祝福は貴方だけに捧げます!!

中村湊

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彼女のセカイ

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 あのシナリオ。ここが、彼女のセカイだとすると……恐い。サラの力が、学園であんなカタチで高めていたなら。サラディンは……。 脂汗がとまらなくなる。
 目が覚めた時、変な声を出していたのでリヒャルトを起こしてしまっていた。というよりも、彼はロイから届いた手紙が額に激突されて起きていた。

 ーーオネエちゃん 手紙の送り方、もう少し考えようーー

 「アカネ……大丈夫か?」
 「あっ……変な声でした、よね?」
 「酷い汗だ……それに……」
 「んっ……あっ……」

 抱き寄せられて、キスをされた。驚いた、というより……落ちついてくる。慰めてくれているんだろうな……彼は、不器用なところもあるし。直球過ぎるときが、多々あったけど。
 彼の首筋にキスをし、「ありがとう」と言ったら。スイッチが入った……らしい。
 その後が、大変でした。はい……もう、朝から夢のことをスッカリサッパリ忘れてしまったくらいに。キスされまくりました。

 「あの、リヒャルト様? 手紙、きていたんですよね?」
 「あぁ、あのロイからだが……なんだが、気になる書き方だった」
 「ロイ公爵から?」
 「気にくわないが、ロイはマリアが気になるらしい」
 「へっ? 心配ではなく?」
 「君に好意を持っているんだ!!」

 えーっと、この人は、どこをどう解釈されているのでしょうか? とりあえず、手紙を読ませて頂きました。
 うん、ありがとう。オネエちゃん。見事に、心配というのを彼はしています。ロイ公爵が私を気になっている、という意味での心配を。

 「リヒャルト様にお話しがあります」
 「な、何だろうか? 別れ話は受け付けない!! 婚姻だけなら受け付ける!!」
 「ソレは置いておいてください……とても大事な話です」
 「婚姻以外に大事な話?」

 見事に悩んでいる。私が昔の記憶があるのを忘れていませんか?
 
 リヒャルト様の手をとった。

 「今から話すのは……アカネ、私の昔の記憶と。その記憶の中のリヒャルト様たちの物語です」
 「アカネの記憶……俺たちの物語?」
 「はい、とても大事なことです」
 「……わかった……」

 ゲーム、というと分からなくなると思い。声が出て動く絵本のように話しが進むという物語と言った。
 『聖騎士団』が出てくる物語。【与える者】の令嬢と騎士との恋模様で……R18系、ははぶきました。はっきり言うと、色々突っ込まれると困るし、言いにくい。
 恋人同士になったり、同性婚とかもあったり。令嬢が聖騎士団の騎士さまと幸せになれる話が中心だと。色んなエンディングがあることもは話しました。最悪エンディングも。
 リヒャルト様は、私の、茜の時に大々大好きな登場人物で。悪役騎士であると、正直に言いました。

 「俺は……悪いヤツだったのか? その物語では……」
 「えぇっと、私としては……とても素敵な騎士さまで。大好きです!!」
 「アカネが好きでいるなら良い」
 「あっ、そうですか」
 「アカネが好きでいてくれたかが、大事なんだ!!」
 「恐れ入ります」

 記憶の中の、例の集まりでのコトを加えて話した。
 どうしても、ゲームの世界だけど……シナリオ、つまりサラの作ったシナリオのセカイが色濃い。

 「物語が違っているのと。サラディン嬢とエリザベス嬢……か」
 「はい」
 「マリア、君はあまり首を突っ込まないように」
 「えっ、何故です? ここまで話したんですよ?!」
 「君に何かあっては……俺は、そこまで強くない」

 彼があのとき見せた表情を思い出した。霧に取りこまれそうになった時の、あの時の彼。
 彼がいなかったら、と思うと恐い。
 私も、彼を失いたくない。
 
 「リヒャルト様……無茶は、しないでください」
 「あぁ……君にだけ、無茶をする」
 「えぇっと……その意味は?」
 「キス、しよう」

 言った途端に、彼は……以前見た光景の様に、首根っこ持たれて、見事に壁に向けて飛ばされていた。
 あぁ、助かった。オネエちゃん。

 「ったく、返事がおせぇんだよ!!」
 「……邪魔、するな……」
 「ほぅ、オレにそういう事言うのか? てめぇは……ちょっと、隣の部屋行こうな?」
 「ちょっ、待て!! マリア、頼む!!」
 「ロイ公爵? お願い、彼を許して?」
 「……マリア? いいの? また調子に乗ってやらかすよ、このアホ」
 「うーん、その時は……おいたしたら、お預けって言う」
 
 「お預け」という言葉を聞いた彼が、がっくりとうなだれている。うん、何をどこまで想像しているかは。考えないで、おこう。
 ロイ公爵が来たのは、手紙の返事が遅すぎたのもあったけれど。彼自身が入手した嫌な情報だった。

 アルバルト様もやってきた。
 私は、身支度を済ませて彼の執務室にいた。ロイ公爵がリヒャルト様を睨んでますけど……ね? だって、大事な話するのに、なんでまたリヒャルト様の膝の上なんですか?

 「リヒャルト様? これから大事な話しなんですよね?」
 「そうだな」
 「コレ、やめませんか?」
 「なにがだ?」
 「膝の上、乗せるの」
 「俺が寂しいんだ……マリアに触れていたい」
 
 あっ、オネエちゃん。すんごい、遠い目。ごめんなさい。だって、こんなに大きい身体なのに。鋭い瞳なのに。耳と尻尾が見えてるんです!! へにゃって、なって、瞳潤ませてますよ? リヒャルト様が?!

 「っ~、萌える」
 「マリア嬢、萌えるって何?」
 「えぇっと……堪らなく好きな状況?」
 「マリア、それ、逆効果よ?」

 アルバルト様に解説した言葉で、リヒャルト様がブンブン尻尾しっぽ振って……頬ずりしてきた。
 彼を、グイグイと押して少し距離を置いてから本題に入った。無理矢理。

 ロイ公爵によると、騎士含め一般兵全体の半分近くが、魔法の力を異様なまでに高め続けてきている状況になっていると。特別寮出身の、マリアと同期だった騎士見習いから段々と増えた。
 そして、同期の【与える者】の新人の力が、異様に強くなっていると。エリザベス嬢の姿を、見かけていないらしい。
 本来、魔法の力は遣うと減る。減った力は休息か、祝福を貰うかで遣った分が戻る。本人が持つ魔法の力は、レベルが上がるというのはない。
 ここが、RPGとは違う。スキルは増えるが、レベルは上がらない。MPポイントは、みんな持っている魔法の器が生まれ持って違うために、増えることはないのだという。
 つまり、魔法の力がもとに戻るだけでなく、力が増幅していっている状態が続くのはオカシイのだ。器が大きくならないのだから、大きくなり続ける事態が異様。

 「教会長はなんと言っている?」
 「僕も聞いた。アレは禁忌の行為を超えた、造ったモノみたいって」
 「アタシは、上に言っておいたから」
 「あぁ、助かる。事後報告は危ないからな……あの方は」
 「そうだね。リヒャルトの時、僕とロイが酷いとばっちり受けてるもん」
 「そぉねぇ……上に、マリアの事は話したの?」
 「私のこと?」
 「……あっ……」
 「「早く言いな!!」」

 いや、上って誰? とばっちり受けるくらいに大変な人って。教会長さんじゃないって……いやいや、違うよね?
 リヒャルト様は、聖騎士団を辞めて、仕事は領主様。だよね?
 アレ? でも、なんで今でも聖騎士団の皆様とこう話し合いとか、ロイ公爵と連絡をこう取り合っていたり。まるで、なにか違うお仕事されているみたいですが……。
 思わず、彼を見つめていた。
 なにを思ったのか、私に見つめられているのが嬉しかったのか……キス、されました。アルバルト様とロイ公爵の面前めんぜんで。そりゃぁ、濃厚でとろけて、あっつーーーーーい、ディープキス!!

 「……ごめん……マリア? 機嫌直してくれないか?」
 「…………」
 「あまりにも君が可愛いから、つい……」
 「つい、じゃないです!! リヒャルト様!! 大事な話しの最中でしたよね? 何してるんですか!!」
 「はい」

 私もキスに流されましたよ!! 大切なお話しの腰を折りましたよ? 悪いですよ!! でも、顔を見たら……可愛いから、キスって、あなたはそこら中でキスかますんですかぁ!!
 叫びたいのをこらえている、自分が偉い。

 ドガンッ!!

 厚めの封書の手紙が、リヒャルト様の額めがけ激突して届いた。ナイスタイミング!! でも、すごい音がした。
 彼に手紙を出す人。なにか、あるのでしょうか?

 「あら、噂をすれば……」
 「リヒャルト、報告してなかったの。バレたね?」
 「……あぁ……」

 手紙には蜜蝋で押印されていた。王家の印。
 ワルバーン公爵だから、王家から手紙……直接、額に激突させる勢いで出す?!
 手紙を開けた彼が少し、青ざめていた。

 「マリア、これから王宮に一緒に行くぞ」
 「えっ、一緒に? どうしてですか?」
 「婚約報告をしに行く」
 「誰と誰のですか?」
 「俺とマリアの婚約報告」

 えっ、今、しれっと言いました? 婚約報告って。
 アルバルト様とロイ公爵が、「一緒にいるから安心して」と言っている。
 うん、コレ、色んな意味でスゴイ状態。でもね、なにか1つ忘れていません? リヒャルト様?
 私、あなたに。いーーーーーーちども、正式な婚約申し込みすらされていませんからーーーーーー!! 告白はされましたけど!!
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