3 / 19
ただただ地獄
しおりを挟む
レッサーデーモンが一歩一歩こっちに向かって近づいてくるのを見て、彼の心の中は恐怖に満たされていた。足掻こうにも、まぶたを開けるのが精一杯の彼だ、身体は脳から発された『この場から逃げる』という命令に従うことができなかった。
スリは小沼の前まで歩き、刃物も使わずにその鋭い爪で彼の腕に向かって一振り。それだけで鮮やかな色をした血がダラダラと流れ出た。
スリはそれを見て舌舐めずりをした。傷口をから血を絞り出すように押し、ガラスの容器にそれを入れる。
本来ならかなりの痛みであるが、彼は暴れたりしなかった。身動き一つ取れない状態であるのも一つの原因だが、腕が切られる前に全身を焼かれて今更これ程度の苦痛に身体が反応しなかったというのも大きい。
その瓶の容量はそこそこあり、そろそろいっぱいになる時には小沼は全身が冷たく、思考能力は再び低下し始めた。
血をとる間、スリはその爪に付いている血を無上の美味を味わうが如く啜っていた。その貪欲を表情化した顔から見てとれる。
小沼:その時、僕は本当にゾッとしました。
しかし、その血を啜る動作が何かアルダスの癪にさわったのか、苛立ちを含んだ咳払いが聞こえてきた。
スリはビクッとして直ぐに小沼の口をこじ開けて6番目のポーションをその中に流した。
ポーションが口に入る時に少し甘い味がした。しかしそれと真逆なのがその恐るべし効力である。
暫くして、小沼の全身に激痛が迸った。全身の火傷を上回るほどの痛み、それはまるで皮膚が引き裂かれたようなものだった。
彼は生まれて初めてこんな苦痛を味わった。動かせない筈の喉がついに仕事を始めて『悲鳴』をあげた。
小沼の悶え苦しんでいる様子はを見て、アルダスは満足気に頷いた。
「引き裂きポーションは効力があるようだな、人族が真実ポーションになんらかの耐性があるのか、それともこいつが特殊なのか、或いは単にさっきのポーションに問題があったのか?」
アルダスは引き裂きポーションの効力が強くなるのは後半だと知っているが、これ以上小沼の悲鳴を聞くのは興味がなかった。
「スリ!ヤツを地下牢に入れてよく監視しろ、一晩何も食わせるな!もし実験中に死んでしまったのなら、お前の食べ物にしてやってもいい。」
スリはこれに大喜びして、御世辞やら何やらが連なるようにして口から出た。
「但し、もし私がお前が盗み食いしようというのを知ったら、お前が『実験台353』になる!」
スリは実験室にいる時間は短くなかった。今までの『実験台』を思えば、恐怖して震え上がった。
その震えを鎮めようとしているのか、一言も発せず小沼を引きずって実験室の外に向かっていく。
レッサーデーモンの力は見た目よりも大きく、小沼の身体は途中であっちこっちにぶつけられながらジメジメとした地下室の中に投げられた。
「さっさと死ね、クソッタレが!スリ様はまだ人族を味わったことはないからな!」
レッサーデーモンはアルダスの前の慇懃無礼の振る舞いとは打って変わって、乱暴に小沼に蹴りを入れる。
未練がましくまだ血が僅かに付いている爪を舐めて小沼の方を見る。目にはさっきと同じ貪欲の色が浮かぶが、やはりアルダスの命令に背く程の度胸はないのか牢屋に閉めた後に出て行った。
『引き裂きポーション』の効力の本番は後半、痛みは当初の10倍近くに達していた。
その時、脳内にある声が響いた。
『正体不明な物質を発見、『解毒』をダウンロードしますか?』
『吸収可能な物質を発見、『吸収』を開始しますか?』
『使用者の意識状態を確認、強制的に『吸収』を開始します』
『使用者の意識状態を確認、強制的に『解毒』をダウンロードします』
『只今から『解毒』をダウンロードします』
『只今から『吸収』を開始します』
『記憶ファイルの解凍を開始します』
その声と共に痛みが軽くなっていく、火傷の痛みはまだかなり残っているが、さっきの痛みを知っている小沼にとってはどうってことなかった。
お陰で思考能力も大分戻ってきた。まともな思考ができるようになり、小沼もやっと我にかえった時にはその声はもう響いてなかった。幻覚と疑ったのも一瞬、そんなことを考える余裕もなくなった。
なぜなら彼は脳内で急に増えている大量な情報に驚き、呆然としていた。目が覚めた時に頭の中に何かがあると彼は感じたが、このゴタゴタでそれが解凍された。
彼はもう元の『小沼敦』ではなく、『アーサー』という少年、そしてここも地球ではなく、違う世界である。
(やっぱり異世界転生だ!)
小沼はオタク軍団に所属しているラノベ大好きなオタクだった。すぐさま現状を認識した。
(転生モノはよく読むけど、こんなに凄惨なのは嫌だな。こういう転生先なのも読んだことはあるけど、実際にやらされたら絶望感が半端ないな。マジであいつらなんでこんなのを乗り越えられるのやら……)
スリは小沼の前まで歩き、刃物も使わずにその鋭い爪で彼の腕に向かって一振り。それだけで鮮やかな色をした血がダラダラと流れ出た。
スリはそれを見て舌舐めずりをした。傷口をから血を絞り出すように押し、ガラスの容器にそれを入れる。
本来ならかなりの痛みであるが、彼は暴れたりしなかった。身動き一つ取れない状態であるのも一つの原因だが、腕が切られる前に全身を焼かれて今更これ程度の苦痛に身体が反応しなかったというのも大きい。
その瓶の容量はそこそこあり、そろそろいっぱいになる時には小沼は全身が冷たく、思考能力は再び低下し始めた。
血をとる間、スリはその爪に付いている血を無上の美味を味わうが如く啜っていた。その貪欲を表情化した顔から見てとれる。
小沼:その時、僕は本当にゾッとしました。
しかし、その血を啜る動作が何かアルダスの癪にさわったのか、苛立ちを含んだ咳払いが聞こえてきた。
スリはビクッとして直ぐに小沼の口をこじ開けて6番目のポーションをその中に流した。
ポーションが口に入る時に少し甘い味がした。しかしそれと真逆なのがその恐るべし効力である。
暫くして、小沼の全身に激痛が迸った。全身の火傷を上回るほどの痛み、それはまるで皮膚が引き裂かれたようなものだった。
彼は生まれて初めてこんな苦痛を味わった。動かせない筈の喉がついに仕事を始めて『悲鳴』をあげた。
小沼の悶え苦しんでいる様子はを見て、アルダスは満足気に頷いた。
「引き裂きポーションは効力があるようだな、人族が真実ポーションになんらかの耐性があるのか、それともこいつが特殊なのか、或いは単にさっきのポーションに問題があったのか?」
アルダスは引き裂きポーションの効力が強くなるのは後半だと知っているが、これ以上小沼の悲鳴を聞くのは興味がなかった。
「スリ!ヤツを地下牢に入れてよく監視しろ、一晩何も食わせるな!もし実験中に死んでしまったのなら、お前の食べ物にしてやってもいい。」
スリはこれに大喜びして、御世辞やら何やらが連なるようにして口から出た。
「但し、もし私がお前が盗み食いしようというのを知ったら、お前が『実験台353』になる!」
スリは実験室にいる時間は短くなかった。今までの『実験台』を思えば、恐怖して震え上がった。
その震えを鎮めようとしているのか、一言も発せず小沼を引きずって実験室の外に向かっていく。
レッサーデーモンの力は見た目よりも大きく、小沼の身体は途中であっちこっちにぶつけられながらジメジメとした地下室の中に投げられた。
「さっさと死ね、クソッタレが!スリ様はまだ人族を味わったことはないからな!」
レッサーデーモンはアルダスの前の慇懃無礼の振る舞いとは打って変わって、乱暴に小沼に蹴りを入れる。
未練がましくまだ血が僅かに付いている爪を舐めて小沼の方を見る。目にはさっきと同じ貪欲の色が浮かぶが、やはりアルダスの命令に背く程の度胸はないのか牢屋に閉めた後に出て行った。
『引き裂きポーション』の効力の本番は後半、痛みは当初の10倍近くに達していた。
その時、脳内にある声が響いた。
『正体不明な物質を発見、『解毒』をダウンロードしますか?』
『吸収可能な物質を発見、『吸収』を開始しますか?』
『使用者の意識状態を確認、強制的に『吸収』を開始します』
『使用者の意識状態を確認、強制的に『解毒』をダウンロードします』
『只今から『解毒』をダウンロードします』
『只今から『吸収』を開始します』
『記憶ファイルの解凍を開始します』
その声と共に痛みが軽くなっていく、火傷の痛みはまだかなり残っているが、さっきの痛みを知っている小沼にとってはどうってことなかった。
お陰で思考能力も大分戻ってきた。まともな思考ができるようになり、小沼もやっと我にかえった時にはその声はもう響いてなかった。幻覚と疑ったのも一瞬、そんなことを考える余裕もなくなった。
なぜなら彼は脳内で急に増えている大量な情報に驚き、呆然としていた。目が覚めた時に頭の中に何かがあると彼は感じたが、このゴタゴタでそれが解凍された。
彼はもう元の『小沼敦』ではなく、『アーサー』という少年、そしてここも地球ではなく、違う世界である。
(やっぱり異世界転生だ!)
小沼はオタク軍団に所属しているラノベ大好きなオタクだった。すぐさま現状を認識した。
(転生モノはよく読むけど、こんなに凄惨なのは嫌だな。こういう転生先なのも読んだことはあるけど、実際にやらされたら絶望感が半端ないな。マジであいつらなんでこんなのを乗り越えられるのやら……)
0
あなたにおすすめの小説
傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
※他サイトでも掲載しています
※ちょいちょい手直ししていってます
2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります
はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。
「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」
そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。
これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕!
毎日二話更新できるよう頑張ります!
犬の散歩中に異世界召喚されました
おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。
何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。
カミサマの許可はもらいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる