ティーシェラン戦記

ニコニ

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第10章 友を助けよう

王国にいらっしゃい。

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 真っ暗は無光域を進む真っ白な艦隊。司令室のすぐ隣に主人公の自室があります。
 防音性と防諜性に優れ、中にエルフが枕に顔を埋め、「ああああぁああぁぁああああぁぁぁ!!!」と叫んでいることを知る者はいません。
 今日のこの瞬間も、彼は悩み続けます。



 真っ直ぐ王都に向かおうとしたが、いくら同盟国の王でも、いきなり部外者を連絡なしで連れて行くのは流石にまずい。
 第一に、王都と言っても、戦闘基地のような場所だからはっきり言って危険だ。

 この世界に来て数週間経つが、帝国と連合が攻めて来る気配はない。だからと言って油断していい訳ではない。
 同盟国の王をうちの国で怪我させるのは、ラーさんの顔に泥を塗るようなこと。あってはならない。
 そのようなことが起こる芽があれば、オレが踏み潰す。

 かと言って、首都に迎え入れないのは相手に対する不尊重に当たるだろう。
 だから、前もって情報を伝えておいて、万全の準備をしておく。破壊も得意だが、守備もうちの十八番。連合と帝国が手を合わせて攻めて来たって返り討ちにできる。

 しかし、今は特殊な時期。新艦隊の機能を使いこなすにはもう少し……いや、かなりの時間を要するだろう。
 威力は確かに昔より上がった。でも艦隊の真骨頂はその機動性にあり、一発撃ったらおしまいじゃない。
 その点に関しては前のほうが使い勝手は良かったと言わざるを得ない。

 それを破亜斗さんと舞雷九さんも分かっているだろう。その上で進歩の道を選んだ。ならば、オレはそれを支持しよう。
 金はケチらない、けちってない結果がこれなのは納得しかねるが、それもしょうがないだろう。
 急に新技術を導入して成功できた例は少ない。しばらくは試行錯誤を繰り返して正しい運用方法を模索する。

 全艦隊を一度に改造させるのは止めたほうが良いだろう。三分の一程を実験に回して、成功した場合のみ実装したほうが良い。
 一桁艦隊は『アヴァロン』だけを実験台にした方が良い。
 もう、実装してしまったし、このまま実験を続行するなら『アヴァロン』だけに留めておくべきだろう。

 全ての艦隊が一発しか撃てないのは危険なことだが、何隻かを改造して決め手として使うのは良い。

 そこも破亜斗さんと検討した方が良いだろう。舞雷九さんともじっくり話したほうが良さそうだ。
 ルーン回路が今の素材では不十分かもしれない。『黒色鉱』よりもエネルギーを伝えやすく、『シェメリウム』よりも熱を出さない素材は何かあるだろうか……
 ……これは金の問題ではない。素材の存在をの有無の問題だ。そもそも、そんな物質はゲーム時代では聞いたことがなかった。
 『黒色鉱』はエネルギー伝導性が一番高かったし、『シェメリウム』は熱暴走をほぼしないのが売りだった。
 それの合金をなんとか作るのは実に大変だった。それが成功した日は一日中パーティをした。
 今更、それ以上の物を求めるのはもはや不可能に近い。

 ゲーム時代なら。

 ここは『シェラン戦記』と違う点がいくつもある。これ以上の物質もきっと存在するだろう。
 
 多分……



 そうこうしているうちに、ヤドゥーユに着いた。ルシェーラから出発したから、ルシェーラに戻ることも考えた。
 距離を考えても、カッチェドがいちばん近い。しかし、自分で犯した罪は自分で償う。ならば自領にすべきだろう。
 ルシェーラとヤドゥーユを比べた結果。ヤドゥーユのほうが少し近い。だからまずヤドゥーユに向かった。

 クアチフ王の王国滞在スケジュールはこう、ヤドゥーユに三日間滞在し、ルシェーラに三日滞在する。その間は領官と行動を共にし、観光も自由もする。
 費用はその領の税収の3パーセント以内ならオレが支払う。これはせめてのオレのクアチフ王に対するお詫びだ。

 スケジュールの構成は時間稼ぎの為。
 クアチフで同盟の草案を渡し、オレの権限で批准したが、改めて考査しなければならないことも多々ある。
 同盟国だから、多少は譲歩するつもりではあるが、一番の優先対処はうちの国だ。当然のことである。

 とは言え、公開処刑は免れないだろう。何故うちの領でなければならない!正直言って嫌だ!
 いかにルシェーラとヤドゥーユが無骨なのかバレてしまうじゃないか!無骨というのはまだマシな言い方。
 直白な言い方をすれば田舎の成金のみたいな造りだ。いや、田舎の成金のほうがまだ良い。ゴテゴテキラキラしている。
 オレの城はただただデカイだけだ!
 雲を軽々と突き抜け、「何、そんなに自分すごいアピールしたいの?」と言われそうだ。

 ああ、胃が痛い。
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