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悩める騎士
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女神様の笑顔が欲しい。女神様といたい。
ーー俺は…… 女神様を、彼女を…… 彼女に触れ…… ーー
今日は、商店街で一緒に買い物に出てきた。彼はそわそわし続けていて、荷物はしっかり抱えている。
段ボールに入ったジャガ芋とタマネギや人参。彼の大好きカレーライスと、最近気に入った肉じゃがを作る材料。両方とも材料が同じだからと、作ったら……「女神様のご飯は心も満たされます!! 」と、喜んでいる。
彼の笑顔が見たい、その気持ちでいる。ただ、未だに、呼んでくれない。
「め、女神様? 次は、どの店ですか?」
「…………」
「女神様?」
「……えっ、あ、うん……お米屋さん」
私の顔をのぞき込むようにして、尋ねた彼。何か、不安げにしている。
彼を心配させまいと、笑顔を作ったけど。心の底から笑えない自分がいる。
ーーどんどん、拗れていっているよね? ーー
次の日から、再び仕事になる。週末に買い出しに行っても、2人の会話はぎこちなく。さらに、ぎこちなさを増していく。
クリスマスも過ぎ、正月も終わり、2月になった。
寒さが増す中、ハロルドは今日も仕事に勤しんでいた。仕事だけは、必死にした。その間は、女神様のことを深く考えずにいられたから。
昼になると、彼女の手製弁当を食べる。肉じゃがのおかず。白い飯。青菜の和え物。
「今日もうまそうだなぁ」
「はい、うまいです」
「どうした? ハル?」
「なにがですか? 若殿?」
返事がうまくできない。いつもなら、ハロルドは若殿にからかわれても照れながら答えている。「女神様」といいながら。
「うまくいってないんじゃないか? お前の女神様と」
「っ!! そ、そんな事は……」
「プレゼント、結局どうなった? ダメだったか?」
「……はい……」
彼女は結局受け取ってくれていない。店に返すのも気が引けて、自分に与えられた引き出しに大事にしまっている。いつか、女神様は受け取ってくれると信じている。
若殿に、ポツリポツリと話していた。その間、頷いて聞いてくれた。
「どうしたいんだ? 彼女と?」
「どう? とは……俺は、ただ……傍に……」
「自分の気持ちにもう少し、正直になっていいと思うぞ」
「自分の、気持ち……しょうじき……」
仕事を終え、女神様にメッセージをする。
【仕事 おわりました】
ピロン。
【おつかれさま 今日はすこし おそくなります】
珍しく、遅くなるという返事。
家に帰ってからも、時計が進む針が遅く感じる。
アヤネ殿の帰りも遅いからと、フリードがやってきた。王子が簡単に作ると、台所で料理をしている。
「王子は、何故、台所に?」
「アヤネちゃんがいつも作れるわけじゃないし。帰ってきて疲れていたら、ご飯あったら嬉しいでしょ?」
「……はい……」
帰ったら、女神様がご飯を用意してくれて、風呂の後に髪の毛を乾かしてくれて。一緒にご飯を食べて、一緒に食器を洗って。
女神様がお風呂上がったら、一緒にお茶して。一緒のベッドで眠って、朝を迎える。
当たり前だった。それが……。
「俺は、女神様といたいんです」
「うん、知ってる」
「女神様と、ずっと……ずっといて。お仕えしたい……のに……なにか、違うんです」
「仕えたいけど?」
「そ、その……一緒にいるには、どうしたら……」
フリードが小さな溜め息をついた。本当に分かっていないんだな。と。策士とまで言われた剣豪は、もう、この世界では関係ないことも、女神様とか関係ないことを。
自分の気持ちにも、何も気づいていないこと。アヤネちゃんと一緒にいたいということは、彼女を好きになっているのに。
「彼女に自分の気持ち伝える前に、自分の気持ちに気がつかないと」
「俺の気持ち……若殿と同じ事を言うんですね? 王子も」
ハロルドは、1人部屋で歌音を待ちながら一生懸命に考えた。彼女の欲しいモノすら分からない自分。忠誠をもって仕えると言いながら、結局は彼女に助けられたり。彼女が今のハロルドを支えてくれている。
考えすぎて、ソファで横になっているうちに彼は眠っていた。
ーー俺は…… 女神様を、彼女を…… 彼女に触れ…… ーー
今日は、商店街で一緒に買い物に出てきた。彼はそわそわし続けていて、荷物はしっかり抱えている。
段ボールに入ったジャガ芋とタマネギや人参。彼の大好きカレーライスと、最近気に入った肉じゃがを作る材料。両方とも材料が同じだからと、作ったら……「女神様のご飯は心も満たされます!! 」と、喜んでいる。
彼の笑顔が見たい、その気持ちでいる。ただ、未だに、呼んでくれない。
「め、女神様? 次は、どの店ですか?」
「…………」
「女神様?」
「……えっ、あ、うん……お米屋さん」
私の顔をのぞき込むようにして、尋ねた彼。何か、不安げにしている。
彼を心配させまいと、笑顔を作ったけど。心の底から笑えない自分がいる。
ーーどんどん、拗れていっているよね? ーー
次の日から、再び仕事になる。週末に買い出しに行っても、2人の会話はぎこちなく。さらに、ぎこちなさを増していく。
クリスマスも過ぎ、正月も終わり、2月になった。
寒さが増す中、ハロルドは今日も仕事に勤しんでいた。仕事だけは、必死にした。その間は、女神様のことを深く考えずにいられたから。
昼になると、彼女の手製弁当を食べる。肉じゃがのおかず。白い飯。青菜の和え物。
「今日もうまそうだなぁ」
「はい、うまいです」
「どうした? ハル?」
「なにがですか? 若殿?」
返事がうまくできない。いつもなら、ハロルドは若殿にからかわれても照れながら答えている。「女神様」といいながら。
「うまくいってないんじゃないか? お前の女神様と」
「っ!! そ、そんな事は……」
「プレゼント、結局どうなった? ダメだったか?」
「……はい……」
彼女は結局受け取ってくれていない。店に返すのも気が引けて、自分に与えられた引き出しに大事にしまっている。いつか、女神様は受け取ってくれると信じている。
若殿に、ポツリポツリと話していた。その間、頷いて聞いてくれた。
「どうしたいんだ? 彼女と?」
「どう? とは……俺は、ただ……傍に……」
「自分の気持ちにもう少し、正直になっていいと思うぞ」
「自分の、気持ち……しょうじき……」
仕事を終え、女神様にメッセージをする。
【仕事 おわりました】
ピロン。
【おつかれさま 今日はすこし おそくなります】
珍しく、遅くなるという返事。
家に帰ってからも、時計が進む針が遅く感じる。
アヤネ殿の帰りも遅いからと、フリードがやってきた。王子が簡単に作ると、台所で料理をしている。
「王子は、何故、台所に?」
「アヤネちゃんがいつも作れるわけじゃないし。帰ってきて疲れていたら、ご飯あったら嬉しいでしょ?」
「……はい……」
帰ったら、女神様がご飯を用意してくれて、風呂の後に髪の毛を乾かしてくれて。一緒にご飯を食べて、一緒に食器を洗って。
女神様がお風呂上がったら、一緒にお茶して。一緒のベッドで眠って、朝を迎える。
当たり前だった。それが……。
「俺は、女神様といたいんです」
「うん、知ってる」
「女神様と、ずっと……ずっといて。お仕えしたい……のに……なにか、違うんです」
「仕えたいけど?」
「そ、その……一緒にいるには、どうしたら……」
フリードが小さな溜め息をついた。本当に分かっていないんだな。と。策士とまで言われた剣豪は、もう、この世界では関係ないことも、女神様とか関係ないことを。
自分の気持ちにも、何も気づいていないこと。アヤネちゃんと一緒にいたいということは、彼女を好きになっているのに。
「彼女に自分の気持ち伝える前に、自分の気持ちに気がつかないと」
「俺の気持ち……若殿と同じ事を言うんですね? 王子も」
ハロルドは、1人部屋で歌音を待ちながら一生懸命に考えた。彼女の欲しいモノすら分からない自分。忠誠をもって仕えると言いながら、結局は彼女に助けられたり。彼女が今のハロルドを支えてくれている。
考えすぎて、ソファで横になっているうちに彼は眠っていた。
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