くんちゃんと炭酸

gizumo

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土曜日の夕方

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 いつもなら毎日1回は何らかのことが起こるのに金曜日は普通に、いや穏やかに過ぎていった。
 私は台所で朝御飯を家族に作っていた。  「おはよう」
と元気な娘達の声がした。
忙しかったので声だけ反応し後ろは振り向かなかった。
 「ピピピピ」
洗濯機の終わった音がしたので私は干しに行った。
 「行ってきます」
 「行ってらっしゃい」
これぞ朝の親子の会話だとしみじみ感じていた。
 家事が終わり買い物に行った。
近所の人に挨拶をした。が気づかなかったらしく横を通り過ぎた。
 「あらっ、マスクしててわからなかったかなぁ」
と思いながら家へ向かった。
 家は暗かった。
 「もう誰も帰ってないわね」
 「ただいま―」
 みんなが帰ってきた。
 「あれっパパさん、今日は早いわね」
と、言おうとしたそのときだった。
 私は今までのことがやっと、やっとやっと気づくことができた。
 よく見ると3人して黒い服を着ている。そう喪服だ。

 私はもうこの世にいなかったのだ。
 よく見た黒い影も私。
 結局この一週間私は家と、この家の回りを彷徨っていたのだ。子供達が心配で成仏できなかったのだろう。

 一週間この家にいた理由は…………、
  
  この家に私を殺めた人がいたからそれを確信したかった。
 
  その人は炭酸を毎日飲んでいる人。

  もうあの人しかいない…
 
  それは








  




  パパさん、あなたです。


  これからが一緒だね。


  1年後、娘達は二人っきりになってしまった。でもく―なちゃんと言う犬が新しく家族になって充実した日々を送っている。

  「もう、寂しくないね」
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