人に分かれ座り食べている。隣は甘い空気に包まれ、モーネスは居心地が悪い。自分の隣のアイリスは、表情は乏しいがハルが嬉しそうなのが良いようだ。
手が軽く触れた瞬間、どちらともなくアイリスもモーネスも手を握りかえした。心地が良い。初夏の少し眩しくなり始めた陽射し。青々とした樹の葉。時折吹く柔らかい風。彼女の手の温もりを確かめるよう、モーネスは彼女の指に絡めて握った。場所を変えて歩いていても、彼女の手を握って歩いていた。画家居住区に近づいた時、「お前たち、そんなに親睦を深めていたんだな?」とヴォルフに言われて気が付いた。指を絡めた恋人繋ぎで歩いていたのを……。
「いや、これは……」
「モーネス様の手は、心地が良いです」
「っ、あ、ありがとう」
ハルはアイリスを抱きしめて、「良かった、良かった」と言って涙ぐんでいる。モーネスにとっては、自然と反応したことだったが彼女を安心させる行為だと言い聞かせた。
「これは治療だ、そうだ、治療だ」
「……お前、大丈夫か?」
しばらく、モーネスはアトリエで絵を描いている時、手を見つめ返していた。彼女のどこかに置き忘れた感情が、少しずつ新たな感情として芽生え始めたと同時に、モーネスは彼女に対して新たな感情を持ち始めた。
「モーネス・ハイランデルと言います。アイリス嬢、具合はどうです?」
「……はい、大分よくなりました……ありがとう、ございます」
「良かったです」
短い挨拶と会話の中で、彼は優しい眼差しの中でアイリスを見ていた。彼に瞳を向けられ、アイリスは何か気持ちの置きどころを考えていた。よく分からないが、落ち着かない。
手を擦るようにしていると、モーネスが「失礼」とひと言断り脈診をした。脈は幾らか早いがリズムは乱れはない。彼はひとまず安心した。あの日の、彼女はなにかに苦しんでいた。ただ、意識を取り戻し「ありがとう」と言った表情は柔らかで彼の気持ちを揺さぶった。
トーナルがしばらく仕事を休むように伝えたが、アイリスは3日で良いと答えた。その返答に、マーブル侍女長も渋った。本当は、1週間は休んでほしかった。彼女の今までの仕事への打ち込みは見事だが、なにかを忘れるため、思いださないため、のようにしか見えない。
「わかりました。3日間、しっかり休みなさい。その代わり、モーネスからの診察を受けなさい」
「モーネス様の?」
「安心なさい、彼は医術の心得があります。実際に医師としての免許も持っています」
「そう、なのですか?」
「あぁ、絵を志す代わりに医術の道を1度通っている」
マーブル侍女長から、明日から3日間と言い渡された。トーナル氏も部屋から出て、モーネスと2人になると彼は幾つか質問をしてきた。それは、養護院に居た時の問診と同じだった。加えて違うのは、倒れた時の状況を確認された。
彼女の記憶と絵画の関連になにか引っかかりを覚えたモーネスは、「トーナル様とマーブル侍女長にも聞いてよいか?」と尋ねてきた。彼女は、「大丈夫です」と答えた。
診察は久しぶりだったが、短い年数の中で叩き込まれた現場での経験は活きていた。
彼女は、【ふた咳病】の犠牲者で、記憶と精神的なストレスが引き金で発作を起こしているかもしれない。無理に記憶の蓋を開けないのが一番だろうが……。
モーネスは彼女の診察を終え、「また明日くる」と言って大きな手を彼女の小さな手を握りかえした。
それは、患者を安心させるためでもあったが彼女を安心させたかった。ただ、それだけが、アイリスには小さな出来事ではあったが手の温もりを久しぶりに感じた。昔にも、幼い時にもあったが……もう、得ることができなくなった昔。再び、大きく温かな手が、優しく包み込んだ手を。彼が部屋から出た後も、確かめるように手を見つめた。
モーネスが部屋を出た後、アイリスは仕事以外は本を読んで過ごしていたが。ふと、文机の箱が目に入った。
侯爵家から王宮に出自する際に執事長から貰った箱にある手紙を久しぶりに手に取り読んだ。侯爵様の滑らかで強い筆跡だが、温かさを感じる言葉。そして、執事長の短い言葉だがアイリスを今も気にかけてくれている言葉。コック長の最近の話し。最近届いた手紙は封をしたままで、開けてもいなかった。いつもより厚みがあり、中になにか入っているようだった。
ペーパーナイフで丁寧に開けると、もう1つ手紙が入っていた。いつも通り、侯爵様たちからの手紙を読んでいく。
――アイリスへ――
王宮での仕事には、大分慣れてきただろうか? 当家に来た新しい絵画の手入れをする侍従は君の仕事にはやはり敵わないようだ。執事長の指導に、毎日、悲鳴を上げている。執事長も、君への絵画の書籍を贈りたいと言っていたのでそのうち贈る。
同封している封書は、私が保管してきた手紙だ。君宛の大事な手紙で、君にとって必要だろうと想い同封した。私の勝手な願いでもあるが、君に幸せになって欲しい。この手紙が、君の辛い気持ちや感情を起こしてしまうこともあるかも知れない。それでも、私が保管し続けるよりも……君に、アイリスに持っていて欲しい。読む決心がついたら、読んで欲しい。そばに、誰かいてくれてもいいだろう。
君のことを大切に想っているのは、意外と傍にいる、というのを忘れないで欲しい。
無論、私も侯爵家当主としての身分を超え、君を家族の様に思っている。
――ライペン・フルフィルメント――
侯爵の手紙の内容に書かれていた手紙は、随分と古いものだったが保管状態が良かった。しっかりと、【親愛なるアイリスへ】と宛名があった。裏を返すと、【常に君と供に……愛する私たちから】と。
心臓がドクドクと早くなり、読みたいが手が小さく震えている。
翌朝、モーネスが部屋を訪れるとアイリスは既に起きていてベッドの端に腰かけ朝食を済ませた後だった。
「おはよう、アイリス嬢。少し顔色が優れないようだが……」
「おはようございます。モーネス様。よくわかりません……ただ……」
「話しを聴きながら、診察をしよう」
「……はい……侯爵様、フルフィルメント様からの新しい手紙が届いていたのを忘れていたんです」
「いつもは、すぐに読んでいたのか?」
「はい。返事も早めに出していたので……その……手紙の中に……」
「アイリス嬢。昨夜はあまり眠れていない?目の下に隈が少し出ているし、脈も少し乱れている。無理して話さなくて大丈夫だ」
「……すみません」
「いや、謝る必要はない。具合が悪いのだから、眠れないこともある」
少し軽く手を握って話そうとしたモーネスの手を、アイリスが握っていた。まるで、まだ手を握っていて欲しいと願っている。モーネスはあえて手をそのまま離さずに、彼女の小さな手の甲の上に手を軽く載せた。ピクリと反応した手は、安心するように彼の手を軽く握る。
そのまま、2人はベッドの端に腰かけ外の庭園の話しをしたりした。チューリップの花が見ごろを終え、夏バラの蕾が膨らんできていることやパーティー以降、仲良くなったモーネスと同じアトリエを使っているヴォルフの様子。そして、ハルとヴォルフが心なしか良い関係になっていると。
アイリスは、ハルが「ヴォルフ様がわたしをからかうの!!」と言いながら笑顔で嬉しそうだったのを思いだした。きっと、ハルはヴォルフ様を慕っているのだろう。アイリスには、異性を慕う、というのが良くわからないのだが。ハルが嬉しそうだと、良いと思える。心があるのかすらわからないが、心臓のあたりが温かさを感じる。
そう、今、モーネスが話しながらアイリスの手を優しく握っていてくれている様に彼女の心臓のあたりが温かくドキドキとしている。
「モーネス様?」
「なにか、気になることでも?」
「はい……その、今、とても心臓のあたりが温かくドキドキしています」
「……っ~~~……」
「わたし変な事を言いましたか?」
「い、いや……意外な言葉だったので。少々、戸惑っているところだ」
「はい。あの、また手を握っていただけますか? そうしていると、良いのです」
「あぁ、君がそれで良いなら。いつでも手を握るよ」
部屋を出っていたモーネスは、考えた。誰が彼女を、『反応が薄い』『仕事だけ』とかって言っている。充分、感情が出ている? というよりも、感情の出方がなにか……こう、いや、今は……モーネスは自問自答しながら、彼女は今は患者だと言い聞かせた。
アトリエに戻ると、ハルとヴォルフが言い合いしながらじゃれあっているのに出くわした。
「お前たち……俺への当てつけか?!」
「「?!?!」」
「いや、なんでもない」
「モーネス、顔が赤いぞ? さっきまで診察だったんだろう?」
「モーネス様、アイリスの具合はどうでした?」
「……あぁ……まぁ、大丈夫だ……」
そう言っているモーネスの顔は真っ赤で熟れた林檎の様だった。まるで、想い人との時間を想い起こしている表情。ハルとヴォルフは、小さく「彼にもとうとう……」と言っていた。
居心地が悪く感じた彼は、「トーナル様とマーブル侍女長との話しを聴いてくる」と言い足早に去って行った。扉に足先をぶつけつつ。
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――アイリスを知っている侯爵家があった。どうやら、彼女の父親は画家を生業にしていたようだ。連絡をとると、養育院で美術の勉強に援助するという返事が届いた――
「……彼女の父親は、画家、だったのですか?」
「あぁ、それもお前と似たような考えがあって……その考えを実践してしまい王宮から出されてしまった。惜しい人物だった」
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「わたしが王宮画家長になるのを推してくれたのは、アイリスの父なのだ」
「えっ?!」
トーナルは懐かしみ惜しみ、アイリスの父の画家の才能が【ふた咳病】で奪われた事が後から分かり苦しんだ。アイリスを王宮画家居住区での仕事を一番難しい絵画の手入れに宛がったのも彼女の才能もあった。幼い頃より、彼女は父の絵画を観て、感じて育ったのだから。それを再度、芽を伸ばしてくれたフルフィルメント侯爵に感謝もした。
そして、マーブルは彼女を娘のように見守り侍女としての仕事もできるよう育てている。感情が完全に欠けていない事を信じて……。
今日の診察での彼女の様子を話すと、2人は手を握り合い顔を合わせ微笑んだ。その様子を見て、モーネスはこれが喜びを分かち合え悲しみを辛さを互いに支えあう夫婦なのだろうと……。
マーブル侍女長は、必要があればまた記録を見に来て良いと言ってくれモーネスは退出した。あとは、侍女長と王宮画家長との時間も必要を感じたからだ。それ以外に、夫婦としての……。
翌日も、モーネスは診察の間、アイリスの手を握り話しをした。一方的に話しているように思えたが、彼女は話しを聴いて時折聞き返したり質問をしてくる。特に、絵画の話しには興味をもち、今まで読んできた蔵書での疑問や手入れでの事をモーネスに聴いたりもしていた。
彼の描いている絵画が、気になっている。というのを、初めて聴き彼は浮足立った。
休みの3日が終わると、仕事の休日だった。マーブル侍女長はそこまでよんでいた。仕事の休みは2日間。ハルから、最後の休みの日に一緒に出掛けようと話があった。街に出かけるのは、久方ぶりだった。ハルと同室になるまでは、出かけることなく自室で本を読んでいるか? 侯爵家や養護院への手紙の返事を書いていた。レターセットは、王宮画家居住区にある店で買っていた。大抵の品は、出入りする商人の品で揃えられていたのでアイリスは困っていなかった。
今回は、ハルが「ヴォルフ様と……」と顔を少し赤くし嬉しそうに話していたのだ。デートする洋服を買いたいというので、一緒に出掛けることに承諾した。同じことをヴォルフも考えていたのも知らず……。
久方ぶりの街は賑わっていた。マルシェも開かれ、屋台料理も多く出店していた。よく売られているパンズ・ドゥ・チキンは、店によってソースが違い人気の店は行列になる。ガレットも、持ち歩けるドルチェのようにしている屋台やテーブル席のある店もある。
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アイリスは胸のうちの中で、黒いものを感じた。ハルはヴォルフ様と一緒にいて他のひとに迷惑をかけていない。ハルに嫌な言葉を浴びせている侍女たちが許せない、という……アイリスは知らず知らず手を強く握りしめていた。ハルが、彼女の握りしめている手をそっととり「大丈夫」と声をかけてくれると気持ちが和らいだ。
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会計を済ませ、店を出ると買い物袋を持ったヴォルフとモーネスに出逢った。と、同時に先ほどまでアイリスたちに嫌味を言っていた侍女たちが出てきて彼らに甘い声を出して声をかけていた。
「ヴォルフ様ぁ、モーネス様ぁ。偶然ですわぁ」
「ハル、買い物か?」
「はい。ヴォルフ様たちもですか?」
「っ!! ヴォルフ様、一緒にお茶でもどうですか?」
「すまない、君たちとお茶をするより俺たちはハルたちとの時間が欲しい」
「「なっ?!」」
「ヴォルフ。お前、そういう言葉をいつも言っているのか?」
「じゃないと伝わらないだろ? ハルを口説くのは」
「ヴォ、ヴォルフ様?! くくっ口説く? えっ、わたしを?!」
「絶賛口説き中だ、ハル。君をね?」
そう言うや否や、ハルの手を握り荷物を持って「じゃぁ、俺たちはこれで」と侍女たちの前を去る。
置いていたかれた侍女たちは、その場にへたり込み愕然としていた。
人気店のパンズ・ドゥ・チキンをベンチで頬張り、ハルは上機嫌だ。約束のデートの前の、デートになった。その意味で、ヴォルフも上機嫌でいる。2人掛けのベンチに、2人に分かれ座り食べている。隣は甘い空気に包まれ、モーネスは居心地が悪い。自分の隣のアイリスは、表情は乏しいがハルが嬉しそうなのが良いようだ。
手が軽く触れた瞬間、どちらともなくアイリスもモーネスも手を握りかえした。心地が良い。初夏の少し眩しくなり始めた陽射し。青々とした樹の葉。時折吹く柔らかい風。彼女の手の温もりを確かめるよう、モーネスは彼女の指に絡めて握った。場所を変えて歩いていても、彼女の手を握って歩いていた。画家居住区に近づいた時、「お前たち、そんなに親睦を深めていたんだな?」とヴォルフに言われて気が付いた。指を絡めた恋人繋ぎで歩いていたのを……。
「いや、これは……」
「モーネス様の手は、心地が良いです」
「っ、あ、ありがとう」
ハルはアイリスを抱きしめて、「良かった、良かった」と言って涙ぐんでいる。モーネスにとっては、自然と反応したことだったが彼女を安心させる行為だと言い聞かせた。
「これは治療だ、そうだ、治療だ」
「……お前、大丈夫か?」
しばらく、モーネスはアトリエで絵を描いている時、手を見つめ返していた。彼女のどこかに置き忘れた感情が、少しずつ新たな感情として芽生え始めたと同時に、モーネスは彼女に対して新たな感情を持ち始めた。
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⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
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