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第一話 帰って来た花音
しおりを挟む仕事を片付けた後、美留來はびす子の家に行くと玄関先には待ちきれない様子のびす子がストレッチをしていた。
美留來:びす子おまたせ~!
びす子:待ってたよ!さっき花音から連絡が来て駅から直接、蔵カフェに向かうって言ってたよ!
美留來:じゃ先に行って待ってよか。
蔵カフェとは町に唯一あるカフェで「蔵前コーヒー」の略である。
二人は予定より早くお店に到着し自動ドアをくぐると厨房の奥から美留來達の同級生でバイトをしている本丸烈が走って来た。
烈:いらっしゃい!今日も美留來ちゃん可愛いねえ。さささ、こっちのテーブルにどうぞ。
びす子:おい烈!私には言わないのかよ!
烈:はいはいそうだね、びす子ちゃんも可愛いよある意味。あ、そうだ!俺が考えた新しいメニューこれ!美留來ちゃん、是非頼んでね!
メニューの表紙に[烈イチオシ!!!]の大きな文字と共に人参が刺さったパフェの写真が目に飛び込んできた。
美留來:なに、これ美味しいの?
びす子:なーんだ普通のパフェに人参刺さってるだけじゃん!
烈:チッチッチ!君たちは分かってないなあ。このパフェは自慢の秘伝のソースがかかってて美味しいんだ。うむうむ。
烈があーだこーだと新メニューについて語っているとカウンターの奥から怒号が飛んで来た。
根子:こら烈!サボってないで早く厨房に戻りなさい!
根子は蔵前コーヒーのオーナー兼シェフでお店を切り盛りしてる気前が良い姉御肌の女性だ。
烈:はーい!美留來ちゃんごめんまたね!びす子はもっと食べて大きくなれよ。
びす子:大きなお世話だ!
烈の言葉にムカついたびす子がふんぞり帰ってフンと横を向いた。
中肉中背の美留來に対してびす子はかなり小柄で烈が言う事に一理あった。
とりあえず美留來とびす子はコーヒーを注文し花音が来るのを待つ事にした。
コーヒーが飲み終わる頃、店内のガラス越しに駅の方からキャリーケースを転がしながら歩いてくる花音が見えた。
花音もこちらに気が付いたようで軽く手を振り、久しぶりに会えた友人達を見て顔が綻ばせているようだった。
店内に花音が入るといつも通り奥の厨房から烈が飛んで来くると、花音が転がして来たキャリーケースを持ってテーブルまで丁寧に案内して来た。
烈:いやあ、花音ちゃんも相変わらず可愛いなぁ。是非、僕のお勧めのパフェを食べて行ってね!
花音:烈くんも相変わらず元気そうね。
そう言いつつ席につこうとした花音に美留來とびす子は一斉に抱きついた。
美留來:久しぶり!元気だった!?
びす子:もう!寂しかったんだからな!
花音:元気だったよ美留來。ありがとう、びす子。
烈:ああん!最高の再会シーン!僕もハグの仲間に入れて!!
根子:まーたサボってる!ほら行くよ!花音ちゃん久しぶりね。ゆっくりしてって。
烈が覆い被さろうとした時、いつの間にか後ろから根子がやって来て烈のシャツの襟を掴んで厨房まで引きずっ行ってしまった。
引きずられる烈は笑いながら三人に手を振っていた。
びす子:あいつホント懲りないな!
美留來:ほーんと。それで花音どうして急に帰って来たの?
びす子:うんうん、向こうではどんな感じか聞かせてよ!
花音:分かった分かった。その前に一息つかせて。
美留來とびす子はコーヒーをお代わりし、花音は烈が考案した人参パフェのセットを注文すると昔話に花を咲かせていた。
ふと話してる最中にキャリーケースに目がいった。
美留來:(そういえばさっき烈がキャリーケース重そうに持ってたなあ)
美留來は気にしすぎかもしれないと思うと久しぶりの再開を素直に喜ぶ事にしたのであった。
つづく
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