ティーシェラン戦記

ニコニ

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第10章 友を助けよう

ナポリタンの煩悩

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 フルドゥイ攻略に関しては思いっきり仕事をしくじってしまった。それでも、クアチフ王は特に責めずに笑って許してくれた。
 いや、クアチフ王自身が結構朗らかな人物で、オレと話している時は常に笑顔だ。
 本心からの笑みかどうかは判らないが、まぁ、大丈夫だろう。
 オレが初めの頃に無礼をしてしまった時も大して気に留めなかった様子だし、かなり器が大きく、こういったことには寛容なのだろう。
 流石は一国の王である。場合によってはラーさんの次に優秀な王になれるかもしれない。
 不動にして絶対たる一位の座はラーさんが永遠に座り続けることだろう。

 何はともあれ。
 クアチフ王はオレの王国への招待に応じてくれた。
 オレはいきなり押しかけては、同盟を結べなどと言っている。正直に言おう、オレも自分が不審極まりないと思う。
 そんなオレの招待に乗ってくれるということは、それだけ信じていることだろう。やはり偉大な王でいらっしゃる。

 このことをラーさんに報告しようにも、カシール様以外の通信手段はてんでダメだ。どれもこれも上手いこと使えない。
 クアチフ王がうちの国に来られることは到着してからの事後報告になるだろう。
 
 はぁ~、とことんついてない。分からないことはまだ増えた。そしてやるべきことはそれ以上に増えた。
 タナンサ星域の星図の作製。クアチフの周辺諸国の挨拶を兼ねた訪問。帝国と連合の出方の偵察。
 どれも重要度が結構高い。しかしながらオレの身は一つ。何をどうやってこなせと言うのだ。
 
 やったらところで成功するかどうかもかなり微妙だ。
 今回やった新艦隊のテストも散々なものだった。
 メインコアの『機械の神髄ユドゥン・ディ・イェルン』から生み出せるエネルギーは現状から見てほぼ無限に近い。
 エネルギーの量については申し分ない、それが枯渇することを心配するのはまだまだ先だろう。なにせ、『神話級』アイテムだから。
 しかし、それ以外の部品やパーツはそうもいかない。今までの数倍のエネルギーを流されて破損寸前、特にメインコア付近のルーン回路が一段とひどい。
 今までの数十倍ものエネルギーがそれを通っている。主砲を撃った時はどうなることかと思った。予備の回路がなければとんでもないことになっていた。
 
 それによってオーバーヒートが生じて、熱暴走による重傷者さえ出た。メインコア付近の整備士をドワーフにしたのが僥倖だった。もし人間だったら死者が出ただろう。
 ドワーフは生まれながらに炎系統に対する耐性を持っている。うちの国は特殊事情により、大部分の国民が炎系統に適性が多少はあるが、ドワーフには及ばない。
 レベルが高い兵士や神官なら、話はまだ別だが……

 それだけではない、クアチフとの外交もそうだ。
 オレは全ての国の王がクアチフ王のように温厚だとは思わない。これ程までに、優れている王はそうはいないだろう。
 単純な破壊をひたすら繰り返すだけなら、うちの国が一番だろう。
 うちを超えられる組織があったら見てみたい……いや、見ないことを祈ろう。
 メインコアからはエネルギーが半無限に生み出される、燃料など必要ない。壊れないようにメンテナンスをすれば、半永久的に使える。
 これよりも破壊力を持つ兵器が存在するならそれは恐怖の権化と言えよう。

 

 タナンサ星域とフィーセド星域の間は無光域と呼ばれ、光を出す恒星が存在しません。当然、そこには光がありません。
 ……筈ですが、四日前と今日。珍しくも光が灯りました。純白色の艦隊が再びそこを通り、フィーセド星域に戻ろうとしています。

 タナンサ星域に向かう時といくつか違う点があります。
 クルーに新しく3名追加されたことです。
 クアチフ王、クアチフ宰相のモルンタスさん、クアチフ将軍のサイェビさん。

 クアチフ王は今回の同盟国の王、王国に赴き、王同士で同盟締結を再度確認する必要があります。
 最初から同盟を結ぶつもりでしたら、とにかくラーメンさん自身が来ましたが、これはイレギュラーの行動。
 完全に主人公の頭がバグったせいです。
 よって、全くそんなことを予想していないメンバーたちは慌てふためき、大臣クラスの努力によりなんとか場を収めた。
 主人公に至っては、それはそれは綺麗な土下座を決めました。

 モルンタスさんは主人公に一番長く話していたから、お守り代わりみたいなものです。これによって会談で優位に立とうとつゆにも思っておらず、本当にお守り代わりです。

 サイェビさん、一言で言えば暇だから来ました。
 防衛を担当している将軍ですので、唯一の隣接国であるフルドゥイが消滅したことにより仕事がなくなりました。

 王を含めても二人の使節団は流石に色々とヤバいらしく、かと言って誰も王国には来たくありません。
 そこで白羽の矢が立ったということです。
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