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謎の少女
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「私はアリスよ。」
無邪気な笑顔は小沼の羞恥心をくすぐる。彼はまだその顔に隠されている悪意に気づかない。
「お兄さんのお名前は?」
「僕は……小沼敦だ。」
彼は「アーサー」と名乗ることも考えてみたが、違和感を感じてこの名前を捨てて本名を選んだ。
「アリスちゃん、ここから離れたいけど、どうやればいいのか教えくれないか?」
「離れる?」
アリスは可愛らしい目をパチパチさせながらこう言う。
「ここはアルダス師の研究室に近いの、そこに行きたいの?なら連れて行くわ。」
「違う!そこじゃない!」
小沼は驚き否定した。
(冗談じゃない、せっかくそこを出てったのに、戻るのはキチガイだ)
「どうして?彼の実験は中々面白いと聞いたわ、ちょうど寄って行こうと思ったの。」
(面白いさ、人に毒薬をコーラのように飲ませるだけだから……)
小沼は目の前の天真爛漫な少女を見る。あまりやりたくはないが、咄嗟に嘘をつく。
「まだ知らないのか、実験室でトラブルが発生したんだ!僕はアルダスさんが新しくとった見習いで、アルダスさんはさっき変な薬を飲んでしまって、狂うように周りを攻撃しているんだ。スリもやられてしまって、君が行ったらきっと怪我をしてしまう。急用でここを離れなければないんだけど、道を忘れてしまって、案内してくれないか?」
アルダスが発狂していると聞いてアリスは震えながら顔に恐怖の色を浮かべる。
「なんて恐ろしいこと、でもあなたほアルダス師の生徒でしょ、許可を貰わないで離れるのは困難じゃないかしら?」
「今のアルダスさんには正常な判断能力はない、僕の用事は本当に急がなきゃダメだ。アリス、助けてくれないか?」
アリスは可愛らしい口を膨らませ、最終的に頭を縦に振った。
「いいわよ、連れて行くわ。但し、フードでよく顔を隠して頭を低くして歩くのよ。誰にもあなたが新しい生徒だと気づかれてはダメよ。」
「ありがとう!」
小沼も人であることがバレるのは防ぎたかったから提案をすんなり受け入れた。
小沼:ここでもう少し警戒心が……あったってしょうがないか……
「礼はいいのよ。」
アリスは甘い笑顔を浮かべる。その顔は正に優しい少女のそれだった。少女は自分から小沼の手を握り、駆け足で小沼を引っ張っていく。
(魔界だっていいヤツがいるな。というか、きっとアルダスとスリが特殊だったんだ。この子は優しいな、進んで人助けだなんて、天使よりも天使だな)
道中、かなりの数の見た目がとても奇抜な悪魔と出会った。そのほとんどは身体が大きく、武器を手に持っている。
(多分、ここの護衛かな)
アリスはここの乗客なのか、護衛たちは尋問どころか恭しく頭を下げた。小沼は誰も止めないことを見て、不安がぐんと下がった。彼はアリスの言いつけを守り、フードを深くかぶって顔を隠した。だから、彼は護衛たちの表情に気づくことはできなかった。
結構歩いた後にアリスは漸く歩くのをやめて「ついたわよ。」と言った。
小沼はホッとしてフードをとったが、その瞬間に石化した。
ここは……
……アルダスの実験室、彼が一番恐れている場所。
アリスは微笑み、目が綺麗な新月を描く。
「お兄さんはここに来たかったでしょ?今ついたのだからちゃんと私に感謝してね。」
さっきと同じ天使の微笑、それなのに、小沼は背筋が冷えいくのを感じた。彼はまるで天使が牙を剥き出して嗤っているように見えてきた。それは一回目の微笑もそうであったことを裏付けている。
小沼は逃げようとした、第一弾と第二弾のように計画性のカケラもない全力疾走。しかし結果は第二弾と同じにはならずに第一弾の二の舞になってしまった。
アリスは素早く小沼の手を掴んだ、これもさっき同じはずなのに、小沼はさっきのように喜べなかった。懸命に力を振り絞って身体を動かそうにも、その場から動けなかった。
その小さな身体のどこにそんな力があるのか、小沼はアリスの手を振り解くことはできなかった。
「誰だ?こんな無礼に押し入って……」
スリは足が引きずりながら出てきて、アリスを見る途端驚いたのか音を立てて跪いた。
ローブがボロボロになっているアルダスもその後に出てきて、小沼を見るなり両目から射殺そうとばかりの眼光を飛ばす。
しかし、すぐに飛びかかって小沼を殺そうとはせずにアリスに一礼をとった。
「アルダス師、久し振りね。新しい生徒が道に迷っていたの。だから連れてきたわ、でも嘘をついたのよ。アルダス師が口にしてはいけない薬を飲んで錯乱していると言ったのよ。わたしに会うと服を破いて、そして」
「ごふっ、ごほっ!」
小沼は激しく咳き込んだ。顔は青ざめ、何処かに穴があったら入りたいと思った。
(この小娘、腹黒過ぎる、そして強過ぎる!まぁ、別に言い訳をしようとは思わない。昔にネカマに騙されて色々あったように、相手の技量に及ばない、なら何も言うことはない。)
無邪気な笑顔は小沼の羞恥心をくすぐる。彼はまだその顔に隠されている悪意に気づかない。
「お兄さんのお名前は?」
「僕は……小沼敦だ。」
彼は「アーサー」と名乗ることも考えてみたが、違和感を感じてこの名前を捨てて本名を選んだ。
「アリスちゃん、ここから離れたいけど、どうやればいいのか教えくれないか?」
「離れる?」
アリスは可愛らしい目をパチパチさせながらこう言う。
「ここはアルダス師の研究室に近いの、そこに行きたいの?なら連れて行くわ。」
「違う!そこじゃない!」
小沼は驚き否定した。
(冗談じゃない、せっかくそこを出てったのに、戻るのはキチガイだ)
「どうして?彼の実験は中々面白いと聞いたわ、ちょうど寄って行こうと思ったの。」
(面白いさ、人に毒薬をコーラのように飲ませるだけだから……)
小沼は目の前の天真爛漫な少女を見る。あまりやりたくはないが、咄嗟に嘘をつく。
「まだ知らないのか、実験室でトラブルが発生したんだ!僕はアルダスさんが新しくとった見習いで、アルダスさんはさっき変な薬を飲んでしまって、狂うように周りを攻撃しているんだ。スリもやられてしまって、君が行ったらきっと怪我をしてしまう。急用でここを離れなければないんだけど、道を忘れてしまって、案内してくれないか?」
アルダスが発狂していると聞いてアリスは震えながら顔に恐怖の色を浮かべる。
「なんて恐ろしいこと、でもあなたほアルダス師の生徒でしょ、許可を貰わないで離れるのは困難じゃないかしら?」
「今のアルダスさんには正常な判断能力はない、僕の用事は本当に急がなきゃダメだ。アリス、助けてくれないか?」
アリスは可愛らしい口を膨らませ、最終的に頭を縦に振った。
「いいわよ、連れて行くわ。但し、フードでよく顔を隠して頭を低くして歩くのよ。誰にもあなたが新しい生徒だと気づかれてはダメよ。」
「ありがとう!」
小沼も人であることがバレるのは防ぎたかったから提案をすんなり受け入れた。
小沼:ここでもう少し警戒心が……あったってしょうがないか……
「礼はいいのよ。」
アリスは甘い笑顔を浮かべる。その顔は正に優しい少女のそれだった。少女は自分から小沼の手を握り、駆け足で小沼を引っ張っていく。
(魔界だっていいヤツがいるな。というか、きっとアルダスとスリが特殊だったんだ。この子は優しいな、進んで人助けだなんて、天使よりも天使だな)
道中、かなりの数の見た目がとても奇抜な悪魔と出会った。そのほとんどは身体が大きく、武器を手に持っている。
(多分、ここの護衛かな)
アリスはここの乗客なのか、護衛たちは尋問どころか恭しく頭を下げた。小沼は誰も止めないことを見て、不安がぐんと下がった。彼はアリスの言いつけを守り、フードを深くかぶって顔を隠した。だから、彼は護衛たちの表情に気づくことはできなかった。
結構歩いた後にアリスは漸く歩くのをやめて「ついたわよ。」と言った。
小沼はホッとしてフードをとったが、その瞬間に石化した。
ここは……
……アルダスの実験室、彼が一番恐れている場所。
アリスは微笑み、目が綺麗な新月を描く。
「お兄さんはここに来たかったでしょ?今ついたのだからちゃんと私に感謝してね。」
さっきと同じ天使の微笑、それなのに、小沼は背筋が冷えいくのを感じた。彼はまるで天使が牙を剥き出して嗤っているように見えてきた。それは一回目の微笑もそうであったことを裏付けている。
小沼は逃げようとした、第一弾と第二弾のように計画性のカケラもない全力疾走。しかし結果は第二弾と同じにはならずに第一弾の二の舞になってしまった。
アリスは素早く小沼の手を掴んだ、これもさっき同じはずなのに、小沼はさっきのように喜べなかった。懸命に力を振り絞って身体を動かそうにも、その場から動けなかった。
その小さな身体のどこにそんな力があるのか、小沼はアリスの手を振り解くことはできなかった。
「誰だ?こんな無礼に押し入って……」
スリは足が引きずりながら出てきて、アリスを見る途端驚いたのか音を立てて跪いた。
ローブがボロボロになっているアルダスもその後に出てきて、小沼を見るなり両目から射殺そうとばかりの眼光を飛ばす。
しかし、すぐに飛びかかって小沼を殺そうとはせずにアリスに一礼をとった。
「アルダス師、久し振りね。新しい生徒が道に迷っていたの。だから連れてきたわ、でも嘘をついたのよ。アルダス師が口にしてはいけない薬を飲んで錯乱していると言ったのよ。わたしに会うと服を破いて、そして」
「ごふっ、ごほっ!」
小沼は激しく咳き込んだ。顔は青ざめ、何処かに穴があったら入りたいと思った。
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